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Stories of fate


月の軌跡(R-18)

月の軌跡 (暁) 72

 二人が帰ったあと、澪は、片づけを手伝ってくれる柊に、ちょっと考えながら話しかける。

「哲也さんって、時々、とても深いことをおっしゃいますね。・・・ちょっとドキッとします。何か、こう・・・見透かされているみたいで。」

 柊は、そうだね、と頷く。皿を洗いながら、その手がちょっと止まった澪は、ふと呟くように続けた。

「・・・柊に、似てます。」
「何が?」

 澪が洗った皿をすすいで水切りに並べながら柊は彼女の横顔を見つめた。

「なんでしょう?・・・魂、でしょうか?」
「彼も苦労人らしいよ。自称、だけど。」
「・・・そういうこと・・・ではなくて・・・」

 澪は眉根に皺を寄せる。

「彼は、誰か大切な方を亡くしてらっしゃるんじゃないでしょうか・・・。」

 そう言って、澪は遠慮がちに柊の目を見つめた。

「うん・・・、俺も、それは感じた。」
「皆さん、悲しいことがあるんですね。」

 澪はひどく神妙な表情になった。

「それでも、あんな風に笑える瞬間があって、おいしい物を食べて幸せになってるんだから。君のやっていることはとても意味のあることだよ。」

 澪は、一瞬、泣きそうな顔をした。
 そして、一旦俯いて目を閉じた。

「・・・柊・・・、それを私にくれたのは、あなたです。」




 澪の、その表情を、柊は美しいと思った。

 そして。
 違うのだ、と思う。
 俺が与えているのではない。澪からかつて受け取ったものを、返しているだけだ、と。
 それは一生返し続けても、きっと終わらない。
 彼女はその後もずっと彼に与え続けているのだから・・・。

 柊は、澪が入院した病院へ行って話を聞いてこようと、決心する。
 そこで、どんな残酷な事実が告げられても、受け留めて共に生きていきたいと、彼は思った。

 せめて、共に、生きていける時間を。




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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

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