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Stories of fate


Horizon(R-18)

Horizon (まどろみの悪夢) 6 

 身体が重くて動けず、私は目を開いたままぼんやりと、衣服を身につける信長の背中を見るともなしに見ていた。カーテンが揺れて、窓が開いているんだな、ということだけが分かった。

 逆光で見るせいか、彼の顔はいつもより幾分老けて見えた。と言っても、年寄りに見えたんではなくて、青年実業家・・・くらいの年齢に見えただけだ。本当は何歳なのか、そういえば聞いたことがない。

 彼の顔は、特に良い男ってわけでもないし、かといって十人並み?というとそれよりは良いかな、という程度だ。草食系か肉食系かと問われれば、間違いなく肉食系だ。頭が良くて口がうまくて、ほっそりとしているタイプではない。南国の太陽が似合いそうな、アクション系俳優のような風貌だ。

 顔の印象は私にとってはむしろどうでも良いのだ。あまり記憶に残らない。私は、彼の目が、すとん、と冷たくなる瞬間が怖いだけだ。

 歴史上の武将、織田信長は短気で豪傑だったらしいが、この信長は、意外にもそれほど短気ではない。少なくとも、私が多少暴言を吐こうが彼の言葉に抵抗を示そうが、それほど気にしない。

 彼が怒るのはたった一つ。
‘裏切り’だ。

 それが、私の側でなくて、彼サイドの判断だから、時々私は不意打ちを食らったように混乱する。
 今はだいたい何がセーフで何が危ないのか分かってきたが、初めの内は彼の一挙手一投足に怯えた。

 一番、怒らせたのが、まだ私がここから本気で逃げ出せると信じていた頃。文字通り彼の留守中に逃げようと画策したことだった。

 それが、あの恐怖の一日を生み出した。

 死んだ方がマシだと、今でも夢に出てきただけで吐き気と震えが止まらないあの暗い部屋。自殺を図る寸前に救い出された恐怖の監禁場所に置き去られ、悪夢の続きを目の当たりにしたとき、私はとにかく泣き叫んで信長に許しを乞うた。

 あの瞬間、もう、信長に逆らう気なんてなくなっていた。
 逃げ出すことなど不可能だと骨の髄まで思い知らされた。
 そして。
 逃げたところで、私には行くところなんてないのだ。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


こんにちは!
これを読ませてもらってます
 
ある意味では、じぶんに執着してくれるひとというのは「必要とされている」と感じられて捨てられた系のひとにはたまらなくいいのだろうなあと思いながら読み進めていたり

また来ますね!
 
#1819[2012/03/06 15:38]  磯崎愛  URL 

磯崎愛さまへ

磯崎愛さん、
 
> ある意味では、じぶんに執着してくれるひとというのは「必要とされている」と感じられて捨てられた系のひとにはたまらなくいいのだろうなあと思いながら読み進めていたり

↑↑↑おお、そうおっしゃられると、そういう気がします。
っていうか、これって、そういうハナシです。
これを描いていた頃って、一番、暗中模索の頃で、何を吐き出したいのかをfate自身が理解していないのに、物語だけがやたらと生まれた時期でした。
人物設定だけをして、冒頭を描き始めると、物語は勝手に流れ出すという。
今、そういうことはもうストップしかかっておりますから、fateはもう吐き出したい世界は吐き出し尽くしたにかも知れない…としみじみいたします(^^;

> また来ますね!

↑↑↑はい~(^^)お待ちしております~~
 
#1822[2012/03/07 07:55]  fate  URL 














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