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Stories of fate


背徳の奏 ~漆黒と深紅のモザイク~

背徳の奏 (亡霊) 5

 タネを撒いただけで終わったかな、とその夜、宰はミラを抱きながら思う。

 だけど、彼女ははっきりと‘残党’はいる、と断言した。つまり、その居場所にも心当たりがある、或いは彼女自身が彼らを匿っている可能性があるということだ。日中、仕事でもないのに出かけているのがその証拠だ。

 明日は、このままミラを尾行させてもらおうと宰は考えた。
 そして、マドラの方も、宰が狙っていることが分かったら必ずアクションを起こすに違いない。
 できれば、国外へ逃亡していただけると助かる。

 しばらく家に戻れそうにないな、と宰は思う。キリアにはパンと粉末スープの在り処を教えてきたが、一人きりで暗い家の中にこもっているのは辛いだろう。

 出来るだけ、早く戻ってやりたいと、そんなことを考えた次の瞬間、宰はそれまで抱いたことのないその奇妙な思いに苦笑する。

 まるで、『家族』を持ったみたいな気分だった。



 
 朝早くミラの家を後にして、宰は近くの空き部屋に身を潜める。朽ちて壊れかけた小さな家が斜め向かいにあり、宰はそこに入り込んで、崩れかけた壁の隙間からミラが出てくるのを待った。

 彼女は、母親の昼食までを準備すると、明るくなり始めた空をちらりと見上げながら扉を出て来た。
 手には何か包みを抱えている。食料だろうか?

 宰は、そっと彼女の後をつけた。通りには人影がまばらで、あまり近くに寄れない。しかも、ミラは明らかに周囲を警戒していて何度か振り返っている。

 宰は尾行はあまり得意ではない。
 ミラは、足早に歩を進めながらどんどん町を離れていく。建物の陰に身を潜められなくなり、宰は益々窮地だ。ミラがどんどん遠ざかっていくのを見送るしかない。不意に、彼女が細い路地へ曲がったのを見て、彼は駆け出した。

 息を切らせてミラの消えた角に辿り着き、彼女の消えた方へ入り込んでみたが、もう、ミラの姿は跡形もなかった。

 チッと舌打ちをして、宰は路地を走りぬけ、更に狭いT字路にぶつかった。左右を見渡してみも、どちらにも彼女の姿はなかった。仕方がない。宰はとりあえず、右に進む。そこは古い家屋が並ぶ住宅のようだ。どこの扉もきっちり閉っていて、中には人の気配が感じられる。

 窓から様子を窺ってみても、人の声が聞こえるだけで姿は見えない。
 何軒目かの家の前で、宰はふと立ち止まった。その家の入り口にひらりと何かが落ちていた。拾い上げて見てみると、枯葉のようだ。ふと匂いをかいで分かった。それは乾燥したハーブの葉のカケラだった。昨日、ミラが淹れてくれたものと同じ香りだ。

「ここか・・・?」

 道行く人が怪訝そうに宰を見つめる。住人以外があまり立ち入ることのない場所なのだろう。
 宰は、一旦そのままその家を通り過ぎる。

 王宮から遠く離れた比較的田舎のこの町だったが、こんな普通に人が生活している場所に、王家の残党が身を潜めているだろうか?

 宰はいぶかしむ。しかし、いや、だからこそ見つからないのかも知れない。こんな人目につくところに潜伏しているとは、むしろ、誰も考えない。

 当たりだろう、と宰は確信を抱く。
 そのまま夕方まで周辺に身を潜め、ミラが出てくるのを待った。

 そして。
 彼女はやはりその家から出てきた。朝持っていた包みはその手にはなかった。


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~ Comment ~


中身がどしっと

5編だけ読んでもどっしり中身が詰まっていて、満腹感がありました。

かつまさん原作なのですね?
fateさんが書かれたこちらを読み終えたら、かつまさんの作品も読んでみたいと思っています。

私も先日、fateさんがコメントに書いて下さったひとことがヒントになって、短編を書きました。
fateさんにはなにかとお世話になってますよね。
#273[2011/10/30 11:34]  あかね  URL 

Re: 中身がどしっと

あかねさん、嬉しいご感想コメントありがとうございます!
いや、実は何かありそう…感だけ思い切り出しておいて、え? それで終わり??? みたいな気もするのですが、今のfateの力ではこれが限界でした。
下調べもなぁんにもやってないので(^^;
かつまさんの物語は初期設定だけお借りした…感じです。
内容はまったく違います。
あちらの世界の悲しさ、重さ、それに酔い過ぎて、どこかに‘救い’が欲しくなって悶えた末に勝手に描かせていただいた世界です。

> 私も先日、fateさんがコメントに書いて下さったひとことがヒントになって、短編を書きました。

↑↑↑うわお! すごいじゃないですかっ
fateのなあんにも考えてない勝手な一言をくみ取ってくださって物語を描いてくださるとはっ!!
嬉しいです(^^)

どのstoryなのか、あとで教えてください!

#275[2011/10/30 13:33]  fate  URL 

ミラさんは思うよりもしたたかな女性だと思うので、宰くんが嗅ぎつけたのも囮ではないか、と考えてしまうミステリ脳(^^;)

さてさてどうなるやら……。
#601[2011/11/20 15:36]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

ポール・ブリッツさまへ

ポール・ブリッツさん、なかなか鋭いご指摘~
limeさんへのコメントを拝見する限り、そういうことを突っ込むだろうな~と思ってました~!!
というか、ポールさんご自身が、そういう世界を描きますからね。
fateは何気に単純で、甘いので、‘狂気’は描くけど、人間のしたたかさをあまり突っ込めないから、微妙な感じでいきます。
へへへ~
あまりしゃべくると単なるネタバレになるので、黙ります~

#607[2011/11/20 20:39]  fate  URL 

革命に暗躍する殺し屋

なんかすごいです(@@;
私はこういうの読まないので、すごく新鮮で・・・
そして「ルパンIII世」のようです・・・。
ベタな表現ですいません(^^;

拍子で拾ってしまったこのキリアという少女がこのお話のカギなんですね。
この先、どう展開していくのかワクワクです^^
#741[2011/11/30 05:11]  あび  URL 

Re: 革命に暗躍する殺し屋

あびさん、

変な世界に誘ってしまったようで(^^;
でも、これ、作品説明にありましたようにもっと鮮烈な元ハナシがあります。
そちらの世界は本当に非情なる研ぎ澄まされて世界で、心の葛藤に苦しんだ人物たちの清らかに切ない旋律と共に流れたstoryでした。

> そして「ルパンIII世」のようです・・・。

↑↑↑おお! なんだか、すごい褒め言葉をいただいたようでテンションあがってます!!!
好きです、ルパン三世! 「カリオストロの城」が個人的には好きですが、ちょっとルパンの作画が可愛すぎる、とも言われておりますな(^^;
ああいう爽快感のある物語って良いですね。
fateもそれを目指してみたいけど、どうも曖昧な世界が多くて(--;

キリア。
この名前をよ~く覚えておいてくださいね~
なんつって。

原作が、こういう出だしで始まり、切ない終わり方だったので、悶え苦しんだfateがほんの少しの‘救い’が欲しくて勝手に描かせていただいた世界でした(^^)

#743[2011/11/30 08:18]  fate  URL 














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