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Stories of fate


背徳の奏 ~漆黒と深紅のモザイク~

背徳の奏 (キリア) 15

 殺した王女はいくつだっただろうか。
 宰ははっきりしない頭で考える。15歳で王宮を終われ、彼女は更に数年、生き延びた。17~18歳くらいだっただろうか?ひっそりと隠れ住んでいた彼女は、最後に何を思って逝ったのか。

「どうして、俺なんだ?」

 少女の身体を抱きながら、宰は腕の中の王女に問い掛ける。苦しそうに表情を歪めて、彼女は小さく吐息を漏らす。

「王女さまなら、相手はいくらでもいただろう?」

 王女は彼の下で悶えながら、ようやく目を開けた。

「・・・相手など、いると思ってるの?」
「思うよ。」

 ゆっくりと奥を突かれ、うっ・・・と王女は空(くう)を見上げる。
 宰は記憶を手繰り寄せる。

 仕事の相手など反芻することはなかった。どの仕事も後味の良いものではないし、思い出したくもない罪だ。仕事と割り切らなければ生きていられない。そして、極力思い出さないことに労力の大半を使っている。

 特に、王女殺害は苦しい経験だった。
 目の前に現れた暗殺者を、王女は気丈に見つめ、事態を察すると淡い微笑みさえ浮かべたように見えた。
 銃を向ける彼をすうっと見据えたまま、彼女は決して目をそらさなかった。

 銃口を通して見詰め合った刹那。一瞬ではあったが、その瞳に何かを感じて宰は心が揺れた。
 そして、その思いに捕われるのを恐れて慌てて引き金を引いたのだ。

 あのとき、王女の瞳に浮かんだ色は・・・。
 命乞いでも、恨みでもなかった。
 そう、あれは・・・。
 命の揺らぐ、熱い魂の叫びだった。

「あ・・・あ、あぁっ」

 年端もいかない幼い少女の身体を貫きながら、そのせいばかりではない王女の様子に、宰はふと動きを止める。

「・・・お前・・・キリア、初めてだったのか?」

 涙に濡れた瞳で、キリアははぁはぁと喘いでいる。震える細い身体、そして小さく痙攣する腰を抱いたまま、宰はじっとりと全身に汗がにじんだ。

「どうして・・・」

 もう、彼女は何も答えなかった。虚ろに彼を見上げた彼女の瞳は、哀願するように切なく揺れた。
 宰は、ゆっくりと少女の頬にかかる髪をかき上げ、優しくその唇にキスを落とした。

「良かったのか?俺で・・・」

 微かに、王女が頷いた気がした。
 この身体の主には申し訳ないと思ったが、宰はそのまま王女を抱きしめ、避妊する余裕もなく、少女の中に後悔と愛しさと欲望を吐き出して果てた。




 身体を離した途端、すうっと何かが少女の身体から抜けていくのを感じた。

「キリア・・・?」

 ゆらゆらと陽炎が立ち上るように、それは形を成すことなく、揺れながら空気に吸い込まれていき、そして、最後の光が消え去った瞬間、少女の口から小さな吐息が漏れた。

「キリア?」

 王女の気配は完全に消え去っていた。
 茫然と空(くう)を見上げて、宰は、王女が昇天したことを知る。

「・・・残していた思いが・・・これだったっていうのか?」

 不意に、彼の胸は鋭い痛みを放った。
 そのために、俺に会いに来たのか?
 他の女の身体を使ってまで・・・?

 この子に取り憑くことが出来たのは、彼女が当時、ほぼ心神喪失状態だったからだろう。俺の周りを浮遊していた王女が、あのとき、あの屋敷に俺を呼び込んだに違いない。この子と出会わせるために。

 女の執念とは恐ろしいものだ、と感じると同時に、恋も知らずに逝った王女の無念さを思った。
 自分を殺しに来た男。
 王女にとっては同じだったのだろうか。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ホラー・恋愛

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#77[2011/10/03 17:03]     














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