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Stories of fate


ローズガーデン(R-18)

ローズガーデン (順応) 11

「どうだ?マリ。優奈は、少しは良い子になったかい?」

 数日後、不意に現れた真佐人は、ぼんやりと万理男の本棚を眺めていた優奈の腕を捕まえてにやりとする。

「たまには、俺が味見してみようか?」

 掴まれた腕から冷気が伝わるような、優しさのカケラもない真佐人の乱暴な扱いに、そして、その言葉の意味に、優奈は悲鳴をあげる。

「静かにしな、お前に拒否する権利なんてないんだよ。」

 どさりとその場に倒され、あっという間に組み伏せられる。絨毯のクリーム色が目に迫り、優奈は恐怖に青ざめた。

「い・・・っ、いやあぁぁっ」

 優奈は叫ぶ。無駄だと知りつつ、それでも机に向かって勉強している真里男に助けを求める。

「助けてっ・・・‘マリ’・・・っ、マ・・・」
「やめてよ、兄さん。」

 救いを求めて伸ばした手を、ぐい、と誰かが引いた。そして、それが万理男の手だったのだと気付いたときには、優奈は彼の腕に抱き寄せられていた。

 万理男の胸に必死にしがみつき、顔を伏せていた優奈はまったく気付かなかった。そのとき、彼女の頭の上で兄弟が目を見交わしていたことを。

 一瞬の間を置いて、真佐人は、ふうん、と笑う。

「何度か抱いたら情がうつったのかい?マリ。」
「そりゃ、3日飼えば・・・ってよく言うだろ?」

 くっと喉を鳴らして真佐人は笑う。

「そんな奴隷に本気になるなよ。それは、駒に過ぎない。いずれ、お家に帰すんだからな。」
「・・・分かってるよ。」
「まあ、せいぜいマリに飽きられないように、ご奉仕するんだな、優奈。マリにもう要らないって言われたら、お前は俺が仕方なく抱いてやらなきゃならないんだから。」

 その言葉に優奈の身体に戦慄が走る。万理男にしがみついていた手に力がこもり、じっとりと汗がにじんだ。
 やがて、真佐人の出て行った気配がして、万理男が小さく息をついたことが分かった。

「兄さんはもうしばらくは入ってこないから、そっちで音楽でも聴いてて。低くならCDかけても良いから。」

 万理男に言われ、優奈は、恐る恐るその手を離して彼を見上げた。いつもの、ただ静かな瞳。それでも、不快にぎらつく色も憎しみの色も見当たらない淡々とした光にほっとして、優奈は頷いた。
 まるで、洗脳のようなものだ。

 愛されているわけではないのに、対比に寄って、彼女の心はどんどん真里男に依存していく。恐怖と嫌悪の象徴が真佐人であれば、その対極に在るのが、万理男であるというだけの中で。




 万理男には、もともと恋愛感情というものが欠如しているかもしれない。
 だからと言って、おかしな性癖がある訳ではない。他人に対する興味が薄いのだ。

 今まで、真佐人が女の子と付き合うのを見ても、何の感慨も沸かなかったし、むしろ、それに関連するごたごたに、よくやるよなぁ・・・と感心するくらいだった。万理男も、頭は良いし、他人に興味がない分、むしろ他人には親切なので、わりとモテる方だったのだが、大抵の子は勉強を理由に断られていた。それでも、女性経験がないわけではない、ということは、付き合った形の子はいなくても、遊びの子には事欠いていないということだ。

 それでも、ここ1年くらいは本格的に受験に向けて、そういう付き合い自体を一切絶っていた。万理男の実力では、もう勉強しなくても良いくらいなのに、そういう弟を見て、真佐人は少なからず心配もしていたのだろう。弟を自分のわがままの犠牲にした、という負い目があるために。

 そして。
 真佐人には、いくつかの計算と計画があった。
 



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[恋愛:エロス:官能小説

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