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Stories of fate


永遠の刹那

永遠の刹那 (付いていきたい) 33

「静のご両親は、もしかして、もう届けを出したことをご存知だった?」
「ああ、そりゃあね。」

 昼休み、おにぎりを食べながら、向かいに座る静を見ると、彼は鶏唐揚げを幸せそうにぱくついていた。自分で料理するくせに、そういう惣菜ものも普通においしそうに食べる彼を、不思議な思いで見つめる。

「反対とか・・・されなかったんですか?」
「なんで?」
「だって・・・素性も知れない人間を・・・。しかも、会って数日だったじゃないですか。」
「そういう経過は知らないよ。それに、彼らだって、出会ってその日に恋に落ちて、母は男を追っかけて家を出ちゃった人だし。あまり子どもに干渉しない親なんだよ。妹には女の子だから、さすがに多少気を使っていたけど、もう、俺は30過ぎてるしね。」

 でも、だって・・・私は、まだ言ってないことがある。

「天音ちゃん、君、毎月2ヶ所くらいに送金してるだろ?」
「・・・ええっ???」

 突然、その話題を振られて私は焦った。

「手数料がもったいないから、俺が一旦立て替えるよ。そして、給料から差し引くってのはどう?」

 ごく普通のことを話すみたいに、静はおにぎりをもぐもぐ食べながら言った。

 なんで、分かったの?と思ったが、そういえば、こいつは、「給料はこの口座に振り込むから。」と言って勝手に通帳とカードを作り、暗証番号まで勝手に私の誕生日と諸々を合わせたもので作った上で、カードだけをくれたのだ。通帳の名前がそのときすでに、姓が‘東尾’になっていたから、見せられなかったんだろう。

「いくら、残ってるの?負債。」
「・・・知ってたんですか?」
「いや、送金してるってのはそういうことかな、と思っただけ。」
「・・・270万くらい・・・です。」
「了解。それとも、送金するより、会いに行ってみる?お礼とお詫びを兼ねて。それから、ご両親のお墓参り兼結婚の報告に。」

 静が、あまりに変わらない瞳で微笑むので、私は思わず目をこらして彼の表情を見つめてしまった。

「どうしたの?」
「・・・いえ。あの、でも、良いんですか?だって、それは私の両親の借金で、静には関係ないことなのに。」
「関係ない訳ないじゃない。君のご両親だったら、俺の親でもあるんだよ。」
「でも、・・・その、そういうことって、嫌悪感、ないですか?」
「何に?」
「借金という事実に。」

 痛い思い出が蘇ってくる。あのときの先輩の、冷たく侮蔑の意をあらわにした瞳。
 あのとき、自分がどれだけ傷ついたのか、むしろ静の穏やかな瞳の光に知った。

「ないよ。それは、ご両親が必死に夢のために頑張った証だ。それが悲しい結果に終わったことは仕方がない。お金を貸してくれた人には返済して、君はまた出直せば良いんだよ。」

 事も無げに、静は言った。

「俺も君の生まれ育った町を見てみたいしね。」

 微笑む彼の目は、優しい光でいっぱいだった。




 なんで、一緒に住まないのか?

 なんとなく、そういうスタイルで来てしまったので、結局、私は週末だけ彼の・・・ああ、そうか、私の家でもあるのか?に、泊まっている、形だ。

 彼は忙しい人だから、家にいない時間帯も多いし「君も一人だけの空間が欲しいこともあるだろ?」とアパートは解約するつもりはないようだ。


 その内、家の方に泊まる時間が多くはなってくるのだろうと思う。
 たまに作ってあげる田舎料理を、静はことの他喜んでくれるし、調理器具が揃っている彼のキッチンの方が料理はし易い。
 



 何が幸せか?
 きっと、それは感じ方次第。

 一瞬の‘幸せ’を永遠に感じていれば良いだけかも知れない。
 静が彼の信念で生き抜いていく姿を、寄り添って支えたい。過酷な世の中を泳ぎきっていく姿を永遠に留めたい。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[コメディ・恋愛

~ Comment ~


こんばんは。

>「ないよ。それは、ご両親が必死に夢のために頑張った証だ。それが悲しい結果に終わったことは仕方がない。お金を貸してくれた人には返済して、君はまた出直せば良いんだよ。」

ものすごく、この言葉、気に入った。
こんな風に考え、こんな言葉で表現してくれる人、素敵だね。

結婚を決める瞬間。そんな風に思った。

昔、ラジオを聴いていて、ある女性が結婚を決めた時のこと
放送していたこと、思い出した。

女性はお父さんが大好きなお父さん子で
でも、もうお父さんは亡くなっていて・・
彼氏にお父さんのことを話したら
「良いお父さんだね、私も会いたかった」と・・
その言葉で、この人とは一生一緒に暮らせると思ったのだと。

でも、これを聴いたのは、11~20年前?
良い話を、思い出させてくれて、ありがとう。。
#2501[2012/10/10 23:28]  雫  URL  [Edit]

Re: こんばんは。

雫さん、

ありがとうございます(^^)

ヾ(´▽`)
静をそんな風に捉えてくださって、嬉しいっす~
そういえば、静と雫って似てますね。
音(おん)の響きが♪

静は、ガラ悪いし、口悪いし、こんなんだけど、とにかく「ヒトを愛している」人間。なんすよねぇ。
恋愛でなくって、「ヒトを愛する」ってどういうことか。
ちょっとそんなことを模索してみました。
そして、どんな職業でも、基本、ヒトを愛していないと良い仕事は出来ない、と思います。
特に、医療や教育に関わる人間は。
だけど、そういう直接的なモノじゃなくっても、例えば食品を扱う人だって、ヒトを愛して、この自分が今陳列している商品を買って食べてくれるお客さん、を明確に思い浮かべられないとダメだと思う。

フフフ。

良いオハナシをこちらこそ、ありがとうございました。
ヒトを好きになる瞬間、覚悟を決める瞬間、そのときにあった言葉なんて、素敵ですなぁ!
#2502[2012/10/13 06:26]  fate  URL 














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