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Stories of fate


光と闇の巣窟(R-18)

光と闇の巣窟 (生命) 12

 一般常識を、茉莉があまりに知らないので、俺は保健体育の教科書を手に入れて、女の子の月のもの、つまり月経に関する知識とか、雌雄の成り立ち、生殖の仕組みなどの講義を試みてみようと考えた。

 いずれ、どうしたって知ることになるものだし、理科学の基礎でもある。
 まぁ・・・スケベ心がまったくないといったらそれは嘘になるが。
 もう、冬も明ける頃だった。

 その頃になると、茉莉の体重はぐんと増えたのではないだろうか。見た目の身体つきも少し丸みを帯びてきたように思う。もっとも、俺は毎日見ているのであまり変化は分からない。

 しかし、何かの拍子に抱き上げたとき、今まで本当に人間か?仔猫じゃないのか?という軽さだったのに対し、少し出応えを感じた。つまり、胸や尻の辺りにだ。

 ふうん、と俺はしばしその手に受けた感触に感慨を抱く。
 少しは‘成長’したらしい。

 その日の午後、生物の進化とか発生の仕組みと共に、植物から始まり、動物の生殖を講義する。卵生生物から胎生生物に至る進化など。

 生命の始まりが、雌雄の交わりから発生すること。

「人間も同じなんだよ?」

 と、最後に言うと、茉莉はきょとん、と俺を見上げ、不思議そうに呟く。

「にんげん・・・」

 彼女の口から発声されたそれは、何か別の生物のように感じられるくらい、茉莉は、自分もその一員であるとは信じていないことが明らかだった。

「君も、そうやって、お父さんとお母さんの遺伝子を半分もらって生まれてきた。分かる?」
「遺伝子?」
「そう。雄の精子と雌の卵子が融合して、一個の人間が出来上がる。」

 茉莉はぼうっと俺を見上げたままだ。

「魚は、雌が卵を産んだ瞬間に精子を撒いて受精させる。鳥や牛・馬なんかになれば、雄が直接自分の精子を雌の胎内に送り込む。高等動物になればなるほど、自分の子孫を確実に残せる確率があがるのさ。」
「直接・・・?」
「そうだよ。鳥だって動物だって、交尾をするだろ?」

 言ってから、そうか、この子はそういう光景を一切見たことがないんだと思い出す。テレビすら、見せてもらったことがあるのだろか?この高度に経済の発展した日本国内で、文明の恩恵を受けていないのはむしろこの子だけではないか、と思う。

「今度、写真でも見つけて見せてあげる。」

 茉莉は、いつまでも不思議そうに俺を見上げていた。その純粋な興味の光が、どこか恍惚とした色を帯びたように見えて、俺は初めて彼女を異性なんだと認識する。

「・・・試してみるかい?」

 思わず俺は、からかい半分でそう口にする。

「え?」

 茉莉は、当然、その意味など分からない。俺は、こちらを見つめている茉莉の頬にそっと触れて、ちょっと意地悪く微笑む。

「生殖の仕組みを、教えてあげようか?君のその・・・」

 すうっと、首に手を滑らせて俺はもう片方の手で彼女の背中を抱き寄せる。

「そう、この身体に。」

 茉莉の顔にさあっと恐怖ともとれる色が浮かんだ。そういうことは本能的に何かを感じるらしい。

 一瞬、身を固くした茉莉は、しかし逃げようとはしなかった。継母の言葉が、彼女の身体の奥深くまで支配しているのだろう。生きていくためには、彼女の言葉に従わざるを得なかったから。

「写真なんかで見るより、よく分かるよ?」

 尚も追いつめてみると、泣き出すかと思いきや、茉莉の瞳は不意に揺れた。
 あれ?と思った。
 微かに震えてはいたが、拒絶の空気はなかった。

「茉莉ちゃん?・・・君、言われてる意味分かってる?」

 俺は、表情を緩めて彼女の顔を覗き込んだ。
 潤んだ瞳のまま、彼女はちょっと首を傾げ、小さく首を振った。
 まあ、それはそうだろう。

 もうすぐ、夕食だし、と俺は彼女の身体を抱いたまま考えた。ふざけるのもいい加減にしておくか。
 俯き加減の茉莉の顎をくい、と持ち上げてその唇に軽くキスを落とし、俺は彼女の身体を解放した。

「さて、じゃあ、今日はここまでにしておくか。もうすぐ、夕食の時間だし、片付けてね。」



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ミステリ

~ Comment ~


進みゆく先には

この前のコメントのところにもどなたかが書いておられましたが、R18ですものねぇ。
そういうほうへと進んでいくのでしょうね。

だけど、進んでいく先のその行為も、如月さんの慈しみなのかなぁと、ここまでを読ませていただいた時点では思います。

純真無垢で真っ白な少女にそういうことを教えたい、男の本能のようなものと、なんにも知らなくても本性の部分に「魔性」を持っている女との……とかいう話に進んでいくのかと、勝手に想像しています。

#2358[2012/09/02 00:39]  あかね  URL 

Re: 進みゆく先には

あかねさん、

ふぉおおおおぅっ、あかねさんからそんな言葉が出てくるとは~っ(^^;
ふ・・・ふふふ。
fateをよくご理解してらして、びっくりです。
確かに、描き始めの当初、fateがそれを目論まなかった訳ないと思われます~(誰が‘思う’んじゃ(ーー;)

> だけど、進んでいく先のその行為も、如月さんの慈しみなのかなぁと、ここまでを読ませていただいた時点では思います。
>
> 純真無垢で真っ白な少女にそういうことを教えたい、男の本能のようなものと、なんにも知らなくても本性の部分に「魔性」を持っている女との……とかいう話に進んでいくのかと、勝手に想像しています。

↑↑↑なんとなく、対局のご意見を並べてらっしゃるように感じますが、はははは~っ
あかねさんの洞察には舌を巻きますよ~ん(^^;
#2359[2012/09/02 06:39]  fate  URL 














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