例えば、ちょっと混んでいる店の奥に潜むとか・・・。
とにかく、もう、30分は経過しているだろう。
早くどこかに身を潜めなければ!
私は比較的大きな店を探した。駐車場があって、大勢の買い物客が出入りするような・・・そうだ、スーパーが良い。普段着のラフな格好でも目立たない場所!
と言っても、この地元の町に出たことのない私は、それからの時間、更に彷徨った。
やっと見つけた、まぁ、そこそこ大きいのでは?というスーパーに駆け込んだが、それほど客がごった返している、という訳でもない。
これじゃあ、見つかる!
私はトイレに駆け込み、個室に入り込んで鍵を掛けてはあはあと荒い息をする。心臓の鼓動がやけに大きく響くような気がして、私は息を潜めた。
時間は、まったく分からない。
時計を確認する余裕などなかった。
・・・そういう一連の動きを、実は、信長はすでにずっと追っていたのだということを、私はそのときはまだ知らなかった。
それから、どのくらいの時間が経過したのか分からない。
時々、誰かが入ってきて、私はその度にぎくりとする。
しかし、皆、空いている個室でさっさと用を足し、或いは化粧を直している気配の後、ずっと閉っている一番奥の個室の存在など気にせず去っていく。
いつまでここにいれば良いんだろう?なんてことは思い浮かばない。時間感覚がないもので、私はただひたすらそこにじっとしていた。
すると、しばらくして、明らかに一般の客ではない足音が不意に響く。
何故、そう感じたのか?
一瞬の迷いもなく、その人物は真っ直ぐに私のいる個室に向かってきたのだ。
そして、扉の前までくると、とんとん、と扉を叩いた。
「お客様、大丈夫ですか?」
言葉遣いからして、店員らしい。男の声で、私は思わず息を呑む。
無視しようかと思ったが、ここで黙っていたら大事になりそうな気がして、私は仕方なく、大丈夫です、と答える。
「あの、ご気分が悪いようでしたら、医務室がございますので、そちらへご案内いたしますが?」
「・・・あの、いいえ。大丈夫です。」
「ですが、こちらに入られて、大分時間が経過してらっしゃるようですが。」
明らかに、当惑した声だ。
どうして知っているんだろう?トイレで用を足した客の誰かが、店にわざわざ報告したんだろうか?
「お客様、扉を開けてもよろしいでしょうか?」
えっ?外から開けられるの?
私はびっくりして、いいえ、今、開けます!と言ってしまった。
恐る恐る扉を開けて、隙間から覗くと、エプロンをつけてスーパーの制服を着た中年男性が立っていた。
「ご気分は・・・大丈夫ですか?」
店長とか、そういう役職の人なのだろうか。言葉遣いが丁寧だった。
「あ、はい。すみません、大丈夫です。」
仕方なく彼について外へ出た途端、不意に横から伸びてきた手に捕らわれて、私は悲鳴をあげそうになった。
「お手数をお掛けいたしました。」
信長の声だった。
「いいえ。奥で休まれなくて大丈夫ですか?」
「車で来ておりますので、このまま連れて帰ります。」
私を背後からがっしりと捕まえて彼は柔らかい口調でそう言い、店長さんらしき人はにっこりと会釈して去っていった。
「まあ、お前にしては考えた方だったね。」
信長は不敵な笑みを浮かべると、私の手を引いて歩き始める。
私はまだ驚いていて、マトモに言葉が浮かばない。
「・・・ど・・・どうして、分かったの?」
「連れがトイレに行ったきり、戻って来ないから様子を見てきて欲しいって頼んだんだ。」
質問の答えになっていない・・・。
が、あの店員さんの行動の理由は説明がついた。
「今・・・何時?」
私が震える声で聞くと、彼は振り返って冷たく笑った。
「あとで教えてやるよ。」
とにかく、もう、30分は経過しているだろう。
早くどこかに身を潜めなければ!
私は比較的大きな店を探した。駐車場があって、大勢の買い物客が出入りするような・・・そうだ、スーパーが良い。普段着のラフな格好でも目立たない場所!
と言っても、この地元の町に出たことのない私は、それからの時間、更に彷徨った。
やっと見つけた、まぁ、そこそこ大きいのでは?というスーパーに駆け込んだが、それほど客がごった返している、という訳でもない。
これじゃあ、見つかる!
私はトイレに駆け込み、個室に入り込んで鍵を掛けてはあはあと荒い息をする。心臓の鼓動がやけに大きく響くような気がして、私は息を潜めた。
時間は、まったく分からない。
時計を確認する余裕などなかった。
・・・そういう一連の動きを、実は、信長はすでにずっと追っていたのだということを、私はそのときはまだ知らなかった。
それから、どのくらいの時間が経過したのか分からない。
時々、誰かが入ってきて、私はその度にぎくりとする。
しかし、皆、空いている個室でさっさと用を足し、或いは化粧を直している気配の後、ずっと閉っている一番奥の個室の存在など気にせず去っていく。
いつまでここにいれば良いんだろう?なんてことは思い浮かばない。時間感覚がないもので、私はただひたすらそこにじっとしていた。
すると、しばらくして、明らかに一般の客ではない足音が不意に響く。
何故、そう感じたのか?
一瞬の迷いもなく、その人物は真っ直ぐに私のいる個室に向かってきたのだ。
そして、扉の前までくると、とんとん、と扉を叩いた。
「お客様、大丈夫ですか?」
言葉遣いからして、店員らしい。男の声で、私は思わず息を呑む。
無視しようかと思ったが、ここで黙っていたら大事になりそうな気がして、私は仕方なく、大丈夫です、と答える。
「あの、ご気分が悪いようでしたら、医務室がございますので、そちらへご案内いたしますが?」
「・・・あの、いいえ。大丈夫です。」
「ですが、こちらに入られて、大分時間が経過してらっしゃるようですが。」
明らかに、当惑した声だ。
どうして知っているんだろう?トイレで用を足した客の誰かが、店にわざわざ報告したんだろうか?
「お客様、扉を開けてもよろしいでしょうか?」
えっ?外から開けられるの?
私はびっくりして、いいえ、今、開けます!と言ってしまった。
恐る恐る扉を開けて、隙間から覗くと、エプロンをつけてスーパーの制服を着た中年男性が立っていた。
「ご気分は・・・大丈夫ですか?」
店長とか、そういう役職の人なのだろうか。言葉遣いが丁寧だった。
「あ、はい。すみません、大丈夫です。」
仕方なく彼について外へ出た途端、不意に横から伸びてきた手に捕らわれて、私は悲鳴をあげそうになった。
「お手数をお掛けいたしました。」
信長の声だった。
「いいえ。奥で休まれなくて大丈夫ですか?」
「車で来ておりますので、このまま連れて帰ります。」
私を背後からがっしりと捕まえて彼は柔らかい口調でそう言い、店長さんらしき人はにっこりと会釈して去っていった。
「まあ、お前にしては考えた方だったね。」
信長は不敵な笑みを浮かべると、私の手を引いて歩き始める。
私はまだ驚いていて、マトモに言葉が浮かばない。
「・・・ど・・・どうして、分かったの?」
「連れがトイレに行ったきり、戻って来ないから様子を見てきて欲しいって頼んだんだ。」
質問の答えになっていない・・・。
が、あの店員さんの行動の理由は説明がついた。
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「あとで教えてやるよ。」
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