FC2ブログ

Stories of fate


Horizon(R-18)

Horizon (コロシの依頼) 29

「自由にして欲しいって?」
「・・・それは、無理・・・でしょ。」

 私は言った。

「よく分かってるね。」

 信長は目を細める。
 それに、私自身、それを望んでいるのか・・・実はよく分からない。

「じゃあ、他にどうして欲しい?」
「殺してちょうだい。」

 周りの空気が一瞬、固まった気がした。そばには幸甚さんがいたし、他にも何人かの家政婦さんたちが周りに待機しているのだ。だけど、私は構わず続けた。

「信長の手で、殺してちょうだい。」

 それは割に合わないなぁ、と彼はにやりとする。

「要らなくなった女を棄てるのに、犯罪の汚名を着るなんてね。」
「だって、いるでしょ?死亡診断書を書いてくれる知り合いの医者の一人や二人。」
「まぁね。」
「じゃ、お願いよ。」

 私は必死に懇願する。
 だけど、彼の冷ややかな目は変わらない。ただ淡々と食事を続けている。

「・・・じゃあ、良い。私はどんなことをしても、自分で死ぬから。」

 私が唇を噛み締めると、突然、信長はどん、とテーブルを叩く。
 びくっと身体を強張らせて私は彼の顔を見つめる。

「それは許さないよ、鴻子。」

 彼の目は怪しい光を帯びていた。

「お前は俺のものだ。例えお前自身でもお前の命に触れることは許さない。」

 言われた意味を理解するのに一瞬間が空いた。
 そして、理解する。
 そうか。信長にとっては、それも裏切りになるのだ、と。
 うなだれる私に、信長は怪しい光を湛えたままの瞳で微笑んだ。

「良いよ、鴻子。間違いなく俺がお前を殺してやろう。その代わり、俺の目の前から無断で消えるような真似は許さない。」

 私は、青ざめた顔のまま、彼を見つめた。

 死刑宣告を受けたようなものだったのに、私は何故か安堵した。心から良かった、と思ったのだ。あそこに戻されるくらいなら、他にどうなったって構わない。

「ありがとう・・・。」

 お礼を言う私を信長は笑った。

「バカか、お前。しかも、そんな話し、こんなところですることか?」
「だって・・・」

 私はちょっとため息混じりに言った。

「部屋にも戻ったら、マトモな話しなんて出来ないじゃない。」
「それもそうだな。お前はベッドの上であられもない姿をしてヒイヒイ喘いでいるだけだもんな。」

 ニヤニヤと笑う信長の言葉に私は思わず、今までの会話なんて吹っ飛んで、真っ赤になって立ち上がる。

「だっ・・・誰のせいだと思ってるのっ」

 椅子がガタンと倒れ、辺りはしーんとなった。
 私ははっとして、ものすごい冷ややかな白けた空間を作ってしまったかと、そっと周囲を見回した。

 だけど、私の椅子を直してくれている幸甚さんは、どうも笑いを噛み殺しているようだし、一番若い家政婦さんは、明らかに頬を染めて視線が泳いでいる。

 私は、あれ?と思った。
 もしかして、信長って、この家ではけっこう愛されてるのかな、と。

 なんで今そんなことを考えて、それにほっとしているのか分からない。
 なのに、私はそう感じた途端、なんだか身体の緊張がふうっと抜けた気がした。

「いつまでもぼうっと立ってないで、さっさと座って食べな。」

 信長が何事もなかったかのように言い、私もなんだか恥ずかしくなって、はい、と素直に座ってしまった。

「つまりお前は俺のそばにいたいってこと?」
「・・・なんで、そういう解釈になるの?」
「じゃあ、どう解釈したら良いのさ?」

 見つめられて、私は、ちょっと考えた。考えてはみたが、うまくいろんなことがまとまらず、そして、何故か突き詰めたくなくて、すぐに諦める。

「・・・分かんない。」

 ふうん、と相変わらず、信長はにやにやしたままだった。



関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 紺碧の蒼
もくじ  3kaku_s_L.png 真紅の闇
もくじ  3kaku_s_L.png 黄泉の肖像
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 2
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 3
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 4
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 外伝集
もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い月
もくじ  3kaku_s_L.png 永遠の刹那
もくじ  3kaku_s_L.png Sunset syndrome
もくじ  3kaku_s_L.png 陰影 2
もくじ  3kaku_s_L.png Horizon(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png Sacrifice(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png 閑話休題
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←Horizon (コロシの依頼) 28    →Horizon (コロシの依頼) 30
*Edit TB(0) | CO(2)
ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


こんにちはー
読みながらにまにましちゃいましたv
 
ああ、いいですね
こういうの
むっちゃ盛大な「愛の告白」の場で、
けどちゃんとまわりがいるっていうの

それは、受け入れられている、てことだから
 
fateさんの描く女の子たちのこういう素直さとか健全さ、傷ついても失われていないまっすぐさ、というのがとても好きです

今日はいい気分でここで終わりにします
また遊びにきますねーv
#2004[2012/04/11 14:37]  磯崎愛  URL 

磯崎愛さまへ

磯崎さん、

> こんにちはー
> 読みながらにまにましちゃいましたv

↑↑↑ここで、なんとなく「はははは(^^;」という気分になり、
 
> ああ、いいですね
> こういうの
> むっちゃ盛大な「愛の告白」の場で、
> けどちゃんとまわりがいるっていうの

↑↑↑これ、まったく別の場面を想像して、おお、そ、そうかな。
などとこっちもにまにましながら、‘コメントがあった記事を読む’をクリックして記事へ飛んだ瞬間、「ここか~~~っ」とっ叫びそうになりました(^^;

確かに、これ、fateの描く究極の愛の告白だよな~
いつか、ミズキさんにもそんなコメント残してきたわな~
と、なんとなく赤面しておりました。
ははははは。
 
> fateさんの描く女の子たちのこういう素直さとか健全さ、傷ついても失われていないまっすぐさ、というのがとても好きです

↑↑↑ありがとうございます(^^)
fateの描く女の子って、理想と妄想の産物だよな~、としみじみ思います。はい。

> 今日はいい気分でここで終わりにします
> また遊びにきますねーv

↑↑↑じ…実は、次回、いきなりまたぬれ場に突入しとりますので、お気をつけくださいまし~
#2006[2012/04/11 15:57]  fate  URL 














管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←Horizon (コロシの依頼) 28    →Horizon (コロシの依頼) 30