その夜、ローズは家に戻ってこなかった。
仕事先が首都圏だったこともあるだろうが、仕事後の発作のために戻ってこられなかったのだろう。奈緒が一緒に手伝ったときから、ローズはその系統の仕事は請けていなかった。奈緒が一緒であることを考慮し、軽い失踪人探しのようなものを占い感覚で情報提供するくらいがせいぜいだったのだ。
まだアルバイトの時間中に、スミレから‘梅’に連絡が入り、一晩、奈緒を預かって欲しいと言われ、彼女は渋々引き受けた。
「今日は、ローズは戻らないそうだ。あたしんとこに泊まれってことだよ。」
店主に突然そう言われて、奈緒はひどくショックを受けた表情をした。
「え…、今日…帰って来ない…ですか。」
「心配しなさんな。あの二人はプロだ。」
のんびりとタバコをふかす店主の横顔を見つめ、奈緒は小さく息を吐いた。
怒っているのだろうか。反対されたのに、まだ続けていることを。
奈緒は身が竦むような心細い気持ちになる。彼に嫌われたら、見捨てられたりしたら、奈緒は行くところなんてなかった。
「バカだね。心配することないよ。仕事が終わったら明日にでも土産を持っていそいそ帰ってくるよ。」
店主は長い黒髪を揺らしてくすくす笑った。とても50を過ぎているとは思えない妖艶な笑みで。
仕事先が首都圏だったこともあるだろうが、仕事後の発作のために戻ってこられなかったのだろう。奈緒が一緒に手伝ったときから、ローズはその系統の仕事は請けていなかった。奈緒が一緒であることを考慮し、軽い失踪人探しのようなものを占い感覚で情報提供するくらいがせいぜいだったのだ。
まだアルバイトの時間中に、スミレから‘梅’に連絡が入り、一晩、奈緒を預かって欲しいと言われ、彼女は渋々引き受けた。
「今日は、ローズは戻らないそうだ。あたしんとこに泊まれってことだよ。」
店主に突然そう言われて、奈緒はひどくショックを受けた表情をした。
「え…、今日…帰って来ない…ですか。」
「心配しなさんな。あの二人はプロだ。」
のんびりとタバコをふかす店主の横顔を見つめ、奈緒は小さく息を吐いた。
怒っているのだろうか。反対されたのに、まだ続けていることを。
奈緒は身が竦むような心細い気持ちになる。彼に嫌われたら、見捨てられたりしたら、奈緒は行くところなんてなかった。
「バカだね。心配することないよ。仕事が終わったら明日にでも土産を持っていそいそ帰ってくるよ。」
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