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Stories of fate


光と闇の巣窟(R-18)

光と闇の巣窟 (暗転) 21

 夏を前に、俺は突然解雇を言い渡される。

 茉莉が、俺を慕い、俺の存在を拠り所とし始めたことを高篠夫人に気付かれてしまったのだ。いや、茉莉の様子を見ていればいずれ分かることだ。

 初めて生きることへの希望を見出し、心から幸せそうな表情を浮かべるようになった彼女の、ほんのささやかな‘幸福’の時間。それを教えてから奪うのは、彼女にとっては致命的ともいえる傷になり得ることを、夫人は知っていたのだろう。

「待ってください。俺は、依頼されたことは行ってきたつもりです。」
「いいえ、先生。私がお願いしたこととは結果がまったく伴っておりません。もう、けっこうです。新しい家庭教師はすでに手配済みです。如月先生、あなたは本日を以て解雇です。どうか2~3日中にはここから出て行ってください。」

 高篠夫人は、もう俺の方は見ずに淡々と書類に判を押し、もう話しは終わったとばかりに扉を開けさせた。

 いつかは、と危ぶんではいた。しかし、こんなに突然とは考えてはいなかった。このまま茉莉の手を離してしまったら、あの子はどうなってしまうのか。

 そして、追い出されるように廊下へ出た俺を更に愕然とさせたのは、恐らく次の家庭教師として夫人が手配したらしい男の姿を見たからだ。

 この町で見かけたことはない、見知らぬ若い男だった。全身から冷気が漂うような、残忍な光を宿した瞳に薄ら笑いを浮かべて俺をちらりと一瞥し、その男は夫人と契約を交わすためにその部屋へ消えて行った。

 ぞっとした。
 あんな男に、茉莉を・・・?

 茉莉を、本気で殺してしまうつもりなのだ、と俺ははっきりと感じた。背筋が凍りついた。
 茉莉を、ここから連れ出さなければ!と俺は思った。あんな男に任せたら、あの子は壊れてしまう。



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~ Comment ~


こうなっていくのですね

よけいなことを先に書いてもいいですか? ↓書いてますが。

fateさんのお住まいのあたりはもうだいぶ涼しくなって、元気が出て更新も頻繁になってきたのかなと思っておりましたら。

なんのなんの、そちらもまだ暑いのですねぇ。
東北の方にはとりわけ、この夏の暑さはこたえたでしょう?
大阪人はある意味、慣れてますけどね。

早く冷房のいらない日々になってほしい。
というような残暑の中、残忍なお母さまのたくらみを読ませていただきました。

そうか、こう来るか。
そりゃあ、お母さまはとことん義理の娘を憎んでいるのだから、如月さんに可愛がってもらって笑ったりするようになられたらとんでもないんですものね。

復讐するつもりもあった周囲の人々を、この子には罪はないと思わせる茉莉ちゃんは、無垢ですものねぇ。こういう境遇だからこその、天使のような女の子ですよね。
さあ、どうなるのでしょうか。
#2408[2012/09/14 01:23]  あかね  URL 

Re: こうなっていくのですね

あかねさん、

> なんのなんの、そちらもまだ暑いのですねぇ。

↑↑↑はい~
まだ最高気温、30度超えてます~
溶けてます~

> 早く冷房のいらない日々になってほしい。
> というような残暑の中、残忍なお母さまのたくらみを読ませていただきました。

↑↑↑そういう訳で(?)今、体力なくって、こういう辛いものを読み返す気力がないので、記憶を頼りに返信いたしますが(^^;
けっこう読者さまからは嫌われたお母様でしたが、fateは実は心中理解出来なくもないかな、と思いながら進んでおりました。
このお母様のanother storyを描いたら、きっと辛くて進められないかも、という過去があるだろうから。
これ、失ったのは恋人ですが、もしも、‘守るべき者’(つまり、むしろ男性が女性を、って場合とか親が子をってことですかね)を理不尽に失っていたら‘復讐’は必然の項目であったろうと思います。
だけど、この方の間違っていることは、復讐に目がくらんで、対象を間違えている、ということですね。
当の本人がいなくなってしまって、怒りのやり場がなくなったんだろうけど、だったら、きっぱりそれは忘れて、愛した人の子どもと共に安らかに生きるべきだったんです。
だけど、それが出来ないのが人間なんでしょう。
そういうカナシサも描きたかったことの一つだったかも知れません。
#2409[2012/09/14 07:47]  fate  URL 














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