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Stories of fate


Sacrifice(R-18)

Sacrifice 22

 去っていく姉の後ろ姿を窓辺で茫然と見送る羽那。背後から近づいた智紀は、苦々しい思いで窓の外を見下ろし、気配に気付いてはっと彼を見上げた羽那を乱暴に抱きしめた。

「帰りたいのか?」

 耳元で低い声が聞く。ぎくりとして羽那は首を振った。

「言えよ、羽那。帰りたいんだろ?」

 苛立つような激しい声だった。ぎゅっときつく抱かれた背中が痛くて、苦しくて、羽那は必死に首を振る。

「ぅ…ぁっ…い…痛い…」
「…帰さないよ。もう、どこにもやらない。誰にも会わせない。羽那、君は俺のものだ。ここからいなくなることなんて許さない。」

 羽那の細い身体は智紀の腕の中で悲鳴をあげる。苦しくて息が出来なかった。

 次第にぐったりと力が抜けていく羽那の身体をそのまま抱き上げて、智紀はベッドへ彼女を横たえる。虚ろに彼を見上げる羽那の唇を乱暴にふさぎ、激しく責め始めた。引き裂くように服を脱がせ、怯えて悲鳴をあげる羽那に苛立ち、智紀は何かに憑かれたようにめちゃくちゃに羽那の身体を求めた。

「坊ちゃま・・・」

 廊下にまで響く羽那の悲鳴に、篠田が神妙に扉を叩く。

「よろしいですか?」
「…もう、誰が来ても取り次ぐな。」

 智紀は羽那の身体を乱暴に組み伏せたまま呻くように言った。

「違います、坊ちゃま。…どうか、お話しを…」
「今は何も聞きたくない。」
「…。」
「行ってくれ。」
「…畏まりました。」

 篠田が去ると、智紀は怯えた羽那の目を見下ろして、どうしようもない苛立ちに襲われた。それまで気にも留めなかった羽那の‘恐怖’の光。今まで、その瞳を見るとむしろもっとどこまでも追いつめたくなったものだ。追いつめた先に先回りして、腕の中に絡め取ってやろうと。

 しかし、何故か今は無性に苛立ちがつのるだけだった。

 羽那は、智紀が何に苛立ち、何を怒っているのかまったく分からない。羽那は彼に言われたように千鶴には何も話さなかった。帰りたいと一言も口には出さなかった。その羽那の心の内を千鶴が察して智紀を責めたことなど、羽那には知る由もない。

 そして。
 智紀にも分かってはいないのだ。何故、自分がそれほど苛立つのか。何に、そんなにイラついているのか。そして、何を恐れているのか。

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[恋愛:エロス:官能小説

~ Comment ~


こんにちは!
執筆に入られているとうかがい嬉しく思っているところで
す。
 
この主役たちの家族の対比、
周囲との関わり合いのあり方が絶妙ですね
 
やさしさって難しいし
愛情も難しい
そんなことを思いました
 

#906[2011/12/13 14:17]  磯崎愛  URL 

磯崎愛さまへ

磯崎愛さん、

> やさしさって難しいし
> 愛情も難しい
> そんなことを思いました

↑↑↑ああ、それ、分かります。
親切も心配も労わりも、実は難しい。一方で別の覚悟を決めている人には。
今、ちょうどそんなところを描いていて、しんみり心に響きました。

愛さんworldは、今、浮気しまくってあちこち手を出しましたが、なかなかすべての世界が一筋縄ではいかなくて、ドキドキしているfateです~(^^)

 
#916[2011/12/14 07:20]  fate  URL 

すがりつきたい、と。

勝手な解釈ではありますが、智紀くんは羽那ちゃんに捨てられたくないんですよねぇ。
彼女の身体にすがりついていたいのですよね。

fateさんのおっしゃる
「男が支配しているつもりでいて、実は女が支配している」というの、こういうところにあらわれているのかと思います。

母に甘える幼子のような、智紀。
そんな彼を受け止めてあげているからこそ、お姉ちゃんに帰りたくないと言った羽那、なのかなぁ。
自分の解釈にまったく自信はありませんが。
#2203[2012/06/18 00:45]  あかね  URL 

Re: すがりつきたい、と。

あかねさん、

> 勝手な解釈ではありますが、智紀くんは羽那ちゃんに捨てられたくないんですよねぇ。

↑↑↑そうなんです。
それを智紀自身はまだ分かってないのです。
というか、智紀はそういう理解力というか、思考力というか、大人の考えに至らない、至れない、ガキと同じです。
捨てられたくない。
つまり、捨てられる恐怖を知っている。結局は、親が彼をきちんと抱きしめて、愛されている実感を与えられずに育て損なった結果が現在なんです。

> fateさんのおっしゃる
> 「男が支配しているつもりでいて、実は女が支配している」というの、こういうところにあらわれているのかと思います。

↑↑↑これって、あれじゃないっすか。
普通の夫婦でも、結局はうまくいってる夫婦って、奥さんが旦那をうまく操って、威張らせて、良い気持ちにさせておいて、実は手綱は握っている、ってことっすよね~

> 母に甘える幼子のような、智紀。
> そんな彼を受け止めてあげているからこそ、お姉ちゃんに帰りたくないと言った羽那、なのかなぁ。

↑↑↑はいはいはい。その通りと思います。
ただ、この時点では羽那ちゃんは、まだ智紀が怖いから逆らえない、って方が強いかも。
だけど、何かが彼女を留めている。
それに気づくのはもっと後です。・・・たぶん(^^;
#2205[2012/06/18 19:22]  fate  URL 














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