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Stories of fate


紺碧の蒼

紺碧の蒼 (ソコへ至る) 6

 気がつくと、私は、真っ白いまるでウェディングドレスみたいな格好をしていた。そして、ふと横を向くと自分の姿が鏡のように見える。純白のドレスに身を包む花嫁さながらに。

 そこに鏡が?
 しかし、近づくとそれは遠ざかり、元の位置に戻るとまたはっきりと目に映った。奇妙な感触だ。自分の姿が見えるのに、そこには何もない。

 ふと、胸の辺りに小さな灰色の染みが見えた。

「え?」 

 と思って払っても、こすっても取れない。

「もったいない。せっかく綺麗に真っ白だったのに。」

 そう声に出して呟いてみる。ふと気付くと、私の背後に男の姿が見えた。
 ああ、まるで、新郎新婦のようだ、と私は茫然と思う。
 ちくり、と胸が痛むのに、その理由が分からない。

「行こうか。」

 背後で男の声が聞こえ、振り向くと彼が手を差し出している。私は何の躊躇いもなく彼の手を取った。どこかで しゃらん、と金属が擦れあうような音が響いた気がした。




 どこへ行くのか知らされないまま、私は彼の手を取って歩き始める。
 特に疑問は沸かなかった。ずっと二人で、ここでこうしていたような気すらした。
 激しく波立っていた筈の心はそのとき穏やかで、何も感じていないようだった。呼吸が楽だった。

 呼吸?
 まだ、息をしているのか?
 生と死の狭間とは、まだ‘生’に近いのかも知れない。




「ほら。」

 と足元を指差されて、私は下と思われる方向を覗き込んでみた。足元には丸い窓があって、蒼い闇の向こうに何かの映像が見えた。

 そこには、たくさんの人間が蠢いていた。
 そのとき何故か、私はそんな風に感じた。

 いや、単に人々がたくさんいるだけで、一人ひとりは日常生活を普通に営んで、普通に生きて、生活しているだけだ。路上を交通するたくさんの車の群れ。歩道を行き交う人々。鉄筋コンクリートのたくさんの建物の中に仕事をしているサラリーマンやOLがいて、賑やかな日常の一コマに過ぎない。

 だけど、私はそれらに目を背けたいほど強烈な嫌悪を感じた。
 そのとき、私はまだ‘死’への執着が強烈で、生者の世界がこの上なく苦しく辛いものに感じていたのだろうか。

 表情を歪めて視線をそらせた私をじっと見つめていた彼は、ふっと薄い笑みを浮かべた。

「今日は止めるか?」
「・・・何を?」
「仕事だよ。」

 私は、ゆっくりと彼に視線を向ける。

「仕事?」
「そうだよ。ここにいるからには、君にも働いてもらう。」
「・・・何の仕事?」
「魂の回収だ。」

 言われた言葉をゆっくり反芻した。

「貴方は、死神だったの?」
「なんだ、それは?」
「・・・いや、じゃ・・・悪魔とか?」

 男は無表情で私を見つめている。

「ええと。・・・ごめんなさい。私もよく分からないんだけど、その、・・・だって、その人を殺すんでしょ?」
「馬鹿を言うな。身体を離れた魂を迎えに行くだけだ。」
「あ、そうなの。」

 と、言われても実はよく分からなかったが、それでも少し安心する。

「・・・行くわ。」

 男がにやりと笑った気がした。




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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

~ Comment ~


緊張の初コメントです!
冒頭から引き込まれて、ひといきにここまで読みました。
主人公目線の「彼」が魅力的です。
切ないお話ですね…。主人公にすっかり感情移入して、うるっとしてしまいました。
これから「仕事」も始まるようですし、どきどきです!

fateさんの作品はFC2小説の方でいくつか拝読していたのですが、こちらの作品はまだなので楽しみに読ませて頂きます~。
#230[2011/10/26 23:41]  乳酸菌  URL 

乳酸菌さまへ

おお! 乳酸菌さん、コメント超! 嬉しいです。
小説サイトのfate作品って、初期の頃のことですかね? いや、つまり、最初はfateは官能作家として向こうに乗り込んだので(^^;
そうだったら、ちょっと照れるな。(←バカ?(--;)

カテゴリ上半分が比較的マトモと思われます。
一応、初ページに<R指定>は警告しておりますが。
年齢とかじゃなくて、そういうモノに不快感を抱かれる方には、申し訳ないので。さすがに、fateも官能全般は無理です。比較的、女性作家さんのものは好きですが。

『紺碧の蒼』これは、重いんですよ~。
fateも描いてしばらく、ずっしりしました。突き詰め過ぎて、その次の作品が訳分かんなくなりましたもん。
入れ込んで描いた次の作って、何気に気が抜けるもんですな。

乳酸菌さんの作品って、日常を的確に捕えて、そこに光るものをさり気なくまぶして、なんというのか、誰でも覚えのある切ない可愛い瞬間を見事に閉じ込めているところが、、ものすご~く尊敬! です。
普段、そんな風に世界を観ているんだ…と思ったらなんか感動してしまいます。
触れるとfateも一緒に浄化される気がして心地良いです(^^)
しかし、あまりfateに毒気がなくなると、作品が生み出せなくなるだろうか(--;
いや、だけど、綺麗な世界にたまに触れないと『人間』であることすら維持できなくなりますので、必要です!!!(なんで、ここで涙目で力説???)

ありがとうございました。




#234[2011/10/27 07:57]  fate  URL 

おおっ、どうなっちゃうんでしょう。

謎めいた男。死神なのか悪魔なのか、それとも「もっと恐ろしい何か」なのか。どきどきです!
#289[2011/10/31 18:59]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

ポール・ブリッツさまへ

ポール・ブリッツさん、ドキドキのコメントありがとうございます。
いや、これはホラーではないつもりなので、ほとんど何も起こらず淡々と進みます。
ちょっと「あれ…???」かも(^^;

#295[2011/11/01 08:22]  fate  URL 

あー、この辺り、『空と海』に微妙に似てますね。

この死神(本人は否定も肯定もしなかったけど)さんがウチの死神さんとどう違うか楽しみです。
#491[2011/11/12 13:11]  ヒロハル  URL 

ヒロハルさまへ

ヒロハルさん、コメントありがとうございます。

> あー、この辺り、『空と海』に微妙に似てますね。

↑↑↑ですよね~っ
fateも思ったんです。でも、一歩進むと、まったく違う世界です。
この一瞬だけでした(^^;

#495[2011/11/12 16:23]  fate  URL 

おおぅ!

まさかこういう展開になるなんて、予想外でした!
ですが、こういう話、ゆない。はめちゃくちゃ好きです! 勝手にテンションを上げてしまいました!w
おもしろいです!!
#1160[2011/12/31 10:38]  ゆない。  URL 

Re: おおぅ!

ゆない。さん、

そ、そうですか?
そうおっしゃっていただけるとfateもテンションあがります。
これは、唄のイメージを追っただけなので、訳分からん内に、fateも気付いたらここにいた、って感じでした(^^;

今年も終わりますなぁ。
今年はゆない。さんとお知り合いになれて嬉しかったです、しかも、当初は完璧に女性だと思い込んでおり、びっくりでした!(どっちがだ!(-"-*)本当に失礼いたしました~(^^;
懲りずに来年もよろしくお願いいたします。
どうか良いお年をお迎えくださいまし~

#1162[2011/12/31 12:31]  fate  URL 

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#1379[2012/01/21 15:34]     

鍵コメさまへ

どちらにご返信して良いのか分からなかったので、ここに。
いつでも、好きな時にどうぞいらしてくださいませ~(^^)
fateはただただ嬉しいです!!!

こちらへ返信を、というご指定がございましたが、ご連絡いただきたく思います。

#1385[2012/01/22 08:03]  fate  URL 














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