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Stories of fate


花籠

花籠 (仕事) 11

 一見、無表情に二人の会話を聞いていたローズは、ほっとして安堵の息を漏らす。奈緒は、なかなかうまくやっていた。しかし、ふと彼は母親に従って奥へ行きかけた奈緒を、訝しげに見つめている女の子の姿を見つけてぎくりとする。その子は、奈緒が借りたのと同じブレザー姿だった。


 本当に、篤志には城南高校に知り合いがいたのか?
 戻ってきた奈緒が、その子に話しかけられたりしてはマズイ。出来れば早々に帰って欲しかった。しかし、その子は一向に立ち去る様子がなく、どうも、母親を待っている風だった。

 彼女が戻ってくる前に、その子をどこかへ引き離さなければならない、とローズは思った。




 奈緒は、篤志の部屋へ案内されて、男の子の部屋に初めて足を踏み入れてみた。

 確かに音楽好きだったのだろう、ギターが数本、音楽関係の雑誌が数種、そして楽譜らしきものが本棚にはぎっしりと詰まっていた。そして、ふと壁に目をやると、剥がれかけた音楽関係のグループのポスターの裏に、もう一枚何かが隠れているのを見つけてそっと近寄ってみた。母親は本棚を探って、目当ての楽譜を探していた。

 奈緒は、何の気なしにポスターに手を掛けて、そっとめくってみる。
 そこにあったのは…。

 たくさんの女の子の写真。そして、それは明らかに犯罪の匂いのするいかがわしくも悲惨な姿だった。思わず息を呑んだ奈緒は、声をあげそうになって口を押さえ、よろよろと数歩後ずさった。

「どうかなさったの?」

 母親が楽譜を手に振り返った。

「…あ、…あ、…あの…。いえ。」
「たぶん、これだと思います。」
「あ…ありがとう…ございます。」

 がくがくと震えながら、蒼白な表情で、奈緒はそれを辛うじて受け取った。楽譜を持つ手が震えているのを見て、母親は不審に思ったようだ。

「大丈夫ですか?」
「はい。…あの、…あの…」

 奈緒はすうっと一呼吸して、なんとか気持ちを落ち着ける。

「ほんの少しの間、これ、お借りしても良いですか?すぐに、…すぐにお返しします。」

 奈緒は一刻も早くその部屋を出たかった。この部屋の中に潜む狂気から逃れたかった。怪訝に思った母親だったが、息子の死に動揺しているのだろうか、と「どうぞ。」と頷く。

 部屋を出ると、母親は奥の厨房から声がかかり、奈緒は「一人で戻ります。」と会場となっている畳の部屋へ足早に戻って来た。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ミステリ

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