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Stories of fate


業火 ~hellfire~(R-18)

業火 1

 葵(あおい)が、幼い頃に生き別れた双子の弟、基(もとい)に再会したのは、もうすぐ高校を卒業するという冬の初めのことだった。

 ごく幼い頃に両親が離婚し、双子はそれぞれの親に引き取られ、葵は弟がいることすら知らずに今まできた。どちらの両親も再婚して、葵には妹が出来ていたが、父親の方はそれ以降子どもを作らなかったらしい。

 今頃になって何故、双子が再会することになったのか。

 基の親が、子どもを置いて海外へ転勤となり、1年で戻ってくるという。高校は日本で卒業したいという息子の強い希望のため、彼の両親は、かつて別れた双子の片割れの家に預けることを決めたのだ。

 葵の母親にとっては自分の実の息子である。そして、再婚相手の父親も、特に異論は唱えなかった。




「やあ、はじめまして、かな。姉さん。」

 双子・・・とはいえ、男女の双子は普通の姉弟と同じだ。顔立ちも性格もあまり似ていないようだった。基は剣道と空手を部活動としてこなし、筋肉質で背が高く、見た目はすらりとしている。顔は、父親似で面長だ。そして、葵はふとその瞳に宿る光に恐怖を抱いた。同じ血を分けた弟なのに、おっとりした葵とは対照的に、彼の空気はぴりぴりと研ぎ澄まされていて、どこかぞっとするような光をまとっているように感じられた。

 葵は母親に体格も似て、身長は低い方だ。身体の線が細く華奢で、顔の輪郭は柔らかく丸い。髪の毛も真っ黒で艶やかな基とは対照的に少し茶色がかっていてふわふわしている。そして、それは2歳下の妹の由美も同じだ。しかし、彼女は少し父親の血が濃いのか、ほんの少し葵よりも大人っぽく、背も幾分高い。

「・・・あ、葵です。」

 葵が慌てて差し出された手をそっと握り返すと、意外にも基の指は細かった。

「はじめまして。」

 由美も半分だけ血のつながった兄に、屈託なく微笑む。

「1年限定の兄です。よろしく。」
「あら、一緒に住むのは1年でも、兄妹であるのは変わらないでしょ?」

 由美はふふふ、と楽しそうに笑う。人見知りをしない彼女はすぐに基と打ち解けてしまったようだ。基と由美が他愛ない話を始めたそばで、葵は弟を包む冷たい空気にどこか怯えたまま固まっていた。
 



 その日、一人で荷物を持って電車を乗り継いでやってきた初めて会う弟は、道々近所の人から注目を集めていた。それほど都会ではない周囲なので、近所づきあいがある程度あって、生き別れた双子が再会するという噂はいつの間にか広まっていたようだ。

 そして、やってきた男の子の、葵とはまったく違った容姿に、その爽やかでクールな空気に葵の同級生たちや妹の幼なじみが色めき立っていたのだ。

 どこか華やかな空気を持っている妹と違って、葵はどちらかというと地味で目立たない女の子だ。男女交際の経験もないし、友人も似たようなタイプなので色恋沙汰にそれほど関心を抱かずに今まで来ていた。

 弟が一緒に暮らすことになったと聞いても、それに対して、驚きはしてもそれ以上の何も思わなかった。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[恋愛:エロス:官能小説

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