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Stories of fate


サードゥ ~修行者・遊行者~(R-18)

サードゥ 9

 その夜は、ボディソープだとかスポンジだとかを渡して自分で身体を洗うことを教え、頭だけは俺が洗ってやった。湯船に沈めてやると、みどりは俺が身体を洗う様子をじっと見ていた。一生懸命何かを学び取ろうとしている子どもの目で。

 歯を磨くこと、髪をドライヤーで乾かすことも、少しやらせてみた。
 みどりをバスタオルに包んで、着替えさせようとしているとき、不意に仕事の電話が入る。

 時々、予定していたページがなんらかの事情で埋まらなくなり、あと数時間で印刷に入るんです、のような状況で泣きつかれることがある。俺は、そういう「このテーマでこういう内容のものを、このくらいの字数で」と言われるものをぱっぱとその場で仕上げるのが得意だ。決して、好きではないのだが、それほど苦労なく出来るタイプらしい。

 まさに、その依頼の電話で、馴染みの編集者の泣きそうな声に、つい、引き受けてしまった。

「1時間後にメールに添付して送信します。」

 そう言って電話を切ったときには、みどりは待ち疲れてすでにベッドの上で寝息を立てていた。もちろん、着替えもせずにバスタオルに包まったまま。

 時間がなくて、俺もそのまま彼女に毛布を掛けただけでパソコンに向かう。

 依頼内容をじっくり考え、頭の中で構想を練る。今回のテーマに沿った手持ちの題材はそんなに多くはない。選択の余地はあまりない・・・。俺はその中から、雑誌の狙う年齢層を考え、その年代に受けそうな題材を選び、起承転結を一気に組み立て、おもむろに文章を立ち上げていく。

 頭の中にすでにある程度のstoryが出来上がっているので、文章におろす作業はそれほど苦もなく進み、途中で字数の余裕を何度か確認し、削れる部分は削り、それでも読む人の興味を引くようなエピソードをひとつは入れて、なんとか完成にこぎつける。

 再度読み直して、誤字・脱字等の確認をして、俺は送信をクリックする。
 10分ほどすると、『ありがとうございました!完璧です!』との間抜けな返信がある。
 ほっと一息ついて、俺はパソコンの電源を落とした。

 今夜は、月が綺麗だな、と窓から差し込む月明かりに、空を見上げてみる。そして、カーテンを閉め、振り返ってベッドの中のみどりを見つける。

 Tシャツを用意するのを忘れていた。

 そうだ、明日、この子を連れて買い物に行ってこようと思う。服も下着も、そして、パジャマも・・・それから、生活用具一式を買ってあげないと。

 壁際に寄せてあるベッドの、手前側に丸くなっている彼女の身体をそっと抱え上げて奥へ移す。タオルがはだけ、素肌が露わになった。丸い小さな胸のライン、そして、細い腰。闇にぼうっと浮かび上がる白い肌。

「みどりちゃん、抱いて、良いかい?」

 俺は眠っている彼女にそう聞いてみる。

 どうせ、起きていても返答は返ってこない。しかし、俺の声に、みどりはうっすらと目を開けた。やはり、彼女の瞳には月の光が宿っているような気がする。ぼんやりとした瞳が俺を見つめたような気がした。

 何か言いたげなその唇をそっとふさぐ。それでも、彼女は無反応だ。小さな唇を割って、舌を押し入れる。歯列をなぞり、彼女の舌を捕える。そのとき、初めて彼女の身体がぴくりと反応した。それでも、構わず舌を絡めていると、みどりは小さく声を漏らした。

 唇を離してみどりの顔を覗き込むと、特に表情は変わらず、目は眠そうに虚ろなままだった。

「・・・貞操の危機って知ってるかい?」

 その無防備さに、思わずそんな死語を口にして、俺は笑う。

「みどりちゃん、残念ながら、俺、いつまで我慢出来るか保証はしないよ。」




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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

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