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Stories of fate


背徳の奏 ~漆黒と深紅のモザイク~

背徳の奏 (亡霊) 6

 一旦、家に戻って、写真を再度確認する。
 写真の中にいる、どの男だろうか?3人一緒にいるとは思えない。中の一人であろう。

 小さな写真を穴のあくほど見つめ、頭に叩き込む。余計な巻き添えを増やしたくはない。狙いは王子ただ一人だ。
 部屋にこもって準備をしていると、部屋の扉の外に人の気配がした。そこでようやく思い出す。

「どうした?」

 扉を開けて覗き込むと、キリアが所在無く佇んでいた。
 彼女は宰を見上げたまま、どこかもじもじしていた。今さっき、一緒に夕食を食べたばかりだ。お腹が空いている訳ではないだろう。

「何か欲しいのか?」

 彼女は、困ったように宰を見上げ、そして俯いた。白い服が少し薄汚れて、髪の毛が埃にまみれてが顔にかかっている。その様子をぼんやりと見下ろし、やっと彼は思い当たる。

「ああ、風呂に入りたいのか?」

 少女は俯いたまま小さく頷いた。宰自身は、昨夜、ミラの家でシャワーを浴びていた。彼は一日二日着替えもせずに平気だが、女の子はそうはいかないだろう。

「ごめん、そうだな。」

 廊下に出て、宰はバスルームに案内し、明かりを点けた。湯沸かし器の電源は普段切ってあるので、すぐにはお湯が出ない。この国には数は少ないが温泉があり、日本のようにバスタブというものがある。お湯をためて湯に浸かる習慣は同じだ。

「電源はここ。すぐには温まらないから10分くらい待って蛇口をひねって、お湯をためると良い。これからは勝手に入って良いからね。」

 言いながら、宰は彼の背後に佇む少女を振りかえり、「ああ、そうか、着替えか・・・。」とまったく何も考えていなかった現実を思い知る。
 人、一人を引き受けるというのはそういうことだ。生活のためのすべてをなんとかしなくてはならないのだ。

「ごめん、着替え用意してなかったな。明日、帰りに何か調達してくるから今日は我慢してくれるか?」

 キリアは無表情に彼を見上げて頷いた。
 ふと、宰は奇妙に感じた。
 なんでこの子はしゃべらないのだろう?

 声が出ない訳ではないし、話せない訳ではないことは、自分の名前を名乗ったときに確認している。あれ以来、彼女は一言も言葉を発しない。

 妙に感じはしたが、家族を失ったばかりのこの子が相当のショックを受けていることも分かっている。
 まぁ、どうしても必要な事態になれば、何か話すだろう。
 宰はそう考えて気にしないことにした。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ホラー・恋愛

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