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Stories of fate


Sacrifice(R-18)

Sacrifice 18

 羽那が智紀の家に来て10日が過ぎたとき、羽那の姉、千鶴が清水家を訪れた。

 玄関先で対応した篠田は、彼女を応接の間へ通し、智紀の部屋をノックする。週末の、もうすぐお昼になるという時間だった。

 昨夜遅くまで勉強に没頭して朝寝をした智紀は、つい先ほど目覚めて、羽那を呼び出したところだった。
 ベッドの上、智紀の腕の中で羽那はすでに朦朧とした状態、彼はすでに下半身をつないだまま、羽那の胸に花を散らそうとしているところだった。

「坊ちゃま、高階千鶴さまとおっしゃる方が、お嬢様を訪ねておいでですが・・・。」

 扉から中へは入らず、篠田はそう声を掛ける。

「…高階?…誰?」

 怪訝そうな智紀の声に、篠田はちょっと言いにくそうに答えた。

「羽那お嬢様の姉上です。」

 智紀は一瞬、腕の中の少女をはっと見下ろしたが、羽那にはすでに何も聞こえてはいなかった。

「…ちょっと待たせておいて。」

 不機嫌な声で、智紀は言った。
 羽那は、もう少しでイキそうだった。そして、彼もこのまま終えるつもりはなく、切なく喘ぐ羽那の身体に支配の熱を注ぐつもりだった。

 客を待たせていることにもお構いなく、智紀は丁寧に羽那の身体を愛撫し、同時に上り詰めた。




 客間に通されてすでに30分が経過している。
 千鶴は壁に掛けられた古い大きな時計を見つめて、出された紅茶のカップに手を伸ばす。

 いつの間にか羽那の荷物を片付け、先方に送ったと言われ、更に、二人の姉には事前の相談もなく、相手方に言われるままにほとんど猶予もなく妹を連れて行かれてしまった。千鶴は羽那がいなくなってしまってから、ずっとその理不尽さを引きずっていた。

 彼女の婚姻の話しは順調に進んで、会社も危機は脱した。両親はもう次の設備投資や事業計画でそれどころではなくなっている。確かに、もう、後戻りは出来ない。羽那が犠牲になって救ってくれた事業を、なんとしても軌道に乗せないと、何のために皆が苦しんだのか分からなくなる。

 そう。理屈では分かる。
 しかし、千鶴は主に自分のために羽那が犠牲になったように感じて、苦しかった。清水の家からはその後、一切連絡はないし、当の羽那からも電話の一本もない。様子を聞きたくても、取りついでもくれない。

 千鶴は我慢できなくなって、遂に、直接妹の無事を確かめに来たのだ。
 もし、羽那が不幸になっているなら、泣いているなら、何が何でも連れ帰ろうと思っていた。

「お待たせしました。」

 若い男の声に、はっと千鶴は顔をあげた。そこには、明かにまだ高校生くらいであろうと思われる少年が立っていた。この家の息子、智紀であろうことはすぐに分かった。しかし、ただの少年ではないその存在の威圧感のようなもの、敵意をむき出しにした彼の瞳は、ぞっとするほど深い色をしている。

「清水智紀です。」

 ワイシャツに黒いパンツ姿の彼は、向かいのソファの前でただそう名乗った。

「あの、高階千鶴です。羽那の姉です。」

 立ち上がって、千鶴は頭を下げる。

「羽那は…元気ですか?」

 言いたいことはいっぱいあったが、千鶴は言葉をすべて飲み込み、辛うじてそれだけを聞いた。妹に会いに来たと告げたのに、何故、羽那をすぐに連れてきてくれないのか、と千鶴は苛立っていた。

「元気ですよ?」

 智紀も千鶴をかなり警戒している様子が分かる。どうぞ、と席を勧めながら、智紀は紅茶を運んできた篠田に何かを小声で告げた。

「会わせていただきたいのですが。」
「…せっかく、こちらの家に馴染もうとしているところに、正直、迷惑です。」

 智紀はカップを傾けながら、相手の様子を窺う。思わずカッとし掛けた千鶴だったが、ぐっとこらえて、同じように紅茶を一口含んで、息を整える。

「一目、無事な姿を確認させていただければ結構です。まったく連絡が取れずに、家族は心配しておりますし。」

 その言葉に、智紀はくすりと微笑む。それでも、その刺すような瞳の光は変わらない。

「家族…。俺も、彼女の家族のつもりですけどね。」

 千鶴ははっとする。そうだ、養子縁組をした以上、羽那はこの家の養女、娘なのだ。相手を怒らせて追い返されてはここまで来た意味がなくなる。千鶴は必死に言葉を探す。

「あの…ちょっと顔を見て、話をさせてもらえるだけで良いんです。羽那に…会わせてください。」
「ええ。良いですよ。今、呼びに行かせてます。」

 カップをテーブルに置いて、智紀は言った。

「どうぞ、ご自身の目で存分に確かめてください。」


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[恋愛:エロス:官能小説

~ Comment ~


気になります~。
いったい、智紀の心の中には、何が住んでいるのでしょうか。羽那を、本当はどうしたいのか。
時々見せる、優しい言動も気になります。

お姉さんの登場で、やっと現実世界と触れあったような空気感ですね。
智紀の反応が楽しみです。
#225[2011/10/26 07:35]  lime  URL  [Edit]

limeさまへ

limeさん、コメントありがとうございます。
うわぉ! そんな風に気にしていただけると、嬉しい反面、そ…それほど、何もないかも…、とドキドキしてしまいます(^^;

「Sound horizon」の『Sacrifice』自体が、本当は姉妹の物語ですので、これからお姉さんがけっこう絡んできます、とだけ…。とりあえず。ああ、でも、サンホラ音楽はあくまでモチーフ、イメージなので内容はあまり関係ないですが(いや、あるかな…??)。

いや、これは小説サイトに掲載していたときは、さすがに内容が内容なのでご感想なんて一切いただけなかったので、超!嬉しいです(^^)

#226[2011/10/26 08:36]  fate  URL 

いよいよ

物語が動き出す気配がしてきましたね!
こういう時は一番ワクワクします!
智紀がいったいなにを秘めているのか、引きつけられます!
姉さんが来たことで、どう変わっていくのでしょうか?
#482[2011/11/11 22:20]  ゆない。  URL 

Re: いよいよ

ゆない。さん、風邪治りましたか~???
コメントありがとうございます。
へへへ。
fateもこの辺からわくわくして描きました。
一気に流れが出来ますよ~
これ以上しゃべると墓穴を掘るので、静かにします…(--;

#486[2011/11/12 06:51]  fate  URL 














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