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Stories of fate


マーメイド・シンドローム(R-18)

マーメイド・シンドローム 26

 それでも、他に行くところもなくて、俺は結局夜中近くになって家に戻った。母に文句を言われるかな、と思ったが、もう、何もかも面倒でどうでも良かった。それに、俺の母親は知らない振りをしながら俺の行動の意味を何気に理解している。放っておいてくれそうな気も、した。

 ただいまも言わず、玄関を入って、大きなため息をつき、そのままそこに佇んだ。
 玄関の明かりがまだついていた。

 そして、人の気配に気付いて顔を上げた途端、何かが俺に飛びついてきた。
 え?ネコ?
 と一瞬、本気で思った。しかし、それは俺の首に腕を回して抱きついてきたかと思うと、次の瞬間、わんわん声を上げて泣き始めたのだ。

「え?…あれ?えっ?…真珠???」

 よろけそうになりながら、見覚えのある髪の毛と、その小さな頭を抱いて、俺は茫然としてしまった。

「ひどいっ!どうして、置いて帰っちゃったの?ひどい~っ!!!」
「だ…だって、…え?…」

 帰ってこなかったのは、勝手に消えてしまったのは、君の方じゃないか、と喉元まで出かかった言葉を俺は飲みこんだ。

「…ごめん。」

 泣きじゃくる真珠の身体を抱きしめて、俺は言った。

「ごめん、真珠。本当にごめん。俺が悪かった。君を傷つけた。…ごめんよ。」

 すると、次第にすすり泣きに変わった彼女は、やっと顔をあげて俺を見上げた。そして、小さく首を振った。

「…違う。本当は私が、悪いんです。」
「違うよ、悪かったのは俺だ。信じてなかったのは、忘れてしまっていたのは、俺の方だ。俺は…」

 真珠は、涙で濡れた瞳で俺をじっと見つめたまま動かなかった。

「俺は、君を愛しているよ。」

 一瞬、大きく目を見開いた真珠は、やがてゆっくりと瞳を閉じた。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

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