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Stories of fate


永遠の刹那

永遠の刹那 (危ない患者) 29

 なんだろう?やっぱり手伝えって?いや、もうそろそろ仕事が終わった頃だろうか・・・。

「もしもし?」

 個室に駆け込んで、私は電話に出る。

「あ、天音ちゃん?今、どこ?」
「ええと・・・、買い物してたら小牧さんに捕まって、今、一緒に食事を・・・」
「小牧さん?」

 不意に静の声色が変わった。

「地下にあるヤバそうな喫茶店?」
「え?・・・ああ、そんな感じです。」

 一瞬、間が空いた。

「天音ちゃん。」
「は、はい。」

 なんだか、静の声がいつになく真面目で、厳しくて、私はちょっとうろたえた。何かマズイこと、した?

「良いかい?俺もすぐそこに向かう。何か理由を適当につけて、出された食事は手を付けちゃダメだよ。」
「・・・ええ???」
「分かったね?」
「・・・はい。」

 かなり、動揺した。
 ど・・・どういうこと?小牧さんって何かヤバイ系の人?

 確かに彼は時々、素人さんじゃないよね?って目をすることがあるけど、静の患者だし、普段はおもしろい普通のおじさんだし・・・。

 いや、それよりも。静があの家からここに辿り着くには、少なくとも40分以上かかる。その間、どうやって食べずに待てというのか?

 あまりに動揺して、必要以上に個室に留まってしまった。
 かなり青い顔をして出て行ったと思われる。席で、ちょっと不審顔の小牧さんの顔をマトモに見られなかった。

「ずいぶん、長かったね。」
「す・・・すみません。あの、ちょっと今朝からお腹をこわしていて・・・。」

 長かったことの言い訳に適当に出た言葉に、私は、食事を断る理由を一緒に思いついた。

「あの、それで、せっかくごちそうしていただけるのに申し訳ないんですけど、食べるとまた・・・ちょっとお腹が・・・。」

 小牧さんはそれほど疑わなかったようだ。

「そうか・・・。」

 と、ちょっと残念そうだったが、「じゃ、あったかいスープか何か頼もうか?」と優しいことを言ってくれる。

「いえ、ちょっと何もお腹に入れずに今日一日様子を見てみますので。」

 嘘がバレないかとドキドキしながら、私は冷や汗をぬぐう。

「それじゃ、食事はまた今度ってことで、ちょっと相談なんだけどさ。」

 まだ食事が運ばれていないテーブルに、小牧さんはおもむろに書類を広げる。
 最近、書類で痛い目に遭ったばかりなので、私はちょっと警戒する。

「ああ、借金の保証人とかじゃないから、大丈夫。」

 小牧さんは私の引きつった表情を見て笑う。

「ただ、ほら。ちょっと俺も商売しててさ。ノルマがあるのよ。女の子向けに小物とかも扱っているんだよね。便箋とか安いものから香水のようなものまで。」
「輸入品ですか?」

 彼が示したパンフレットの商品が、両親が扱っていた品に似ていて、私はふと興味を惹かれる。

「おお、そうだよ。知ってるの?」
「両親が輸入雑貨店をやってたもので。」
「へえ。」

 小牧さんは本気で驚いた表情をした。

「それはまた偶然だね。じゃ、価値は分かるでしょ?」
「私はあまり関わってなかったので。事務を手伝ってたので、商品の値段は知ってますけど・・・。」

 小牧さんはなんだか嬉しそうににこにこする。

「まとめて買うとけっこう安く手に入るから、ここで買って、君のとこの店に並べたりも出来るよ?」
「いえ・・・」

 もう、店はないんです、と一瞬言いそびれた。

「試しに、サンプルだけ注文してみない?最初はかなり安くなるよ。」

 彼は、セットで数千円のサンプル品を指す。女の子の部屋に小物として置いてありそうな可愛いガラス細工や香水の瓶、アンティークの銀のスプーンなどだ。なんだか懐かしくて、私は見入ってしまう。

「これが今日売れると俺、かなり助かるんだけどなぁ。俺を助けると思って、これだけ、協力してくれる?」
「・・・はあ。これだけなら。」

 小牧さんの屈託無さそうな笑顔に騙されてしまった。
 彼は、マスターに言って、ペンと朱肉を用意させる。

「ここにサインして、・・・印鑑なんて持ってないよね?」
「ありません。」
「じゃ、拇印で良いよ。」

 一瞬、やはり私は躊躇った。

「あの・・・印鑑が治療院にありますから、今度、そっちでも・・・」
「いや、今日までに達成しないとダメなんだ、これ。」
「はあ・・・。」

 促されるまま、私はサインして、拇印を押されてしまう。

「いやぁ、ありがとう!これで助かったよ。」

 小牧さんは本当に嬉しそうだったので、私もまぁ、良いか、という気になった。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[コメディ・恋愛

~ Comment ~


きっと

これ絶対怪しいですよねっ?
天音ちゃん油断しすぎ!w
早く逃げてー!
#411[2011/11/07 22:52]  ゆない。  URL 

Re: きっと

ゆない。さん、そうです、その通り!
ヤバいんですって~!!!

#414[2011/11/07 23:46]  fate  URL 














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