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Stories of fate


永遠の刹那

永遠の刹那 (静の家族) 26

 まだ、借金が残っている、ということを、実は私は静に言い出せていなかった。
 お金持ちらしい彼には大した金額ではないかも知れない。
 だけど、私は‘お金’が怖いのだ。

 中学・高校と付き合っていた一つ年上の優しい先輩がいた。彼はスポーツマンで二枚目で、ものすごくモテていたから、告白されたときにはびっくりした。

 休日には待ち合わせてデートを楽しんだし、登下校もいつも一緒だった。図書館で一緒に勉強したこともあったし、ある程度お互いの家族とも顔を合わせたりしていた。

 幸せだった。お互い、相手のことを理解していると思っていた。
 いや、そう思っていたのは、私だけだったのかも知れない。

 両親が商売を始めた、という頃はなんでもなかった。しかし、次第に借金が膨らみ、私もあまりお小遣いがもらえなくなってきた頃、デートのとき、私は何の気なしに言ったことがあった。

「しばらく、お小遣いもらえないから、私、あまりお金かかること出来ないわ。」

 それはつまり、外食したり、ショッピングしたり、ということを少し控えたいという意味で言ったに過ぎなかった。母は苦しい家計の中から私の学用品代は絶対に不自由しないようにと出してくれていたし、お小遣いも、お友達と出かけるとき私がかわいそうだから、と無理して捻出してくれていたことを知っていた。それで、私が自分から言ったのだ。当分、お小遣いはいらない、と。

「え?なんで?」

 彼はきょとんと私を見た。

「うん、ウチちょっと今経済的に苦しくて。」
「商売、うまくいってないって本当だったんだ・・・。」
「そうなの。いろいろお金を借りたりしてるみたいだけど。」
「え?・・・借金してるの?君ン家。」
「金額はよく分からないけどね。」
「・・・。」

 その途端、彼の目が突然厳しくなった。

「僕、お金は貸せないよ?」
「え?・・・要らないよ。そんなこと言ってないよ?」
「僕に頼るのは筋違いだからな。」
「・・・何、言ってるの?そんなこと、考えてもないよ。」

 私はびっくりしてしまった。
 そんな考えが出てくること自体、私には信じられないことだった。
 その日以来、彼とはぎくしゃくしてしまい、数日後、友達を通して別れを言い渡された。

 涙も出なかった。
 そんな風に思われるなんて。

 あまりのショックで、私は、それ以来、家に借金があることを誰にも、冗談でも言い出せなくなってしまった。お金ってそんなに大事なの?人と人との関わりに、それを抜きでは絶対済まないくらい、重要な要素なの?
怖かった。

 お金というものが、私はとても怖かったのだ。

 だから。
 静を、私はまだどこかで信じきれていないのだ。
 いつか、彼も・・・そう、ある日突然背を向けるのではないかと、私は怯えている。

  

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[コメディ・恋愛

~ Comment ~


>数日後、友達を通して別れを言い渡された。


ちょっと、これは可哀想だね。
別れは、直接・・って 思ったけれど。
どうなんだろう?
直接言われるよりも、自然消滅とか
このほうが楽なのかな?

でも、静の両親が想像と違って、いい人だったので
安心した。

そして、私も
>だけど、私は‘お金’が怖いのだ。
#2426[2012/09/20 00:55]  雫  URL  [Edit]

雫さまへ

雫さん、

> 別れは、直接・・って 思ったけれど。
> どうなんだろう?
> 直接言われるよりも、自然消滅とか
> このほうが楽なのかな?

↑↑↑これは、天音ちゃんの問題ではなくって、単に男が卑怯者だったということです。
そのときどんなに傷ついたって、直接、きちんと理由を言ってもらった方がこちらの言い分だって伝えられます。
友達を通して、なんて、もう話す余地ない、と言ってることですからね。
そういう卑怯者にはなりたくないものだ(ーー;

> そして、私も
> >だけど、私は‘お金’が怖いのだ。

↑↑↑お金は、怖い、というより、やっかいですね(ーー;

#2428[2012/09/21 06:47]  fate  URL 














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