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Stories of fate


紺碧の蒼

紺碧の蒼 (ソコへ至る) 5

「おい、いい加減、目を覚ませ。」

 呼ばれて、私は目を開けた。目の前に男の顔があった。額にかかる長めの黒髪、なのに、銀色の鬣のようなものがすうっと頭を前後に貫いている。そして、目元はまるで死人のように黒ずみ、肌は男とは思えないような白さだった。

 パンクのミュージシャンか何か?
 思わず、そんな言葉が脳裏を過る。

「・・・誰?」

 叫んだ後のように、変に声がかすれていた。あれ?なんで?
 男は、私の質問に怪訝そうな表情を浮かべた。

「自分で呼んでおいてご挨拶だな。」
「・・・呼んだ?私が?」

 男はすうっと立ち上がった。立ち上がった姿を見て、彼が屈み込んでいたのだと知った。彼は不思議な格好をしていた。白いシャツに真っ黒・・・いや、光沢のある濃いグレーだろうか?の燕尾服のようなものをきっちり着込み、胸に半透明のスカーフのようなものを巻いている。そして白い手袋を両手にはめ、手には聖書のような小さいけどハードカバーの厚い本を持っていた。

 その白と黒のコントラストが妙な明るさを醸し出し、神々しいまでの光を作り出していた。

 彼の表情はどこか苦痛と苦悩に満ちているのに、その瞳だけが奇妙に穏やかで、そのアンバランスさに私は違和感を抱く。

 私はゆっくりと視線を周囲に走らせ、自分のいる場所を確かめようとした。しかし、そうやって首を動かして辺りを見回しても、そこには何も、なかった。

 はい???
 何もないって、何?

 慌てて身体を起こし、私は自分の身体を確認する。いや、普通に手足はある。手で、顔も触れる。だけど、私が横たわっていた筈の何かは、何もなかった。そこは蒼い闇がぼんやりと漂い続けているだけだ。

「こ・・・こここ、ここはどこ?」
「キョウカイだよ。」
「き・・・教会?キリスト教の?」

 じゃ、こいつは悪魔?・・・いや、一応天使の方?・・・あれ?でも、羽がない。

「違うよ。」
「・・・じゃ、協会?組合か何かの?」
「違うよ。」
「き・・・きょう・・・キョウカイって、・・・何?」
「生と死の境界だ。」

 男は淡々と答える。その口調、声色が誰かに似ている。誰か・・・誰だった?

「私、死んだの?」
「まだ、境目ということだね。」
「じゃ、どうすれば死ねるの?」
「死にたいの?」
「・・・うん。」
「じゃ、何故ここに来た?」
「それは、・・・私も知りたい。」
「じゃあ、何故、死にたい?」

 聞かれて、私は答えられなかった。

「・・・なんでだっけ?」

 男は何も言わずじっと私を見つめた。

「思い出すまで、時間をあげるよ。」




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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

~ Comment ~


境界もの、好きです。どっちつかずの感じが。

どっちに行くのかな。時間をもらってこれから色々見ることになるのでしょうか。

心模様を追っていきます^^

#2121[2012/05/18 19:17]  けい  URL 

けいさまへ

けいさん、

おおう、こちらに。
これは、唄の世界にどっぷりハマッて描いたものなので、そんな色合いです。
原曲は、不遇の死を遂げた男女が軸になった、悲恋モノみたいな感じです。
幼い頃に出会って恋をした少年と少女が、少年は、聡明で賢い母(この母が実は何者なのか、未だに分からない・・・)を魔女として火刑にされ、本人は井戸に突き落とされて殺される。そのとき、彼は少女から「私の代わりに・・・」ともらった人形を抱いていた。
その人形が、母の恨みを宿して少年を‘復讐’に駆り立てる。
少女は、彼への愛を貫き、家の決めた結婚を拒否し、磔にされる。
だけど、復讐を誘われた彼女は、「貴方が会いに来てくれただけで充分」だと、幸せだったあの頃を思い出して! と彼に訴える。
そんな物語です。

さて、そんな美しいハナシがfateにかかるとどうなってしまうのかっ!!
はははは(^^;
#2122[2012/05/19 07:35]  fate  URL 














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