ふと目を覚ましたとき、信長は机の上のパソコンに向かって何かをしていた。
仕事かな?
と私は思う。休みの日でも電話は容赦なくかかってくるようだし。
窓を背にしてこちらを向いている信長は、ちらりと私に視線を走らせた。
目が合って、何故か、しまった、と私は思う。
目を覚ましていたのがバレちゃった、と。
「そんな顔しなくたって、もう襲わないよ。」
パソコンに視線を戻して、信長は言う。
「勉強と運動のメニューを作ったから、日課としてやっとけ。」
「・・・べ・・・勉強???」
私は茫然として、頭を持ち上げた。
「な・・・ななな、なんで?」
それでなくとも、結局あれ以来、本を一冊読んで週末までにレポート、という作業は固定化してしまっている。それだけでもういっぱいいっぱいなのに・・・。
「なんで、だと?聞きたいのか?」
信長が意味ありげに笑うので、私は思わず首を振った。
「・・・いえ。聞きたくないです。」
信長は、脇の台の上にあるプリンターにデータを送信してプリントアウトを始め、机から離れた。そして、印刷された紙を数枚手に持って、ベッドへ向かってくる。
私は、その紙に書かれていることを想像してげんなりしながら、近づいてくる彼を見つめていた。
「詳細はあとでじっくり見ておくように。とりあえず、軽いメニューにしておいたから、出来ないってことはないはずだよね?」
妙に楽しそうな信長に、私は心の中で毒づく。
こいつって絶対、ガキ大将的存在で、弱いものイジメしてたタイプだ・・・。
いや、弱いものどころか、先生とか先輩とか、目上を目上とも思わないふてぶてしいやつで、周り中敵だったに違いない。
私の表情が思い切り不満そうだったのだろう。
信長は、ふうん、とイヤな笑みを浮かべて、思わず身の危険を感じて毛布に潜り込もうとした私から、その毛布をばっと剥ぎ取る。
「ひゃあぁぁっ」
そして、身を翻そうとした私をさっさと組み伏せて、両腕を頭の上に固定する。
「も・・・っ、もう、何もしないって言ったよっ?」
私が悲鳴のように叫んでいるのに、やつのもう片方の手は私の胸をぐい、と掴んで押し潰す。
「やあぁあぁぁっ」
「何もしないとは言ってないよ。」
「だ・・・だってっ・・・」
尚も抗議しようとする私の口をふさいで、信長の手は私の胸をむちゃくちゃにもみしだく。
「んんっ・・・」
まだ身体がほとんどいうことをきかなくて、しかも両腕を押さえつけられているので、私は足だけバタつかせて抵抗を試みる。
「お前、まだ元気じゃん?」
にやりとする信長に、私は本気で青ざめた。
元気じゃない、元気じゃないっ
本当にもう身体がだるくて、きつくて、これ以上何かされたら、もう無理っ
涙目になる私を見おろして、やつは不意にふっと笑う。
「まあ、今日は壊さない程度に、これで許しておくよ。」
そう言って私の頭を撫でて、やつは剥ぎ取った毛布をふわりと私に掛ける。
「起き上がれるようになるまで、休んでな。」
・・・ひどいやつなのか、優しいのか、よく分からない。分からないが、とりあえず、今は機嫌を損ねるようなことはしてはいけない。
私は、またパソコンに戻っていった彼の後ろ姿を見送って、目を閉じた。
浅い眠りの中で夢をみた。
戦場を馬を駆って走る夢を。
う~ん、信長の名前に毒されてるなぁ、と夢の中で私は思う。だいたい、信長は戦で死んだんじゃないじゃない。信頼する家臣に裏切られて志半ばで炎に消えたのだ。
そう。
裏切りだ。
その記憶が彼を狂わせるのだろうか?
やつは、本当に信長公の生まれ変わりなんだろうか?
では、私は・・・?
濃姫ではあり得ない。彼女は、嫁いだ以後の記録が何一つない。信長と共に生きた時間が本当にあったのかすら分からない。
私は、信長のそばで生きた名もない女だったのかな?
そんなことを思う夢は優しく甘く、切ない。
目が覚めたら、きっと、もう何もかも忘れているに違いないけど・・・。
仕事かな?
と私は思う。休みの日でも電話は容赦なくかかってくるようだし。
窓を背にしてこちらを向いている信長は、ちらりと私に視線を走らせた。
目が合って、何故か、しまった、と私は思う。
目を覚ましていたのがバレちゃった、と。
「そんな顔しなくたって、もう襲わないよ。」
パソコンに視線を戻して、信長は言う。
「勉強と運動のメニューを作ったから、日課としてやっとけ。」
「・・・べ・・・勉強???」
私は茫然として、頭を持ち上げた。
「な・・・ななな、なんで?」
それでなくとも、結局あれ以来、本を一冊読んで週末までにレポート、という作業は固定化してしまっている。それだけでもういっぱいいっぱいなのに・・・。
「なんで、だと?聞きたいのか?」
信長が意味ありげに笑うので、私は思わず首を振った。
「・・・いえ。聞きたくないです。」
信長は、脇の台の上にあるプリンターにデータを送信してプリントアウトを始め、机から離れた。そして、印刷された紙を数枚手に持って、ベッドへ向かってくる。
私は、その紙に書かれていることを想像してげんなりしながら、近づいてくる彼を見つめていた。
「詳細はあとでじっくり見ておくように。とりあえず、軽いメニューにしておいたから、出来ないってことはないはずだよね?」
妙に楽しそうな信長に、私は心の中で毒づく。
こいつって絶対、ガキ大将的存在で、弱いものイジメしてたタイプだ・・・。
いや、弱いものどころか、先生とか先輩とか、目上を目上とも思わないふてぶてしいやつで、周り中敵だったに違いない。
私の表情が思い切り不満そうだったのだろう。
信長は、ふうん、とイヤな笑みを浮かべて、思わず身の危険を感じて毛布に潜り込もうとした私から、その毛布をばっと剥ぎ取る。
「ひゃあぁぁっ」
そして、身を翻そうとした私をさっさと組み伏せて、両腕を頭の上に固定する。
「も・・・っ、もう、何もしないって言ったよっ?」
私が悲鳴のように叫んでいるのに、やつのもう片方の手は私の胸をぐい、と掴んで押し潰す。
「やあぁあぁぁっ」
「何もしないとは言ってないよ。」
「だ・・・だってっ・・・」
尚も抗議しようとする私の口をふさいで、信長の手は私の胸をむちゃくちゃにもみしだく。
「んんっ・・・」
まだ身体がほとんどいうことをきかなくて、しかも両腕を押さえつけられているので、私は足だけバタつかせて抵抗を試みる。
「お前、まだ元気じゃん?」
にやりとする信長に、私は本気で青ざめた。
元気じゃない、元気じゃないっ
本当にもう身体がだるくて、きつくて、これ以上何かされたら、もう無理っ
涙目になる私を見おろして、やつは不意にふっと笑う。
「まあ、今日は壊さない程度に、これで許しておくよ。」
そう言って私の頭を撫でて、やつは剥ぎ取った毛布をふわりと私に掛ける。
「起き上がれるようになるまで、休んでな。」
・・・ひどいやつなのか、優しいのか、よく分からない。分からないが、とりあえず、今は機嫌を損ねるようなことはしてはいけない。
私は、またパソコンに戻っていった彼の後ろ姿を見送って、目を閉じた。
浅い眠りの中で夢をみた。
戦場を馬を駆って走る夢を。
う~ん、信長の名前に毒されてるなぁ、と夢の中で私は思う。だいたい、信長は戦で死んだんじゃないじゃない。信頼する家臣に裏切られて志半ばで炎に消えたのだ。
そう。
裏切りだ。
その記憶が彼を狂わせるのだろうか?
やつは、本当に信長公の生まれ変わりなんだろうか?
では、私は・・・?
濃姫ではあり得ない。彼女は、嫁いだ以後の記録が何一つない。信長と共に生きた時間が本当にあったのかすら分からない。
私は、信長のそばで生きた名もない女だったのかな?
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目が覚めたら、きっと、もう何もかも忘れているに違いないけど・・・。
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