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Stories of fate


永遠の刹那

永遠の刹那 (結婚記念日) 9

 夕方まで、事務所で書類の書き方やカルテの整理の仕方なんかを教わった。と言っても、静の診療の合い間に、なのでなかなか進まなかったが。

「お疲れさま~」

 と、定刻を過ぎて、静が白衣のままで事務所に顔を出し、ああ、疲れた、と椅子に腰を下ろす。私はふと彼の背後のカレンダーに目をやり、思わず呟く。

「ああ、もう4月も終わり。・・・週明けの月曜日は結婚記念日だ。」
「え?誰の?」

 すかさず静が反応する。

「両親のです。」
「・・・へえ。親の結婚記念日なんて覚えてるんだ、珍しいね。」
「はい、ウチは家族が少なかったので、それぞれの誕生日と、そういう記念日関係は、いつもみんなで祝ってたから。」

 ふうん、と彼は頷いた。じゃあ、週末はご両親と・・・?なんて聞かれなくて私はほっとする。彼も、何かを感じているんだろう。

「良いね、そういう家族。仲良しだったんだね。」
「・・・え?」

 だった、と彼は言った。

「だから、そういう家族を君も早く作れば・・・」
「あ、お疲れさまですっ、今日はもう帰って良いでしょうか?」

 静はにやにやと私を見つめ、私の感傷的な気分は一気に吹き飛ぶ。

「夕食、ごちそうしてあげるよ。」
「いえ、大丈夫です。いただいたお金もありますし。」
「でも、君、生活用品けっこう揃えなきゃならないだろ?茶碗とか箸とか、鍋とか包丁とか。」

 そうだった。そういう細かなものは何もなかった。そういえば、トイレットペーパーもあるだけ一個しかなかったし、まず、バスタオルとシャンプーも買わないと・・・。

「明日、買い物に付き合ってあげるから、今日は俺のとこに泊まったら?」
「いえっ・・・とんでもない!そんなお気遣いいただかなくても、大丈夫です、先生!」
「‘先生’としては大丈夫だけどさ、プライベートでは気になるじゃない?」

 くそっ!仕事中をアピールしたらそれを逆手に取られた・・・!

「大丈夫、襲わないから今日は俺のとこにおいで。夕食も作れないだろ?」
「いえ、本当に・・・」

 必死に断ろうとジタバタしていると、不意に彼は、ふうん、と独り言のように呟く。

「あの届け、出してきても良いんだけど。」
「・・・。」




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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[コメディ・恋愛

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