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Stories of fate


月の軌跡(R-18)

月の軌跡 (季節は巡る) 11

 季節は巡り、秋の風が空気を冷やし、夏の気配の中に冬の息吹が立ち上ってきた。さすがに、柊は、澪に服と下着を買い与えた。避妊はしていなかったが、その月、澪の月のものは正常に訪れた。

 彼女の周期はもともと不安定で、遅れたり、一月飛ばしたりはしょっちゅうだったので、彼女もまだそれほど神経質に気にしてはいなかったようだ。

 生理用品を量販店で買い求め、柊は、これからどうしようか?と考える。

 その頃には、はっきりとした意識として、柊は時々彼女を愛しい想いで見つめてしまうことに気付いていた。それは、妹を想う気持ちとは違う。高慢だった澪の態度はすっかり影を潜め、もう何も取り繕う必要を見出せなくなった彼女にも、緩やかな変化が訪れていた。

 自分を飾る必要がない。鎧を身に付け、仮面をかぶる必要がない。良家のお嬢様として、完璧な日常を演出し、自身も役を演じる必要がなくなった。

 それを言葉で思った訳ではない。ただ、澪は意識を保てない時間を何度も経験するうちに、男の腕の中で眠りに堕ちる刹那の危うい無防備さを知る。恥も外聞もない、親にすら見せたことのない姿。自分ですら知らなかった性感帯。むしろ、何の予備知識もなく、素直に官能を身体に教え込まれ、赤ん坊が言葉を吸収していくように教師としての柊に従順に従った。

 生きていくために、それは無意識の本能だった。

 質の良い家庭に育った、澪の本来の素直な性質。すさんでもスレてもいないたおやかな心根。そして感度の良い若い身体。柊はそれを愛するようになった。

 しかし、警察の捜査の手が、いずれ自分にも伸びるかもしれないと柊は考えた。

 偶然に手に入れた獲物だっただけに、家族も警察も苦労しているだろうが、いずれは病院の過去にまで遡って、恨みを抱く人物として候補にあがるだろう。

 あの日、やる気のまったく出ないまま、以前、彼の仕事を評価してくれた依頼主が、別の顧客を紹介してくれて、彼はそこに注文を受けに出かけた帰りに、ふと見つけた喫茶店にちょっと立ち寄った。初めて訪れた喫茶店。居合わせた他の客も常連というわけでもない、たまたまそこに居合わせた人々だった。皆、自分の世界に忙しくて、他に誰がいたかなんてまったく気にしていなかった。

 マスターはおぼろげながら澪を覚えているかも知れない。しかし、取り立てて目立たなかった他の3人を覚えているかどうか怪しい。あの喫茶店の照明はひどく薄暗かった。

 それでも、いつか。
 いつか、澪は自分の世界から迎えが来るだろう。 

 澪が見つかってしまったら、彼女は家族に保護され、自分は逮捕されるだろう。
 澪をこの手から失って、果たして自分は‘復讐’を遂げたことに満足するだろうか。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


こう読んでいて思うのですが、fateさんのR-18ものに出てくる主役男性って、「何考えてるんだてめえ」クラスの「独善的で勝手なやつ」が多いですね(^^;)

いえ批判しているわけではなくて、そういう人間を描けるだけの幅の広さがうらやましいのであります。わたしの場合、「全年齢対象」という縛りがあるせいもありますが、「社会的通念」というやつがブレーキをかけて、そこらへんではじけられない、という……。

難しいものです小説って。
#1374[2012/01/21 08:44]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

ポール・ブリッツさまへ

ポール・ブリッツさん、

はい、小説サイトはこういうのって、やり放題の変なサイトでしたので、遠慮しませんでした。
こういう「何考えてるんだてめえ」クラスの「独善的で勝手なやつ」ってのは、少なからずfate自身が投影されております。
ですから、どれだけフォローしようと、fateは変態のアブナイやつなんです。ふふふふ。

> 難しいものです小説って。

↑↑↑あっちでは、特に『官能』作品には感想というものはほとんどいただけません。無駄に(?)閲覧数だけが伸びていきます。
ただ、これでもfateは中途半端な作家でしたので、それこそ、マジでヤバい方には微妙な受け具合、かなりキツイ官能(凌辱モノ)もOKだけど、story性も楽しみたい、という中間層の方々に読んでいただいていたようです。
なので、ポールさんの‘難しい’とおっしゃるのをなんだか、もったいない、と感じました。
fateは「嫌いなモノは読まなきゃ良い」と思うので、描く世界に遠慮したことがありません。かなり最初の方でお近づきになったあかねさんも、fateが「ヤバイです」と警告したモノは読んでおりませんし、fateも好きな作家さんでも、かなり濃厚なBLは無理なんです。(変態のくせになんで? と思われたでしょう!)

なので、好きな作家さんの作品はすべて読む、ってことでもないし、ヒトって多面性がありますので、お金が発生する訳でもないんで、好きな世界を好きに放浪すれば良いと思ってます。(元来、いい加減なんです。)
特に、fateは自身の‘闇(病み)の昇華’が物語ることの目的なので、吐き出したい世界を描いているだけなんだす(^^;
#1381[2012/01/22 07:38]  fate  URL 

あ、いや、「難しい」っていうのは、わたしが「書く」ほうの場合でして。

読む方としてはこれほど面白い小説はないと思いますよ~♪
#1387[2012/01/22 08:30]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

とにかく、この「闇」の重さと、性愛に象徴される「人間の業」を書く技をfateさんから盗みたいと思って隠れていろいろ習作しているけれど、どうしてもこの高みにはたどりつけないのであります。

で、読んでは「おおっすごい」と引き込まれ……。

とにかく素晴らしいであります。

わたしも闇のものなのかもしれません(^^)
#1388[2012/01/22 09:21]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

ポール・ブリッツさまへ

ポール・ブリッツさん、

う~ん、なんか、褒められてしまった(^^)
でも、ポールさんの大作はその描くエネルギーと頭の回転は秀作でえすからねぇ。
‘闇’に堕ちる必要はないっすよ。

> この「闇」の重さと、性愛に象徴される「人間の業」を書く技

↑↑↑これは、習得するもんじゃないですって(^^;
だって、普通に生活していて、普通に描けるんですから、どんだけ普段から変なの? ってことに他なりませんのダ。
あまりお勧めはしません~

> わたしも闇のものなのかもしれません(^^)

↑↑↑笑いました。
いや、そんなことないっすよ。普通の方でも、一応読めるみたいです。
本当にダメな方は、むしろ自らの‘闇’を嫌悪しているからでしょう。
だって、人間の振りしているときって、fateも自作(R指定)は読みたくないモン。
#1392[2012/01/23 07:09]  fate  URL 














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