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Stories of fate


マーメイド・シンドローム(R-18)

マーメイド・シンドローム 23

 いつもと同じ朝が開けた。
 しかし、俺の心は、もう真珠と出会う前にリセットすることは出来なかった。

 今、やっと、知った。
 出会ったとき、どうして彼女を助けようとしたのか。厄介ごとが大嫌いで、他人なんてどうでも良くて、斜めから人生を眺め、なるべく人と関わらずに生きていきたかった俺なのに。

 いや、本当は俺は誰かとこんなにも関わりたくて、俺を必要としてくれる存在が欲しくて。



 俺は、…真珠が、好きだったんだ。



 その日一日、夢が頭から離れなかった。

 何をしていても、常に真珠のことを考えていた。いったい、今、どこでどうしているんだろう?変な男に捕まったりしていないだろうか?或いは、正体がバレて、あの夢のようにどこかに閉じ込められているのではないだろうか?

 それとも、と俺は思う。

 海へ、帰ったのだろうか。
 もう、俺に失望した彼女は、人間というものに絶望した彼女は、人魚に戻ってしまったのだろうか?
 それなら、良い。海へ帰れたのなら。

 だけど、もし、誰かに捕まったり、事故に遭ったり、そんなことになっていたら…。それは、間違いなく俺のせいだ。

 俺を頼って人間界を訪ねてきたのに、守れなかったら、それは…。
 そこまで考えて、俺は自分の心の矛盾に気付く。
 守れなかった責任?無事に帰っていたらそれで良い?
 正体がバレて見世物にされていたり、どこかに閉じ込められていることを心配している?

 違う。
 そんなこと、本当はこれっぽっちも思ってやしない。
 違うのだ。俺は…。

 俺はただ、もう一度真珠に会いたい。もう一度、あの屈託のない笑顔を見たい。「愛してると言ってください」と俺に、俺だけに甘えてみせたあの熱い瞳を独り占めしたい。ふわふわと柔らかかった細い身体をこの腕に抱きしめたい。

 本当の望みは、それだけなのだ。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

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