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Stories of fate


黄泉の肖像

黄泉の肖像 (地下牢) 3

 いや、すまん。違うのだ(何が?)。
 そこには青ひげよろしく吊るされた幾つもの死体がぶら下がっていた訳ではなく、折り重なった何人もの腐った遺体があった訳でもなく、恐ろしい形相の霊が俺を睨んでいた訳でもなく。


 …生きた人間が一人いたのだ。


 まぁ、腐臭が漂っていた訳じゃないし、血の匂いがした訳でもないのだから、確かに死体なんてある筈はなかった。

 しかし…最悪、だ。
 人間、だよな?

 鉄格子の向こう側に、ちょこん、と座った姿勢で、小さな白い影が見えた。髪が長い。女の子?
 マジで鉄格子! マジで地下牢!
 おいおいおいっ、勘弁してくれよ。

 思わず叫んでしまったことをすっかり忘れて、俺は手元を照らしながら鉄の扉の鍵を探す。しかし、鍵なんてなかった。

「あれ…?」

 鉄の扉をぎいいっと開ける。その音に、その人影は俺の方に顔を向けた。どうも怯えているらしい。いや、それもそうだよな。さっき、俺はあらぬ叫び声を上げてしまった訳だし…。

「あの…、ええと、君…大丈夫かい?」

 俺は、腰を屈めてそうっと扉をくぐる。
 近づいてよく見ると、確かに女の子だ。白い服を着て、裸足のままで座り込んでいる。視線は定まらず、俺の方を見ようとはしない。

「俺は、その…、頼まれて君を助けに来たんだ」

 うん、あながち嘘ではない。

「だから、大丈夫。一緒に外へ行こう」

 不用意に触れたりしたら余計怖がらせるだろうかと、俺はただ声を掛け続ける。腰まで伸びた長い髪の毛。白い服は汚れてはいたが、それほど埃にまみれている訳でもなさそうだ。そして、気がついた。隅の方に食べ物を入れてあったらしい皿とコップが置かれている。もう中身は空っぽだった。この家の主が死んだのは1週間前だった筈だ。もしかしたら、この子は1週間、何も食べてないのか?

「あ、もしかして動けないのか」

 俺ははっとする。1週間も飲まず食わずでは、確かに立ち上がることすら出来ないだろう。

「ごめん、触って良い?」

 少女の返事を待たずに、俺はその小さな身体をぐい、と抱え上げて、そして、じゃらりという音と共に引き戻されるように身体のバランスを失った。

「な…っ、なんだ?」

 よろけながら、なんとか体勢を保ち、俺はその元凶を目にする。なんと、少女の足には鉄の足枷が付いていたのだ。

 愕然とした。
 これなら確かに扉に鍵なんて要らない訳だ。
 俺はかああっと怒りが湧き起こった。

 こんな幼い子をっ
 これはいったい、どんな趣味嗜好だ!


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ホラー・恋愛

~ Comment ~


少女が

地下牢にはきっと純真で純粋な少女がいるのだろうなぁ、とだけは想像して読んでおりました。

誰かの小説にありましたよ。高給を払って雇ったアルバイトの女の子を鎖でつないで飼っている、といった遊びをしている男の話が。その男は外見の描写がホリエモンにそっくりで、どっちかといえば笑ってしまいました。

fateさんのこの小説、最初のほうはコミカルタッチだと感じたのですけど、今回はどんなふうに進んでいくのでしょうか。楽しみです。

えーと、こんなところに書いてはいけないのですけど、報告させて下さいね。

音琴さんが(「月と氷」の絵師さんです)フォレストシンガーズのイメージイラストを描いて下さいました。お時間があればぜひごらん下さい。
私のブログにアップさせていただいています。
#856[2011/12/09 10:19]  あかね  URL 

Re: 少女が

あかねさん、

こちらにご訪問ありがとうございます。
これは、それほど「きゃあ~」という感じではないので(fateが、です(^^;)安心しました。

> 地下牢にはきっと純真で純粋な少女がいるのだろうなぁ、とだけは想像して読んでおりました。

↑↑↑おおおお! それはスゴイ!
fateよりもfate world を理解されていらっしゃるじゃないですかっ
何しろ、fsteはこれを描き始めたとき、「地下牢」がある、という設定以外何にも考えておりませんでした。こいつが探偵さんだっていうのも途中で勝手に彼が名乗ったので、あ、そう…と思った程度。
しかも、前章でこいつが悲鳴を上げた時点まで、何を見たのかfateには分かっておりませんでした(--;

> fateさんのこの小説、最初のほうはコミカルタッチだと感じたのですけど、今回はどんなふうに進んでいくのでしょうか。楽しみです。

↑↑↑…しくしく(T-T)これはホラーです! ホラーのつもりで、そういうジャンルで投稿して描き始めたんです!!!
なんで、コメディになったのか、fateにも分かりません…。

> 音琴さんが(「月と氷」の絵師さんです)フォレストシンガーズのイメージイラストを描いて下さいました。お時間があればぜひごらん下さい。

↑↑↑おお! あの! 猫のイラストレーターさん!!!
もう、あのイラストレーターさんは‘猫’で固まってしまいましたっ
だって、結さんが生態不明の猫だって言ってたもんね~
良いなぁ、猫さん!
はい、ありがとうございます(^^)
楽しみに覗きに行かせていただきます!!

実は、すんげ~久々に執筆に入ったので(今までの数カ月、実は新作は一個も描いてないのダ~)ご訪問はちょっくら滞るかも知れませんが、行きます、行きますっ

#863[2011/12/10 08:46]  fate  URL 














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