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Stories of fate


黄泉の肖像

黄泉の肖像 (氷解) 26

 家族として扱われてこなかった。
 食事も、たった一人で。しかも、来客があれば一日一食しか与えられないことが度々だった。
 それが、なんだか異様に俺の胸を締め付けた。

 俺は、今でこそ一人暮らしでアパートで食べる食事は一人だ。しかし、実家にいるときは、必ず家族揃って食事をしていたし、兄貴が彼女を連れて来るようになってからはその彼女も交えてかなり賑やかな食卓になっていた。
今は、しょっちゅうあのオカマの店長の喫茶店で他の客や店長と賑やかに食事をするし、手の離せない仕事中以外は、事務所に戻って所長や奥さんと一緒に店屋物を食べたりもする。そうすると、所長の奥さんがホームメイドのケーキやクッキーをごちそうしてくれることもある。

 食事とは、そんな風に楽しいものだという認識だ。

 せめて、今夜…、いや、俺が生きている間くらい、サキに楽しく食事をしてもらいたかった。冷たい出来合いの食事ではなく、出来立ての、あったかいものを。
 



 俺が死んだら、いや、いつか必ず俺は彼女を置いて逝く。そう、人魚の肉を食うと不死になるなんてどこかで聞いたが、そういうアイテムを見つけられない限り、俺が彼女と永遠を過ごすことなんて出来ない。しかも…。

 恋をすれば、だと?
 無理に決まってるじゃないか! 

 15を過ぎた辺りから成長が止まった。つまり、まだ中学生か高校生ってことだよな?
 一応、俺は成人している。つまりは10歳近く年が離れている計算だ。どうやって、そんな女の子と恋を語れるのだ? 今後、彼女が良い女に成長するなら話しは別だ。だけど、…無理だろう???

 いや、俺の問題ではなくて、向こうの好みってものもある。

 だからと言って、好みの男性を探してやる訳にもいかない。そのままサキが成長しなかったら、ホラーだ。相手の男に詐欺だと訴えられるかも知れない。

 …結局、俺にまる投げかよ、あの依頼人…!!!




 それでも、きっぱり断れなかったのは、何故だろう?

 今までイヤというほど運命に翻弄され、数々の人間たちの間でたらいまわしのように厄介者扱いされてきた彼女を、やっとすがる相手を見つけたと信じているサキを、この上、俺の都合で振り回す気になれなかったのだ。

 くっそ。
 直義め! 何気に人選を誤ってないぜ!




 あの初代の肖像画。
 サキの肖像。

「これは、やはり燃やします。あなたも、こんな物、残しておきたくはないでしょう?」

 直義は言った。
 俺は頷いた。
 サキが望まないだろうと思ったのだ。
 



 200年近くに及ぶ孤独の果てに。
 これも、ある種、運命という奇跡の世界なのか。
 謎が解けて、今、新たな謎に挑戦してみても良いかも知れない。
 俺は、顔をあげて、サキの待つ部屋の扉を開けた。
 地下牢から続く、ほのかな明かりを求めて。







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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ホラー・恋愛

~ Comment ~


思わず、なんと感想を書いたら良いものか考えこんでしまい、遅くなりました~m(_ _)m

サキの運命を考えると、苦しいと言うかなんというか・・・。
だけど、ホント、人選は間違ってなかったですよね(^^)

なんかね、救いを求めたくなっちゃいます。
きっとサキは、自分を救ってくれた人との人間的な生活をしていくうちに、彼に恋をして、そして成長していくことができるんじゃないか・・・とか。

あえてこのあと二人がどうなるかを書かなかったfateさんが、その希望を残してくれたような気がします。

実は世の中には、こういう不思議がけっこう隠されていて、普通に暮らしている現実的な人間が、ふっと足を踏み入れちゃったりするのかも知れないな、なんて思ってしまいました。

素敵な作品でした~~~。

さて、次は何を読もうかな((o(´∀`)o))ワクワク
#609[2011/11/21 02:56]  秋沙   URL  [Edit]

秋沙さまへ

秋沙さん、悩ませてしまってすみません~(^^;

コメントしようがない結末で失礼しました。
いや、実は、その後の展開をそのまま続けたら、ジャンルが絶対ホラーじゃなくなって、恐らくラブコメ調になるであろう(--; との恐ろしい予想のもと、一旦切りました。
もともとホラー色が薄かったのに、無理やりホラーだ! と描いておりましたが、そろそろ限界だったので。

恐らく、大方の皆様が予想している通りの展開に進むと思われますが、でも、これだけ一致した予想をされてしまうと、描く必要なくね? という気もして、ちょっとそのままになっております(^^;
ただ、fate world は一筋縄ではいかないというか、fateすら予想しないことが起こることが儘あるので、もしかして描き初めてみると「ええ~っ!!!」と叫ぶ事態が起こらないとは言えないですが。

秋沙さんには、いろいろ読んでいただいて嬉しいです。
世界が清濁併せのむ…みたいないろいろですが、言ってることは常に同じなので、飽きられないかな~
と不安に思いつつ。
またご感想お待ちしております(^^)


#610[2011/11/21 08:37]  fate  URL 

氷解橋ました。謎が残る、というのもわかりました。

でも、闇うんぬんはおいといて、

最初に抱いた読後感が、

「理不尽な話や」だったことをお許しください(^^;) もっとも人間というのはどこかでどうしようもなく理不尽な存在ですが。
#792[2011/12/04 21:44]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

ポール・ブリッツさまへ

ポール・ブリッツさん、

何に対して、誰に対して‘理不尽’と感じたのかなぁ、と。
え??? もしかして、fateに対して?

#794[2011/12/05 06:36]  fate  URL 

話は面白いです。

しかし、少女の運命、探偵に課せられた義務、直義の考え、全てが「理不尽」であります。

理不尽な運命のもとに生まれた少女の未来が、当主の理不尽な考えのもと、理不尽にも好人物の探偵に丸投げされた、という話としか読めませんでした。

理不尽で悪ければ、ある種の不条理劇を見ているような気分であります。

主要登場人物、皆どこか基準がズレている、そのような不安感を覚えました。

世の中の全ての人間模様はそういうものかもしれませんが。
#804[2011/12/05 23:26]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

ポール・ブリッツさまへ

ポール・ブリッツさん、

理不尽。
不条理劇。
ううむ、正直、もともとfateは感覚が変なのでよく分かりませんが、おっしゃる意味はなんとなく分かります。いや、感じる…というのか。

> 主要登場人物、皆どこか基準がズレている、そのような不安感を覚えました。

↑↑↑つまり、なんでそれをおかしいと思わないの? っていう感じのズレ具合ですよね?
はい、fate自身が普段からそうなんです(^^;
感覚とか善悪とか、そういう世間のすべてからズレてます、きっと。
fateが‘理解できないモノ’を受け入れられないのと似た感じですかね。不快であったらごめんなさい、です。
実際、理解出来ない世界って気味悪いですから(^^;

> 世の中の全ての人間模様はそういうものかもしれませんが。

↑↑↑いえいえいえ。それはないであろう。
オカシイのはfateだけで十分です(--;
すべてが狂ったら、fateもマトモな生き物に見えてしまう。
そうしたら、fateは存在意義を無くします。

この世界を理不尽で、その‘狂気’に似た感覚の脆さを危ういと感じるポール・ブリッツさんが、いかに正常な人間であるか、ということですね!
そういう感覚の方に読んでいただけると、少し反省の機会を与えられます。
少し、マトモな世界も描いてみないと戻って来られなくなりますからね~

#805[2011/12/05 23:38]  fate  URL 

サキはヴァンパイアだったんだね。

すごい唐突だけど私、お花好きなんですよ。
でもね、造花は嫌い。生花じゃないとイヤなんだな。造花はキレイすぎて不気味。逆に生花は枯れていく様も美しいと思う。不自然なんだよね、造花って。
それと同じで。
不老不死は不自然だよね。
ちゃんと自然な生活していたら、サキもきっとその不自然さから抜け出せるかもしれないね。そうだったらいいなと思いました^^
#954[2011/12/16 10:15]  あび  URL 

Re: サキはヴァンパイアだったんだね。

あびさん、

ご感想ありがとうございます(^^)
いや、あまり本格的なことは何にも考えておりませんでした。
遺伝子が好きなfateは勝手に遺伝子のいたずらにして、濁しただけで。

> 不老不死は不自然だよね。
> ちゃんと自然な生活していたら、サキもきっとその不自然さから抜け出せるかもしれないね。そうだったらいいなと思いました^^

↑↑↑そうなんですよっ
それは本当に思います。不老不死なんて悲劇でしかない。
‘恋’をしたら魔法は解ける。そんな感じでいきたいと思います!!!(どこに??)
#957[2011/12/16 14:59]  fate  URL 

たしかに

不条理はたしかですよね。
不条理だからって悪いことではないですし、物語としては面白いけど、この強引な病院に腹を立てていた私は、なんなんだー、こいつらは、だったわけで。

自分の現実も考え合わせて、病院には腹を立てていたのですけどね。

私は以前、年を取らない男性と普通の女性のラヴストーリィを書いたことがあります。
不老不死を求めた中国皇帝なんて話もありますし、人類永遠のテーマなのかもしれませんね。

コミカルなタッチもありましたけど、根底には重たいものが流れていて、いろいろい考えさせていただきました。
#1117[2011/12/27 09:54]  あかね  URL 

Re: たしかに

あかねさん、

なんというか…これに関しては、なんだかfateの意図とは反して、読者の皆様が「ほええ?」と思うくらい深刻に真面目に受け止めていただきまして、fateのフザケた生きざまが浮き彫りになり、恐ろしいくらいです(・・;

そ…そんなに不条理で、深刻なんですね、実は…。
そ、そうか。そうなのか…
と、今更ちょっちビビってます(^^;

> コミカルなタッチもありましたけど、根底には重たいものが流れていて、いろいろい考えさせていただきました。

↑↑↑いや、fateとしてはコミカルな部分しかないと思っていたので、ポールさんのご感想に最初にびっくり、その後、どんどんいただくご感想になんとなく茫然となっております。
fateよりもずっと皆様、何かを感じてくださっているんだ、という感動と共に、やはり、いかん、どんだけズレてんだよ、fate…という愕然とした風が吹き抜けて…

まぁ、これはこれで、勉強になりました。
これって、web小説の醍醐味かも知れない。

今後も、「ほえええっ? なんでっ???」という思いをすることを楽しみに、fateの暴走は続くのであった!!!


#1119[2011/12/27 10:38]  fate  URL 

興味深いお話でした^^
私は不条理だと言う感覚よりも、「いやいや、ほんとうにサキという存在がいたら、そりゃあみんな、悩むだろうな~」と言うものでした。

いうなれば、サキは人外。常識的な考えや配慮が及ばない。
そのサキを中心に戸惑う人々と、哀れに思う主人公。
きっとこれは、有り得ない状況に陥った人々の人間模様ですよね。
人間が冷徹だとか、そういうテーマではなくて。
とても娯楽性のある、面白いお話でした。
主人公の明るさ(いい意味での適当さ)が、全体を暗くさせずに、いい感じでした。

この後は、きっとこの二人、歳の差を乗り越えて、むふふな生活に・・・。そしてサキは、美しい大人の女性になるのです!(私の脳内ストーリー)
#2301[2012/08/11 12:23]  lime  URL  [Edit]

limeさまへ

limeさんっ(涙目

ああああ、良かったぁぁぁっ
なんというか。
まさにこういう反応を予想して描いたハナシでしたので、ほっとしております。
だってだってだって、そんな深い意味ないんだって。
だいたいにして、これは冒頭でも最後でも騒いでいる通り、元ネタがあるんです。
「地下牢」「不老不死」という。
これは、Tome館長作品を皆様に先に読んでいただきたかったなぁ!
(まぁ、良いですが・・・)

> きっとこれは、有り得ない状況に陥った人々の人間模様ですよね。

↑↑↑ああ、そういう言い方をしていただけると、なんとなくSFちっくな気分になりますね(^^)
エヘヘヾ(´▽`)

> この後は、きっとこの二人、歳の差を乗り越えて、むふふな生活に・・・。そしてサキは、美しい大人の女性になるのです!(私の脳内ストーリー)

↑↑↑これは、大方の方が予想してくださったようです。
で、fateとしては、現実になんとか馴染んできたサキちゃんは、実はけっこう激しい子だったのダ!
というコメディにして、この征夫くんを振り回してやろう、という目論見でした。フフフ。
お嬢様だった彼女が恋をして、現実の征夫の周囲の女性すべてにヤキモチを焼いてみたり、どうして女として扱ってくれないの? と迫ってみたり。
ああああ、なんだかウラヤマシイ展開じゃ~~~

と、妄想だけは続くのであった・・・
#2302[2012/08/11 19:35]  fate  URL 














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