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Stories of fate


永遠の刹那

永遠の刹那 (結婚記念日) 7

「返してくださいっ」
「その要求はおかしいよ。これは、君のものじゃないんだから。」
「だ・・・っ、だって・・・それ・・・っ」
「だから、まだ提出しないから。」

 彼は泣き出しそうな私をくすくす眺めて、その用紙は丁寧に折りたたんで封筒にしまいこむ。

「提出日は、結婚記念日になるんだから、後で一緒に考えよう?」

 微笑む彼を睨みつける。
 そういう問題じゃないっ!

「まずは、事務手続きをきちんとしないとね。仕事の内容自体はそれほど難しくないし、覚えることも多くはないよ。一番問題なのは、患者さんへの応対だね。」

 すっと表情を戻して、静は説明を始める。もう、さきほどの話題は終了、ということか。
 後で奪い返すにしても、今は確かに立場は雇用主と従業員だ。私は、必死に気持ちを切り替えて彼の話に耳を傾ける。

「一通りの説明は以上。何か質問は?」
「・・・いえ。まずはやってみないと・・・。」
「了解。」

 彼が書類を片付け始めたので、私は再度挑戦する。

「あの・・・、婚姻届は・・・」
「うん、そうだね。いつにする?」
「そっ・・・そうじゃなくてっ」

 私は机を叩いて立ち上がる。

「私はまだ結婚なんてするつもりはっ・・・」
「それは良かった。誰か良い人がいたらどうしよう?とそれが心配だったし。」

 ああ言えばこう言う・・・。

「お願いです、それはなかったことにしてください。」
「ダメ。」
「・・・だって、まだお互い・・・」

 いかん、これを言うとまた‘試す’話題が出てくる。

「天音ちゃん、あまり深刻に考えなくて良いよ。結婚なんて、見ての通り、分かっただろ?紙切れ一枚のことだよ?既婚者の方が社会的にもいろいろ楽だし、生活の保障もされるよ?俺がそんなに嫌い?」

 改めてそう言われると、それもそうかな、なんて気もしてくる。しかも、嫌いかどうかなんて論じられるほど、実際、静のことをよく知らない。

「・・・いいえ。」
「じゃ、何も問題ないじゃない?」

 ・・・。その理論はおかしい。ものすごくおかしいのに、頭がうまく働かなくて言い返せない。
 ひとまず、私は諦めた。
 もう、こいつには何を言っても無駄だ、という気がしてきた。

「とりあえず、・・・提出は待ってください。」

 力なくそうお願いするしか、残された道はなかった。




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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[コメディ・恋愛

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