不意に目を伏せた私を、ぐいと抱き寄せて、静は「どうしたの?」と私の顔を覗き込んだ。
「・・・い、いえ。」
慌てて私は彼から離れようと腕を突っ張る。
「天音ちゃん、君さぁ・・・」
静は私の両腕をそれぞれ捕まえて、くるりと身体を回し、私の身体をソファに押し付ける。
「何か、隠してるだろ。」
ぎくりとして私は彼の顔を凝視する。静の目は私を探るようではなくて、単に心配そうに曇っていた。何もかもを見透かされそうな綺麗な瞳。私は思わず目をそらす。
「この際だから、もう全部白状しな。」
「は・・・白状って。別に、私は・・・」
「じゃあ、それを俺の目を見て言いなさい。」
両腕を捕まれていて、身体はソファに押し付けられて彼が上に乗っかっているから、私は身動きが出来ない。
「な・・・何もないですっ」
ふうん・・・、と静の呟き。思わずぎくりとして私は彼の顔を見上げた。だいたい、その後に続くのが「あの届け・・・」という台詞になるのだ。
「じゃ、それを証明してもらっても良いんだね?」
え???と私は彼の瞳の光に怯えた。
探偵社を使ったりとか、私の住んでいた町に問い合わせたりってこと?
そんなことをされたら、一発でバレてしまう。まだ、数百万円の借金の事実が。
「部屋に移動しようか?ここじゃ、狭いし。」
「・・・は?」
「先にシャワー浴びたかったら浴びても良いけど、別に必要ないでしょ?」
「・・・はああ???」
「今さら驚いた振りしたってダメだよ。いい加減、諦めたら?」
それの、どこが、何が、何の証明になるのっ?
「ちょ・・・っ、ちょっと待ってくださいっ」
「良いよ、何分?」
「いやいやいや、そうじゃなくてっ」
「そんなに長い時間は待てないよ。分かってると思うけど。」
「ですから、時間の問題じゃなくて・・・っ」
「あのね、天音ちゃん。」
にこり、と静は微笑む。
「君、往生際が悪すぎるよ。」
・・・違うでしょう!!!
結局、ものすごく良いタイミングで往診(今度は普通の・・・)の依頼の電話が入り、静は不機嫌な顔で私をアパートまで送ってくれた。
「どうして、こう、誰も彼もが寄ってたかって俺の邪魔をするんだろうね。」
そんなことはないでしょう・・・、と笑いながらも、私は少し彼が気の毒になった。
週末に往診の依頼って予約でしか普通は入らないらしいので、よほど急患だったらしい。
でも、私にとっては助け舟だったんですけど。
「覚えといてね、天音ちゃん。」
「・・・え?」
走り去る車を見送って、私は思わず叫びそうになる。
わ・・・、私が悪いんじゃないからねっ
最後にちらりと私に視線を落とした彼の瞳がちょっと本気で怖かった。
だからって・・・、だからって・・・、もう、この際、届け出してしまおう、なんて、自棄を起こさないでくださいね、先生!
あまりに慌ただしくて、私は、そういえば静のご両親とマトモに話しらしい話しをしなかったことを忘れていた。
彼らは、普通なら真っ先に聞くであろうことを、何も聞かなかった。
肩書きや役職や、その人に付随する情報には興味を抱かない。そういえば、静も初めからそうだった。ただ、私を見つめて、私の魂そのものと会話するように、・・・そう!いきなりプロポーズしたのだ。
どちらかと言えば、私もそのタイプかも知れない。
知りたいのは、相手が何を好きで、どんなことに興味を抱いて、何を誇りとして生きるのか。
そこに尊敬や信頼が生まれる。
それ以外は、正直、どうでも良いことだ。
静のお母さんが、息子のどこを好きになったのか?と聞いた。
そうだ。それが、すべてだ。
「・・・い、いえ。」
慌てて私は彼から離れようと腕を突っ張る。
「天音ちゃん、君さぁ・・・」
静は私の両腕をそれぞれ捕まえて、くるりと身体を回し、私の身体をソファに押し付ける。
「何か、隠してるだろ。」
ぎくりとして私は彼の顔を凝視する。静の目は私を探るようではなくて、単に心配そうに曇っていた。何もかもを見透かされそうな綺麗な瞳。私は思わず目をそらす。
「この際だから、もう全部白状しな。」
「は・・・白状って。別に、私は・・・」
「じゃあ、それを俺の目を見て言いなさい。」
両腕を捕まれていて、身体はソファに押し付けられて彼が上に乗っかっているから、私は身動きが出来ない。
「な・・・何もないですっ」
ふうん・・・、と静の呟き。思わずぎくりとして私は彼の顔を見上げた。だいたい、その後に続くのが「あの届け・・・」という台詞になるのだ。
「じゃ、それを証明してもらっても良いんだね?」
え???と私は彼の瞳の光に怯えた。
探偵社を使ったりとか、私の住んでいた町に問い合わせたりってこと?
そんなことをされたら、一発でバレてしまう。まだ、数百万円の借金の事実が。
「部屋に移動しようか?ここじゃ、狭いし。」
「・・・は?」
「先にシャワー浴びたかったら浴びても良いけど、別に必要ないでしょ?」
「・・・はああ???」
「今さら驚いた振りしたってダメだよ。いい加減、諦めたら?」
それの、どこが、何が、何の証明になるのっ?
「ちょ・・・っ、ちょっと待ってくださいっ」
「良いよ、何分?」
「いやいやいや、そうじゃなくてっ」
「そんなに長い時間は待てないよ。分かってると思うけど。」
「ですから、時間の問題じゃなくて・・・っ」
「あのね、天音ちゃん。」
にこり、と静は微笑む。
「君、往生際が悪すぎるよ。」
・・・違うでしょう!!!
結局、ものすごく良いタイミングで往診(今度は普通の・・・)の依頼の電話が入り、静は不機嫌な顔で私をアパートまで送ってくれた。
「どうして、こう、誰も彼もが寄ってたかって俺の邪魔をするんだろうね。」
そんなことはないでしょう・・・、と笑いながらも、私は少し彼が気の毒になった。
週末に往診の依頼って予約でしか普通は入らないらしいので、よほど急患だったらしい。
でも、私にとっては助け舟だったんですけど。
「覚えといてね、天音ちゃん。」
「・・・え?」
走り去る車を見送って、私は思わず叫びそうになる。
わ・・・、私が悪いんじゃないからねっ
最後にちらりと私に視線を落とした彼の瞳がちょっと本気で怖かった。
だからって・・・、だからって・・・、もう、この際、届け出してしまおう、なんて、自棄を起こさないでくださいね、先生!
あまりに慌ただしくて、私は、そういえば静のご両親とマトモに話しらしい話しをしなかったことを忘れていた。
彼らは、普通なら真っ先に聞くであろうことを、何も聞かなかった。
肩書きや役職や、その人に付随する情報には興味を抱かない。そういえば、静も初めからそうだった。ただ、私を見つめて、私の魂そのものと会話するように、・・・そう!いきなりプロポーズしたのだ。
どちらかと言えば、私もそのタイプかも知れない。
知りたいのは、相手が何を好きで、どんなことに興味を抱いて、何を誇りとして生きるのか。
そこに尊敬や信頼が生まれる。
それ以外は、正直、どうでも良いことだ。
静のお母さんが、息子のどこを好きになったのか?と聞いた。
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