「おはよう、哲也くん。昨日、帰り遅かった?」
翌朝、ゴミ出しで一緒になった哲也に、柊は声を掛ける。
「・・・あ、おはようございます。」
哲也の笑顔はどこか中途半端で、そして、イタタ・・・と、彼は顔をしかめる。
「・・・二日酔い?」
「はあ・・・、すみません。」
「珍しいね。」
柊は笑う。
「お寿司、注文してくれたのって・・・」
「ああ、僕とルカさんです。」
「二人で?そうか。澪ちゃんがすごく喜んでた。おいしかったよ、ありがとう。」
「いいえ、喜んでもらえて良かったです。」
哲也は会話の最中も、とにかく辛そうだった。
「大学・・・行けるの?その状態で。」
「行きます。」
哲也は、ふらふらしながらもそう言って、少し顔を歪めて笑ってみせる。そして、燃えるゴミの袋を集積所に重ねて、なんとかバランスを取っている感じの危なかしい足取りで部屋へ戻っていく。
「あれで、勉強なんて頭に入るのかな・・・?」
ルカに会ったらお礼を言おうと思って、彼女の部屋の前を通るとき少し中の様子をうかがってみたが、起きている気配はしなかった。帰ってないのだろうか?と柊は思う。
澪は来週から通学復帰の予定だったので、今日はまだ休ませている。そして、一人きりで部屋に置くのは心配だったので、柊は、仕事場から持ち込んだ作画デザインを家の方で進める予定でいた。
澪は、普通に起き出してきて、勉強したり、ふと思い立ってキッチンに立って何かをごそごそと作ってみたり、柊にお茶を入れて一緒に飲んだりと、のんびりと一日を過ごす。
昼近くになって、突然、隣で悲鳴が聞こえて、柊は何事かと飛び出してルカの部屋の扉を叩く。
「ルカさん?どうしたんですか?」
反応がなく、柊は、もう一度叫ぶ。
「ルカさんっ?大丈夫ですか?」
すると、扉が半分開いて、きまり悪そうにルカが顔を覗かせ、ごめんなさい、なんでもないの・・・と言う。
「・・・本当に大丈夫ですか?」
「あ・・・あの、違うの。ごめんなさい。」
よく見ると、彼女はまだ部屋着で、しかも、寝起きみたいに頭はぼさぼさで化粧もとれかけの状態だった。その異様さに、柊は病院へ連れて行こうかと一瞬考えた。
「時計を見て、びっくりして叫んだだけなの。・・・ちょっと昨日飲みすぎて、会社、無断欠勤しちゃったことに気付いて・・・。」
「・・・え???」
「本当にそれだけ。ごめんなさい。」
恥ずかしそうにルカはそう言って、扉を閉めてしまった。
そのときになって、柊は、やっと気付く。そうか、昨夜はこの二人は一緒に飲んだのだ、と。
部屋に戻ると、澪が心配そうに待っていた。
「どうしたの?なんだったの?」
「ああ・・・、いや。なんでもなかったよ。」
「本当に?」
柊はそのときになってやっとおかしくなってきて、笑いながら言った。
「昨日、哲也くんとルカさん、一緒に飲みに行ったらしいんだよね。そして、二人とも飲みすぎて、哲也くんはふらふらの状態で大学へ行ったし、ルカさんは寝坊して会社に遅れたらしいよ。」
澪の体調は、まだどこか不安定な状態は続いていたが、それでも、瞳が輝いている間は大丈夫だと、柊は自分に言い聞かせていた。
‘余命宣告’
その言葉は重かった。しかし、信じなければ、と彼は思う。
少なくとも澪が信じている間は。
翌朝、ゴミ出しで一緒になった哲也に、柊は声を掛ける。
「・・・あ、おはようございます。」
哲也の笑顔はどこか中途半端で、そして、イタタ・・・と、彼は顔をしかめる。
「・・・二日酔い?」
「はあ・・・、すみません。」
「珍しいね。」
柊は笑う。
「お寿司、注文してくれたのって・・・」
「ああ、僕とルカさんです。」
「二人で?そうか。澪ちゃんがすごく喜んでた。おいしかったよ、ありがとう。」
「いいえ、喜んでもらえて良かったです。」
哲也は会話の最中も、とにかく辛そうだった。
「大学・・・行けるの?その状態で。」
「行きます。」
哲也は、ふらふらしながらもそう言って、少し顔を歪めて笑ってみせる。そして、燃えるゴミの袋を集積所に重ねて、なんとかバランスを取っている感じの危なかしい足取りで部屋へ戻っていく。
「あれで、勉強なんて頭に入るのかな・・・?」
ルカに会ったらお礼を言おうと思って、彼女の部屋の前を通るとき少し中の様子をうかがってみたが、起きている気配はしなかった。帰ってないのだろうか?と柊は思う。
澪は来週から通学復帰の予定だったので、今日はまだ休ませている。そして、一人きりで部屋に置くのは心配だったので、柊は、仕事場から持ち込んだ作画デザインを家の方で進める予定でいた。
澪は、普通に起き出してきて、勉強したり、ふと思い立ってキッチンに立って何かをごそごそと作ってみたり、柊にお茶を入れて一緒に飲んだりと、のんびりと一日を過ごす。
昼近くになって、突然、隣で悲鳴が聞こえて、柊は何事かと飛び出してルカの部屋の扉を叩く。
「ルカさん?どうしたんですか?」
反応がなく、柊は、もう一度叫ぶ。
「ルカさんっ?大丈夫ですか?」
すると、扉が半分開いて、きまり悪そうにルカが顔を覗かせ、ごめんなさい、なんでもないの・・・と言う。
「・・・本当に大丈夫ですか?」
「あ・・・あの、違うの。ごめんなさい。」
よく見ると、彼女はまだ部屋着で、しかも、寝起きみたいに頭はぼさぼさで化粧もとれかけの状態だった。その異様さに、柊は病院へ連れて行こうかと一瞬考えた。
「時計を見て、びっくりして叫んだだけなの。・・・ちょっと昨日飲みすぎて、会社、無断欠勤しちゃったことに気付いて・・・。」
「・・・え???」
「本当にそれだけ。ごめんなさい。」
恥ずかしそうにルカはそう言って、扉を閉めてしまった。
そのときになって、柊は、やっと気付く。そうか、昨夜はこの二人は一緒に飲んだのだ、と。
部屋に戻ると、澪が心配そうに待っていた。
「どうしたの?なんだったの?」
「ああ・・・、いや。なんでもなかったよ。」
「本当に?」
柊はそのときになってやっとおかしくなってきて、笑いながら言った。
「昨日、哲也くんとルカさん、一緒に飲みに行ったらしいんだよね。そして、二人とも飲みすぎて、哲也くんはふらふらの状態で大学へ行ったし、ルカさんは寝坊して会社に遅れたらしいよ。」
澪の体調は、まだどこか不安定な状態は続いていたが、それでも、瞳が輝いている間は大丈夫だと、柊は自分に言い聞かせていた。
‘余命宣告’
その言葉は重かった。しかし、信じなければ、と彼は思う。
少なくとも澪が信じている間は。
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