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Stories of fate


永遠の刹那

永遠の刹那 (危ない患者) 28

 季節は真夏に差し掛かり、私はさすがに夏用の服を買おうと、休日、一人で町に出た。

 静は、例のヤバイ方の仕事で呼ばれていた。今回は、癌の摘出手術と聞き、私は同行をご遠慮申し上げた。それに関しては彼も理解があって、あっさり許可されたのだ。さすがに、生々しすぎる!

 っていうか、良いのか?本当に・・・。
 聞くと、ブラックジャックさながらに助手もろくに使わずに手術をやってのける御仁らしいが、患者に密告されたらさすがにヤバイだろう・・・。

 いや、法を犯しているのは患者の方も同じだから、そういうことにはならないんだろうな。むしろ、同業者に見つかった方がマズイらしい。

 やっと服を一着買って、お昼近くになり、ぼうっとウィンドゥショッピングをしていると、背後から不意に声を掛けられた。

「よう!奥さん、一人かい?」

 何故、奥さん、と声を掛けられて振り返ってしまったのか?
 明らかに知っている声だったからである。

「あ、こんにちは、小牧さん。」

 かなりの頻度で治療に通っている患者さんだった。一見、ヤクザ系のがっしりした体型の50代くらいの男性で、静はあまり来て欲しくなさそうなのに、なんだかんだと理由を付けてしょっちゅう予約を入れる人だ。

 何が楽しくてそんなに治療してもらいたいのか・・・。

「旦那は一緒じゃないのかい?」

 ふと周りを窺う小牧さんの様子に、私は笑う。

「静は今日も仕事です。」
「なんだ、そりゃ寂しいな。良かったら俺がお昼ごちそうしてやろうか?」
「まさか!」

 患者におごられてどうする!

「それに・・・旦那じゃないですから。」

 今さらなんだが、ちょっと反抗的な気分になって、私は言った。
 すると、彼は、へえ・・・とまじまじと私を見つめる。
 ・・・え?と思ったときには大抵遅い。

「じゃあ、天音ちゃんはフリーなんだね?」

 その笑顔がちょっとイヤな感じがした。
 答える間も与えられず、小牧さんは私の腕を掴み、ぐいと引いた。

「ちょっとだけ、付き合ってよ。せっかく会ったんだし。」
「え???ちょっと・・・っ」

 静の患者だと思えば、それほど邪険にも出来ない気がして、私は何がなんだか分からずに、引きずられるように小牧さんに腕を引かれていく。

 小牧さんが入って行ったのは、地下にあるなんとなく怪しい喫茶店。
 客が扉から入って来ても、カウンターの奥にいるマスターはほとんどこちらを見向きもしない。
 良いのか?そんな無愛想で・・・。

 小牧さんはさっさとテーブル席に陣取って、私を奥へ座らせる。

「マスター、ランチセット2つ。いつものやつ。」
「えっ???あの、本当に私は・・・」
「まぁ、そう遠慮せずに。」

 小牧さんが微笑む。薄暗い店内。目が慣れてよく見ると、奥にも人が数人いるようだ。
 不意に、携帯電話が振動する。ついでに、さっき自動販売機で買って一気飲みしたジュースのせいで、トイレに行きたくなる。

「すみません、ちょっとお手洗いに・・・。」

 私がもじもじすると、一瞬私を見据えた小牧さんは、はい、という風に席を立って、外へ出してくれる。奥にお手洗いの案内表示が見えて、私は慌ててそこへ入り込んだ。

 一旦切れた電話が、再度かかってくる。
 このしつこさは静だな。っていうか、今、私に連絡をくれるのは彼くらいなものだ。故郷の幼なじみとはいろいろ気まずくてずっと連絡を取っていないのだ。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[コメディ・恋愛

~ Comment ~


霊感で危険を察知?

だから・・

>一旦切れた電話が、再度かかってくる。

何だか、やばそうな感じになってきたね。
トラブル勃発って、やつに。

また、次。
#2427[2012/09/20 22:18]  雫  URL  [Edit]

Re: 霊感で危険を察知?

雫さん、

静の周囲はヤバイ世界ばっかりです~(^^;
ははは。
まぁ、今後、静の傍にいるなら、天音ちゃんも、いろいろ勉強しなくっちゃね。
頑張れ、天音ちゃん!

#2429[2012/09/21 06:49]  fate  URL 














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