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Stories of fate


光と闇の巣窟(R-18)

光と闇の巣窟 (光の高原) 27

 茉莉は、やはり死んだのだ。
 目覚めた彼女は、もう、茉莉ではなかった。

 目を開けても、彼女の瞳にはしばらく何も映ってはいないようだった。瞳には感情がなく、綺麗なガラス玉のようにただ澄んだ光を宿していた。

「茉莉ちゃん?」

 俺が声を掛けても、俺の方を見ようとはしない。視線はどこか空(くう)を彷徨ったままだった。

 目当ての家に到着し、俺は彼女を抱いて降り立ち、運転手が鍵を開けてトランクから荷物を運び出してくれた。荷物は当然俺が積み込んだものではないから、三島さんが準備してくれていたのかも知れない。そして、運転手は俺に鍵を渡して帰っていった。彼も何も言わなかった。ただ、最後に帽子を取って一礼したその瞳がどこか温かかった。彼はもしかして医師の知り合いだったのかも知れない。

 可愛い造りの小さな別荘。

 玄関を入ってすぐに吹き抜けのリビングがあり、東側の奥に扉が二つほど見えた。北西方向に比較的広いキッチンがあって、玄関からまっすぐの奥にバスルームらしき扉が見えた。

 階段をのぼると上はホールのようなひとつの大きな部屋。

 茉莉を抱えたまま歩き回り、俺はかなり疲れてリビングに戻った。ソファに彼女を下ろして、俺は電気や空調を確かめ、とにかくお湯を沸かす。そして、奥の扉が寝室だと分かり、そこへ彼女を運んだ。

 ぼうっとしたままだった茉莉は、抱き上げた俺を見上げて、ほんの少し表情を動かした。

「俺が分かる?」

 茉莉は、しばらく俺をじっと見つめていたが、ふうっと表情を緩めて口を開いた。

「・・・きょうすけ・・・」

 それまで、先生、としか俺を呼ばなかったので、俺は正直少し驚いた。俺が去ったあと、茉莉は俺をそう呼んでいたのだろうか。

「そうだよ。」

 俺は、熱いものが一気にこみ上げてきて、彼女の細い身体を思い切り抱きしめた。

「そうだよ、茉莉ちゃん・・・っ」

 彼女の頬に、涙が零れ落ち、俺は慌ててそれを指でぬぐった。茉莉は、何も言わずに俺を見つめている。そこに感情はほとんど読み取れなかった。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ミステリ

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