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Stories of fate


Horizon(R-18)

Horizon (教会) 47

 大分、涼しくなった秋の日曜日の朝早く、まだ半分寝ぼけているところを早朝に戻った信長にたたき起こされる。

「・・・な、何?」

 寝巻きのまま寝ぼけている私を、とにかく早く起きて支度しろ、という。

「・・・し・・・たく?・・・って、何の?」
「顔洗って着替えして出かけられる格好しな。あ、そうそう。着替えし易い服を着て来い。」
「・・・はい。」

 よく分からないまま、私ははっきししない頭でなんとかシャワーを浴び、着替えをし、ダイニングでコーヒーを飲みながらイライラ待っている信長に迎えられる。

 何か出かける用があるなら、前もって言ってよね、と欠伸をしながら私は思う。

「寝ぼけ顔だなぁ。まあ、良いか。メイクでなんとかなるだろ。」
「はあ?」
「朝食はよろしいので?」

 幸甚さんが気を使ってくれるが、まだ私の身体は半分寝ているし、信長は、ちらりと私の顔を見て、その辺で何か与えるよ、と犬か猫のような扱いだ。

「鴻子、行くぞ。少ししっかり目を覚ませ。」

 ぐい、と頭を引き寄せて信長は言うが、はい?どこに行くんでしたっけ?と私は相変わらず何も分かっていなかった。

「・・・あのう・・・、どこに行くの?」

 車に乗り込んで隣の彼を見上げると、信長は腕時計を見つめたまま難しい顔をしている。

「どこくらいで着ける?」

 運転手に向かって聞いている。

「はい、1時間ほどで到着できるかと思いますが。」
「なるべく急いでくれ。」
「かしこまりました。」

 そして、ようやく私の方を向くと、何食わぬ顔で一言。

「教会。」
「・・・なんで?」
「教会って普通何のために行く?」

 にっと笑う彼に、しかし、私は宗教自体縁がないのでさっぱり分からない。

「懺悔?」
「・・・お前、知識が偏ってるよ。」
「じゃあ・・・礼拝?」
「まぁ、近いかな。」
「信長ってクリスチャンなの?だって、キリスト経を迫害してたじゃない。」
「バカたれ!歴史上の人物とごっちゃにするな。」

 なんとなく話がそれて、私はもうどうでも良くなって途中で聞くのをやめた。だいたい、こうやって朝から外に連れ出されることだけでも新鮮で、次第に頭がはっきりしてくるに従って、なんとなく楽しい気分になっていたのだ。出かける目的など、この際、どうでも良いや。外の世界が見られる滅多にない機会だ。

 その日はよく晴れた秋晴れの気持ちの良い日曜日だった。
 車はどんどん郊外へ向かい、次第に景色は良い感じになってくる。

 途中で、お腹が空いた、と訴えた私に信長はコンビニでサンドイッチとジュースを買ってくれる。それを食べながら車窓を眺めていると、本格的に高原という風景に囲まれてきた。

 白樺が目に鮮やかで、もうすぐ本格的な紅葉の季節がやってくるんだろうな、という木々の葉の微妙な色付きになんだか心が躍る。

 車は、平地の駐車場らしき場所に停まり、私と信長はそこで降りてなだらかに続く高原の頂上に見える教会まで歩くことになった。車はそのまま来た道を引き返して行く。

「うわぁ、すごく綺麗なところね。」

 なんだか感動して私は吐息をつく。

「教会までけっこうな道のりだぞ。」

 ちょっとウンザリしたように信長は言うが、私は歩くことはそれほど気にならなかった。そこへ続く細い小道は綺麗に整備されていたし、周りの草花が風に揺れるのも、振り返って見おろす下界の風景もとても綺麗だったからだ。

「空気がおいしいね。」
「お前は田舎者だなぁ。」

 それでも、はしゃぐ私を信長は目を細めて見つめた。日差しが眩しくて、あらら、帽子をかぶってくるべきだったか・・・?と思ったが、どうせ、教会はもう目の前だ。

 近づく白い壁の、古風な建物の玄関口に、いかにも神父様という風貌の穏やかそうなおじいさんが立っていた。

「お久しぶりです、桐生さん。」

 神父様は満面の笑みで彼に微笑み、私を見て、同じ笑顔をくれる。

「鴻子さん、ですね。」

 信長と握手を交わした神父様は私にもその大きなあったかい手を差し出した。

「・・・はい、はじめまして。」

 どぎまぎしてそっと握った皺だらけのその手は、予想通り、とても柔らかく温かかった。

「さ、では急いでお支度を。」

 へ?ここでも、何か支度が?

 奥の部屋に通されると、そこには更にかなり年配の女性が一人と、比較的若そうな・・・と言っても、40代くらい?の白衣を着た女性が一人待っている。

 信長は別室へ行ってしまい、私は何の説明もないまま服を脱がされ、顔をマッサージされ、髪を結い上げられ、何やら二人につきっきりでメイクを施され、そして、これ・・・って、どう見てもウェディングドレス・・・だよね?という衣装を着せられる。

 真っ白ではなくて、どこか光沢のある淡いクリーム色系で、そして、ごてごてしたレースがそんなにくっついていなくて、すっきりとしたシンプルなデザインのドレスだった。

 その間、ゆうに数時間。
 早朝・・・と言っても7時くらいだが、に出てきて、もう10時をまわっている。



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