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Stories of fate


紺碧の蒼

紺碧の蒼 (プロローグ) 4

 タクシーを飛ばし、私は故郷の海を目指した。

 彼と暮らした都会の風景を見ていることに耐えられず、そこここに彷徨う思い出の亡霊に耐えられず、私は眼をそらし、耳をふさいだまま楽しかった一瞬の夢の跡を振り払う。

 次第に田舎の景色になり、山を越えると、懐かしくも狂おしい海が見えてきた。
 結局、私は海から逃げられなかった。‘死’への憧憬から逃れることは出来なかった。

 高台の細い道路脇に停めてもらい、私は運転手に一万円札数枚を置いて、車を降りた。
 そのまま身一つでふらふらと歩き出す。

「お客さん、おつり・・・っ、あ、お客さん、バッグ忘れてますよ!」

 老年の運転手の声を背後に聞き、私は夢遊病者のように歩き続けた。運転手が車を降りて追いかけてくる。私は歩みを止めない。

 不意に、後ろから来た車にクラクションを鳴らされ、運転手は慌てて車へ戻った。
 そして、彼が振り返ったときには、私の姿は彼の視界から消えていたのだ。




 立ち入り禁止の看板を超えて、私は歩き続け、足元の石ころが崩れて転がるさまをぼんやり眺めて、もう足元に大地がないことを知る。

 躊躇いなんて一切なかった。
 そのまま勢いを付けて、私は崖を蹴った。
 刹那。
 闇が私を包んだ。




 そして、世界は消えた。





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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

~ Comment ~


おとなしく全年齢向けから読むことにしました。またよろしくお願いします(^^)
#276[2011/10/30 13:34]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

ポール・ブリッツさまへ

ポール・ブリッツさん、こちらこそよろしくお願いします。
ただ、これはけっこうstoryが重いです…。

#279[2011/10/30 15:31]  fate  URL 

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#544[2011/11/16 11:55]     

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#570[2011/11/18 09:30]     

うーん…やっぱり…ストーリーに震災のことが色濃く影響しているのかなあ…と思いました。
読むのがすごく辛くて苦しいですが、頑張って読みますね。
#1220[2012/01/04 19:01]  有村司  URL 

有村司さまへ

有村司さん、

いえいえいえ(^^;
震災はあんまり関係ないんです、実は。
あれは、あまりに大きすぎて、まだfateの中では消化出来ておりませんので、もし使うとしても数年先です。これは、一般論です。
ただ、他サイトでやはり同じご指摘をいただいたので、加筆したときに少しその色を追加はしてみました。
だけど、当初は正直、亡くした理由は何でも良かった。ただ、一度に家族を失ったという説明に‘海’を使わせていただいた、だけですかね。
しかも、もう出てきません(^^;

これは、ファンタジー色、強いです~、珍しく。
まぁ、唄がモチーフだから。

#1223[2012/01/05 07:25]  fate  URL 














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