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Stories of fate


Sacrifice(R-18)

Sacrifice 10

 紅茶を飲んで、ケーキをおいしくいただいた後、羽那は昨日から続く緊張と、恐怖による疲労で無性に眠くなった。ちょっとベッドに横になった次の瞬間には、もうすとんと意識はなかった。いかにも転寝という格好でベッドの上に丸くなった彼女は、そのまますうすうと夕方まで眠り続けていた。

「ふうん…」

 と夕方帰宅した智紀は、ストッキングも穿かずに素足を投げ出したまま眠る羽那を見下ろして、制服のネクタイを緩める。おやつのワゴンを下げに行って、あまりによく眠っているのでお声を掛けませんでした、と言う篠田の言葉に、彼は着替えるよりも先に、羽那の部屋に顔を出してみたのだ。

「狼の屋敷でこんなに無防備に眠り込むなんて、君もなかなか度胸が良いじゃない?」

 ふっと笑って、智紀は羽那の足元に腰をおろして、その細い足のラインを指でなぞる。その刺激にぴくりと反応して、羽那はうっすらと目を開けた。

「おはよう、赤ズキンちゃん。良い夢見た?」

 ぼんやりしたまま身体を起こそうとした羽那の身体を再度ベッドへ押し付けて、智紀は彼女の両腕を左手で捕え、そして片方の手ですうっと太ももを上へ撫で上げる。

「…っ!」

 その手の平の熱さに驚いて、やっとはっきりと目を開けた羽那は、相手を確認して恐怖の色がその瞳に浮かんだ。彼の手は熱かったのに、やはりどこか冷たい光を感じる。

「…あ…」

 兄と呼べば良いのか、名を呼んで良いのかが咄嗟に分からず、羽那は口を開けかけたま固まる。

「冷房は大分弱くしてもらってたけど、足が少し冷えてるね。」

 するすると太ももを撫でながら、智紀の手は次第に上へ上り詰め、下着の上に到達する。そして、そのまま有無を言わせずにそれを引き下ろし始める。

「イヤっ…」

 驚いて暴れる羽那の足を体重で押さえ込むと、智紀はそのまま下着を足から外し、ワンピースを下からぐい、とまくりあげてブラのホックを外した。

「朝は見逃してあげたんだから、もう良いだろ?」

 ぺろりと智紀は唇を舐める。鋭い眼光、赤い舌が蛇のようだ。
 絡みつかれ、身動きが出来なくなる。一瞬、羽那は呼吸すら止めてその恐怖に耐えようとしてみた。

 ぎりぎり制服から見えるところには付けなかったキスマークが、まだ鮮やかに残っている白い肌を見下ろし、智紀は目を細める。

「時間はまだまだたっぷりあるし…これから、ゆっくり愛してあげるよ。俺のセックスが忘れられなくなるように、俺なしでは生きていけなくなるようにね。」

 ふふふ、と智紀は小さな胸に顔をうずめ、谷間に舌を這わせた。
 ねっとりと這い回る他人の舌の感触。背筋からざわざわと何かが立ち上ってくる。

「あ、あ、あ…っ、イヤ…イヤ、いやぁぁぁっ」

 乳首を舌先で転がされ、びくんと背中がはねる。その刺激に、同時に昨夜の痛みが蘇った。痛い・・・、と悲鳴をあげようとしたとき、ふっと彼は動きを止めた。

 不意に扉をノックする音に、智紀は顔をあげ、羽那は涙を浮かべたまま硬直して震えていた。

「お夕食はいかがいたしますか?」

 扉を薄く開けて、篠田が声を掛ける。

「…ああ、そうだね、時間通りお願いします。」
「畏まりました。では、ご用意いたしますのでどうぞ。」

 智紀の家の夕食はかなり早い。夕食の片付けを終える時間を早めにして篠田に自由時間を与えたいという夫妻の配慮からだった。それは幼い頃から徹底して言われていることだったので、智紀もそれに素直に従っている。

 怯えて震えている羽那をため息をついて見下ろし、智紀は掴んでいた両腕を離して、彼女の身体を抱き起こす。そして、その細い身体を支えるように背後に腕をまわし、外したホックを掛け直した。下着を穿かせながら、太ももを撫でると、肌がしっとりと汗ばんでいる。冷や汗なのか、感じているからなのか、羽那には分からないが、彼の手の感触が気持ちが悪かった。

「まぁ、良いや。夕食を食べたら、シャワーを浴びて俺の部屋においで。」

 耳元でそうささやくと、羽那はびくびくしながら唇を噛み締めた。返事をせずにいると、くい、と智紀の手が彼女の顎を持ち上げて上を向かせる。蛇の目と対峙してしまい、羽那は息を呑んだ。

「返事は?」
「…は、はい。」
「そうだよ。言っただろ?君は俺の所有物だ、逆らうことなんて許さないよ?君の家族がどうなっても良いの?」

 すうっと全身から血の気が引く音がした気がした。

 家族…。
 それは羽那の今生きている意味そのもの。存在する理由そのものだった。

 逆らってはいけない。
 それは、羽那がここで最初に教え込まれたことだ。どんなに意に反したことでも、従うしかないと。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[恋愛:エロス:官能小説

~ Comment ~


生贄

まさにSacrificeですね。
この後、羽那に光が訪れるのか、そうなって欲しいと思っています。
やはりfateさんの作品はテンポが良く、すらすら読めますね!
#350[2011/11/04 10:24]  ゆない。  URL 

Re: 生贄

ゆない。さん、コメントありがとうございます!

> まさにSacrificeですね。

↑↑↑そうなんですっ
まんまじゃん…って呆れるくらいですな~

唄の彼女(妹の方?)は火あぶりにされて、恐らく(姉が)最後に教会に集まっていた村人も焼き殺した…っぽいですが、つまり「この世は所詮、楽園の代用品でしかないのなら、罪深きモノは全て、等しく灰に帰るが良い!」という狂気。
これを本当は何かの形でもっと鮮烈に表現したかったのに、別な狂気に取って変わられてしまいました(・・;



#355[2011/11/04 14:01]  fate  URL 














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