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Stories of fate


光と闇の巣窟(R-18)

光と闇の巣窟 (光を失った日) 26

 何故、俺は、もっと早くこうしなかったんだろう?
 家族の敵の娘だから?
 まだ、君が幼かったから?
 ああ・・・でも、もう良いのだ。
 君は、ようやく俺の腕の中だ。永遠に。




 この子の人生を考えると、それに比べたら俺は幸せだったと思える。両親と妹、温かい家族に囲まれ、愛情に包まれ、悲惨な最期を遂げた家族だったが、思い出はいつも優しい。

 一人だけ生き残ってしまった俺を心配はしても、決して復讐の炎に焼かれることは望まなかっただろう家族。

 それは、もし、生き残ったのが俺以外の誰であっても、俺がそう思ったからだ。生きられなかった俺たちの分まで、必ず幸せになってくれ、と。

 闇に捕らわれたあの屋敷の中に、血を求める獣と共に暮らす彼らはむしろ不幸だ。
 闇の巣窟に捕らわれ、たった一つの光だった茉莉を、闇の餌食に差し出したのだ。

 この子は、父の犯した罪を一身に背負い、必死に浄化しながら、ただ清らかに美しく生き抜いた。この子の人生は、自らの罪ではない恨みと呪いの的となり、償いだけに生かされた生贄のようなものだったのだ。

 そして、ようやく、そこから解放された。
 生きて、そこから逃れることなど、もともと出来なかったのかも知れない。
 幸せになる夢など、未来に抱く希望など、もともと存在していない幻だったのかも知れない。




 毛布の隙間から微かに見える茉莉の白い顔。

 そっと、その頬を撫でる。そして、その顔を見つめたまま、俺は彼女の唇に口付けた。柔らかく、温かく、まだ生きているようなぬくもりが残っていた。

 毛布に包まれた君は、俺の腕に抱かれ、心なしか顔色も少し赤みがさしてきたようにすら感じられた。

「茉莉ちゃん・・・ごめん、遅くなったね。一緒に行こう。」

 そう呟いて、初めて熱いものがこみ上げてきた。

 遠くへ、遠くへ。
 闇が俺たちを追ってこられないところまで。

 次第に、周りの景色は緑が多くなる。道が悪くなったようで、タクシーが揺れた。少しずれた茉莉の身体を抱きなおし、彼女の足が見えそうになって俺は毛布の裾を直した。そして、再度腕の中の茉莉に視線を落としたとき・・・。

 茉莉は、うっすらと目を開けた。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ミステリ

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