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Stories of fate


花籠

花籠 (東北で) 20

「へい、チェリーボーイ。」

 ‘梅’の店に品物を受け取りに来て、スミレは店の奥にいる店主に挨拶をし、店頭で店番をしている奈緒に笑いかけた。‘梅’の店主は50代半ばの女性だ。彼女は、この世界の住人にしては珍しく、奈緒を気に入って雇ってくれている。大雑把でいい加減な彼女は、商品管理がなかなか苦手で、それを細かく丁寧にやってくれる奈緒を重宝していたのだろう。

 普段、この店は雑貨屋を営み、一般人相手にも商売をしている。奈緒はその看板娘になりつつあるようだ。
 エプロンを付けてレジの前に立っている奈緒に、スミレは情けない声をあげる。

「あまりローズの神経を逆撫でしないでくれるか?」
「…え?」

 用意していた商品を手渡しながら、奈緒はきょとん、と彼を見上げた。

「仕事を引き受けてもらうのに、今までかかったよ…。」

 ぐったりと疲れ切っているスミレに、店主はタバコをふかしながら笑った。

「バカだね、あんた。あいつにとって、この子は地雷のようなもんだよ。ついうっかり触って『どん!』と雷を落とされたんだろ。」

 豪快に笑われて、スミレは、はあぁぁ、とため息が漏れる。奈緒が、‘梅’の店主に経過を話してあったのだろう。

‘竹’の店で聞いた情報に寄ると、奈緒が‘梅’の店主に頼み込んでこの世界の基本を訓練してもらっているらしいという。つまり、仕事を手伝えるだけの身体能力を身に付け、防衛、攻撃の基礎を剣道や合気道を通じて叩き込んでもらっているということだ。それに毒薬の知識や調合技術など、何が得意なのかを見極めるまでいろいろ知識を入れてもらっているとのことだ。

「ご店主。あんたもあんただよ。なんで、この子の依頼を引き受けたりしたんだ。お陰で、俺は今回、ほぼただ働きだ。」
「何、言ってるやら。そんなのこっちには何の関係もないことさ。だいたい、この子がローズと一緒に暮らしている限り、それだけで十分に危険だ。身を守る方法やある程度相手を脅す方法は知っているに超したことはないね。」
「…それだけじゃ、ないんだろう?」
「まぁねぇ。それは、あたしとこの子との契約だ。他人の口出すことじゃないよ。選ぶのも決めるのも、結局は本人だからね。」

 どこかハラハラしながら二人の会話を聞いていた奈緒は、ごめんなさい…とスミレに頭を下げる。

「あいつは、ことチェリーボーイのことになると、どうしてか熱くなるんだよな。よっぽど、お前が可愛いんだろうなぁ。」

 あ~あ、とスミレは恨めしそうな視線を二人に投げて、トボトボと仕事に向かっていった。
 

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ミステリ

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