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Stories of fate


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光と闇の巣窟(Another story)

光と闇の巣窟(Another story) ‘復讐’ 8

 山小屋に医師を案内し、彼が卓也の縄を解き、薬を飲ませて手当てをしている後ろ姿を、俺は茫然と眺めた。どこか頭の奥が麻痺したように何も考えられずにいた。

 茉莉は・・・確かに望むまい。弟を殺されることなど・・・。

 しかし、しっかりと意識を取り戻した卓也は、屋敷付きの医師の顔を認め、背後で俺が放心したようにつっ立っている姿を確認して、状況を理解したようだ。その途端、少年の目には勝ち誇ったような笑みが浮かんだ。瞬間、俺はぞっと鳥肌が立つ。

 なんだ?
 そして、分かった。その下卑た笑みが、あの男にそっくりであることを。茉莉を陵辱し、死に至らしめたあの下衆野郎。こいつの心の質はあの男と変わらない。

 俺は、カッと頭に血がのぼった。
 何かをカバンから取り出そうと医師が立ち上がった隙に、俺は卓也に掴みかかった。

「お前は・・・っ」
「京介くん?」

 少年の胸座を掴んでその小さな身体を揺さぶっていた俺を、医師が驚いて止める。

「お前は、あの男と同じだ。お前も、同じだ。お前たちが茉莉ちゃんを殺したっ」
「やめるんだ、京介くん!」

 悲鳴をあげる少年を、俺の手から奪い返し、彼は俺を振り返る。

「もう、やめるんだ、京介くん。」

 しかし、俺にはその悲鳴が茉莉のものに聞こえていた。男に捕らえられ、俺の名を叫んで助けを求める、あの子の声に。

 そのとき、救えなかった悔しさもどかしさ。まるで、それが今、目の前に繰り広げられているような錯覚を得た。

 ‘あんたの役目は終わった。後は俺が引き継いでやるから安心しな。二度とあんたのことを思い出せないように、身体の隅々まで俺が可愛がってやるよ。’

 薄笑いを浮かべるあの男が、泣き叫ぶ茉莉の上に覆いかぶさり、その服を引き裂く。

「やめろぉぉぉぉぉっ」

 俺は叫んで、隅に積んであった椅子を一つ持ち上げて、茉莉を押え込んでいる男に向かって思い切り振り下ろした。

 呆気なく、ぐらりと男は倒れた。

「茉莉ちゃんっ!」

 俺は茉莉の姿を探す。彼女の幻を追う。しかし、彼女の幻影は霧散し、そこに在るのは薄汚れた小屋の中の風景。そして、血の気の失せた醜い少年の姿だけだった。

 俺は、少年に視線を落とす。恐怖に引きつった顔で俺を見上げる少年。
 こいつの目は、あの男と同じだ。こいつはあの男と同じ種類の人間だ。

 ・・・殺せ。

 医師が解いた縄が俺の足元に落ちていた。俺はそれを拾って少年に近づく。彼は悲鳴をあげて後ずさった。
 うるさい、と俺は思う。

 死ぬのが当然の人間が今さらわめくな。これは当然の報いなのだ。受け入れるべきお前の運命だ。

 俺は、何の躊躇もなく少年の首にその縄を巻きつけ、思い切り締め上げた。少年はしばらくもがいていたが、やがてぐったりと膝をつき、もがいていた手がだらりと落ちた。俺は、あっという間にモノと化してしまった少年の身体をその場にうち捨てた。

 不意に呻き声に我に返り、俺は振り返る。そして、そこに倒れている医師の姿に愕然とする。

「先生っ、先生・・・っ」

 抱き起こそうとすると、彼は再び呻き声を上げる。
 俺ははっとする。
 俺が・・・やったのか?

 そして、彼に向かって椅子を振り下ろす自分の幻を見る。

「俺が・・・」

 彼の身体をその場に横たえ、俺は慌てて携帯電話で救急車を呼ぶ。この山小屋までの道を説明し、そこに倒れている人がいる、と。

 ちらりと少年を一瞥し、ぴくりとも動かない少年が絶命しているのは明白だった。高篠夫人は、間もなく息子の死を知るだろう。

 そして、知るが良い。
 自らの罪を。
 大切な者を奪われる嘆きと恨みを。

 しかし、残念ながら俺はあんたに裁かれることはない。
 俺は、このまま地獄へ旅立つのだ。

 ふらつくように俺は山小屋を後にする。そして、俺はただまっすぐに進んだ。どこへ向かっているのか分からない。その先に崖があることを知っていた訳ではない。ただ、進む先に俺を呼ぶモノの声を聞いた気がした。

 停めてある車の脇を過ぎ、道路を横切り、藪の中を進む。
 そして、眼下に断崖絶壁を見下ろしたとき、俺は心から安堵した。
 ああ、これで終われるのだ。

 そして、ふと顔をあげた先に、確かに茉莉の姿を見た。真っ白な羽を背に、天使の微笑みで。




 ふわりと空(くう)に浮かんだ彼女は、とても悲しそうな顔をしていた。

「茉莉ちゃん・・・ごめん。俺は・・・俺は・・・」

 何も言葉が出てこなかった。だけど、彼女が悲しんでいることだけが痛いくらいに伝わってきた。

 望んだのは・・・。
 君を幸せにしてやりたかった。
 一緒に生きていきたかった。
 君の子どもを一緒に育ててみたかった。



 
 そうだ。
 本当に望んだのは、それだけだったのだ。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ミステリ

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