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Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (永遠を抱いて) 125

 そうして、一月ほどが過ぎ、長い夏の終わる頃。聖凛は、ある日倒れたまましばらく意識が戻らなかった。

「聖凛、聖凛・・・っ、いあぁぁっ!目を開けて!」

 小枝子が彼のそばで泣き叫び、息子たちが静かに母に付き添った。そして、彼らは暗黙の内に役割分担をし、家のことはすべて引き受けて、母が、父のそばにいられるように配慮する。

 彼らは、知っていたのだ。
 そのときを・・・。

「・・・小枝子・・・?」

 真夜中過ぎに、聖凛は目を開け、ずっと彼の手を握っていた小枝子ははっと彼の顔を覗き込む。

「聖凛!・・・ああ、良かった。」
「・・・ごめん、小枝子。俺は・・・もう、君のそばにいられない。」

 聖凛は、静かな瞳で彼女を見つめる。その言葉に、小枝子は顔色を失くす。

「聖凛、そんなのイヤ!・・・私を一人にしないで・・・」
「一人じゃないよ。・・・暁がいる。それに、聖耶も、飛龍も。」
「イヤよ!聖凛、あなたがいなくなるのはイヤ!」

 小枝子は涙を零す。だけど、小枝子にも分かっていた。ずっと、薄々は感じていたのだ。彼は、自分が先に逝くであろうことを知っていた、ということを。

「・・・ありがとう、小枝子。ずっとそばにいてくれて。君と過ごした時間が、俺は、幸せだった。君を巻き込んですまない。家族と引き離して、隠れ住む暮らしを強いて・・・。」
「やめて、聖凛。私は、あなたのそばにいられればそれで良いの。私は、あなたがいれば良い。」
「ありがとう・・・。」

 聖凛は、いつもの少し不敵な笑みを浮かべてそっとその手で彼女の頬に触れた。

「君は、そう言ってくれると分かってたよ。」

 彼のその手を両手で包み込んで、小枝子は涙を流す。

「・・・今度、生まれ変わったら、君は、今度こそ白龍に会えるだろう。・・・父に、あなたを返すよ。」
「イヤよ、聖凛。私はあなたに会いたい。何度生まれ変わっても、あなたに会いたい!」

 聖凛は、小枝子をひどく優しい瞳で見つめた。

 その瞳は、また会おうね、と言っているようにも、父によろしく、と言っているようにも見える穏やかな色を宿していた。月の光のようなぼうっと白く澄んだヴェールが彼を包んでいるようだった。

「小枝子、愛している・・・。」
「聖凛っ」

 小枝子の悲痛な叫びに、部屋の外にいた息子たちが扉を開けて飛び込んでくる。

「・・・母さんを、頼むよ。」

 小枝子の背後で茫然と佇む子ども達に、聖凛は静かに言った。そして、すうっと眠るように目を閉じて、小枝子が抱きしめていた彼の手からふうっと力が抜けていくのが分かった。

「いやああああああっ!」

 小枝子の悲しい叫びが、月夜の空に響いた。
 



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