信長が普段使っている会社の寮・・・にしては、随分立派じゃない?というマンションに泊まるのも、こうやって出かけた日はいつものことで、死ぬほど食べて苦しくて動くのも億劫なまま、私はその部屋に当然のように連れ込まれる。
ここは、信長の会社から車で十数分の普通のマンションだ。だから全室会社で寮として押えているわけではないらしい。他にも何人か単身赴任の社員などが使っているというが、どの部屋がそうで、どこが一般の人なのか私には分からない。
まあ、あまり関係ないけどさ。
ここは都心からけっこう離れているので、意外と静かで、夜はそれほど明るくない。
それを言ったら、信長の持ち家(?)の屋敷はもっとずっと田舎なのだが。
信長は、私といるとき、テレビを観るとか音楽を聴くとか、誰でもがするようなそういう普通のことは一切しない。
「シャワー浴びてこい。」
部屋に入るなり、彼はネクタイを解きながらそう命令口調で言う。ダイニングのテーブルに崩れ落ちた私を軽く一瞥して自分は冷蔵庫の中からアイスコーヒーを取り出してグラスに注ぐ。
「・・・今日は、無理・・・。」
「何が?」
私は本気でお腹がいっぱいで、動くに動けなかった。この状態で縛られたりお腹を圧迫されるようなことをされたら、間違いなく・・・。
「吐きそう・・・。」
「じゃ、吐いてこい。」
グラスを空けながら信長は平然と言い放つ。
「やだ。もったいない。」
「じゃあ、我慢しな。」
彼の目が微妙に怪しい光を帯びてくる。これ以上、引き伸ばすとあの瞳はすとんと一段冷えて私を見据える。ここでイヤだと言い続けるのは得策じゃない。
私はもう無言でそろそろとバスルームへ向かう。
それでも最後の抵抗で、ゆっくりとシャワーを浴びてきたら、ほんの少し楽になっていた。洗面所脇の扉を開けて、いつもの場所に私のパジャマを探したが、そこには見つからなかった。私が来ると分かっている日は、ベッドの上に用意してあることもあるので、そっちかもしれない。男のくせに、変なところがマメなやつだ。
仕方がないのでバスタオルを身体に巻いたままバスルームの扉を開けたら、不意に信長の長身の身体が視界をさえぎり、私はびっくりする。すでに上半身裸だったから、彼もシャワーを浴びようとしてこっちに向かっていただけなんだろうけど。
「おい。」
と彼はすれちがいざま、私の額の上の髪の毛を掴んで上を向かせ、何よ!と言いかけた私の口を強引にふさいだ。
「んんっ・・・んんんっ」
講義の声をあげて彼の腕を外そうとして両手を離した途端、バスタオルがすとんと床に落ちた。
「そこに、中国茶を煮出してあるから、少し飲んでおきな。消化剤だ。」
彼は、そう言い残してバスルームに消えていった。
はあ・・・とため息をついて私はバスタオルを拾い上げて、今さらもうどうでも良くなり、それをそのまま洗濯機に入れた。裸のままキッチンをうろうろすると、熱いやかんの口から湯気が出ていて、独特の薬草の香りがした。
「中国茶?」
いつか、中華料理の飲茶という料理を食べたことを思い出した。そのときに出されたお茶に少し似ているかもしれない。もちろん、信長に連れて行ってもらったときのことだが。
私は、その辺の棚からカップを取り出し、それに少し注いでみる。
香りがきついけど、それほど不快じゃない。
しかし、信長って変なやつ。
まあ、最中に私に吐かれちゃ確かにたまんないだろうけどさ。
ここは、信長の会社から車で十数分の普通のマンションだ。だから全室会社で寮として押えているわけではないらしい。他にも何人か単身赴任の社員などが使っているというが、どの部屋がそうで、どこが一般の人なのか私には分からない。
まあ、あまり関係ないけどさ。
ここは都心からけっこう離れているので、意外と静かで、夜はそれほど明るくない。
それを言ったら、信長の持ち家(?)の屋敷はもっとずっと田舎なのだが。
信長は、私といるとき、テレビを観るとか音楽を聴くとか、誰でもがするようなそういう普通のことは一切しない。
「シャワー浴びてこい。」
部屋に入るなり、彼はネクタイを解きながらそう命令口調で言う。ダイニングのテーブルに崩れ落ちた私を軽く一瞥して自分は冷蔵庫の中からアイスコーヒーを取り出してグラスに注ぐ。
「・・・今日は、無理・・・。」
「何が?」
私は本気でお腹がいっぱいで、動くに動けなかった。この状態で縛られたりお腹を圧迫されるようなことをされたら、間違いなく・・・。
「吐きそう・・・。」
「じゃ、吐いてこい。」
グラスを空けながら信長は平然と言い放つ。
「やだ。もったいない。」
「じゃあ、我慢しな。」
彼の目が微妙に怪しい光を帯びてくる。これ以上、引き伸ばすとあの瞳はすとんと一段冷えて私を見据える。ここでイヤだと言い続けるのは得策じゃない。
私はもう無言でそろそろとバスルームへ向かう。
それでも最後の抵抗で、ゆっくりとシャワーを浴びてきたら、ほんの少し楽になっていた。洗面所脇の扉を開けて、いつもの場所に私のパジャマを探したが、そこには見つからなかった。私が来ると分かっている日は、ベッドの上に用意してあることもあるので、そっちかもしれない。男のくせに、変なところがマメなやつだ。
仕方がないのでバスタオルを身体に巻いたままバスルームの扉を開けたら、不意に信長の長身の身体が視界をさえぎり、私はびっくりする。すでに上半身裸だったから、彼もシャワーを浴びようとしてこっちに向かっていただけなんだろうけど。
「おい。」
と彼はすれちがいざま、私の額の上の髪の毛を掴んで上を向かせ、何よ!と言いかけた私の口を強引にふさいだ。
「んんっ・・・んんんっ」
講義の声をあげて彼の腕を外そうとして両手を離した途端、バスタオルがすとんと床に落ちた。
「そこに、中国茶を煮出してあるから、少し飲んでおきな。消化剤だ。」
彼は、そう言い残してバスルームに消えていった。
はあ・・・とため息をついて私はバスタオルを拾い上げて、今さらもうどうでも良くなり、それをそのまま洗濯機に入れた。裸のままキッチンをうろうろすると、熱いやかんの口から湯気が出ていて、独特の薬草の香りがした。
「中国茶?」
いつか、中華料理の飲茶という料理を食べたことを思い出した。そのときに出されたお茶に少し似ているかもしれない。もちろん、信長に連れて行ってもらったときのことだが。
私は、その辺の棚からカップを取り出し、それに少し注いでみる。
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