FC2ブログ

Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (永遠を抱いて) 124

「母さん、しばらく俺、ここにいるよ。」

 夕食の席で暁は何気なさを装って言う。

「そう。」

 それで、その気配を感じて小枝子もただ微笑んだ。聖凛は、何も言わずに小枝子を見つめる。

「聖耶(せいや)と飛龍(ひりゅう)も来週には戻るって言ってた。」
「ありがとう。」

 柔らかく微笑む小枝子に、暁は父を見てにっと笑う。

「別に、お礼を言われる理由はないよ、母さん。」

 暁はスープをすすりながら平然と言い放つ。

「俺たち、母さんのそばにいて、母さんと仲良くしてると父さんが焼きもち焼くから、追い出されて出て行っただけなんだから。父さんが体調崩してる間はゆっくり父さんの代わりをしてそばにいるよ。」
「・・・な、ななな、何言ってるの?」

 真顔で息子にからかわれ、小枝子は真っ赤になってうろたえる。

「俺たちの一族ってさ、例外なくマザコンの気があるんだって。父さんなんて、その最たるもんじゃん。俺たちはまだマシだよ。まだ母さんに手を出してないだろ?」
「暁っ!!!」

 小枝子は、思わず立ち上がり、その拍子に椅子ががたんと倒れる。暁は、何?という表情で淡々と食事を続け、聖凛はその様子にただ大笑いしていた。




「暁を呼んだのは君だろ?」

 その夜、開け放した寝室の窓から月を眺めながら、聖凛は小枝子の肩を抱く。

「そうだけど・・・。」

 隣の部屋の明かりはまだ灯っていて、暁は、音楽を聴きながら何かをしているようだった。彼は歴史が好きで、今は卒業した大学の歴史研究の手伝いをしている。それでお金にはならないから、適当なアルバイトはしているようだ。

 聖凛が集めたたくさんの伝説や考古学的な内容の本が、彼がここにいた頃に過ごした子ども部屋に置いてあったので、それを読んでいるのかもしれない。

「だって、聖凛、少し休んで欲しかったし。」
「・・・ああ、いや、良いんだ。そういう意味じゃない。」

 聖凛は、曖昧に笑う。
 本当は、俺が呼ぼうと思っていた、とは彼は言わなかった。それを言えば小枝子には分かってしまう。何のために、息子たちを呼び戻したのかを。

「それにしても、暁はいつからあんなに生意気なことを言うようになったの?」
「君がいつまでも変わらないからだよ。」
「どういう意味?」

 くすくす笑う聖凛に、ちょっとムッとして小枝子は彼を見上げる。その瞳に月の光が青い色を湛えて照り返す。

「暁のことなんか、考えるなよ。」

 聖凛は、まだ何か言いたそうな小枝子の唇をふさいでゆっくりと二人でベッドに沈む。

「・・・せ・・・っ、聖凛っ!・・・ダメっ」

 慌ててもがいて小枝子はその腕から逃れようとする。

「何が?」
「だって、今日は月が丸いっ」
「だから?」
「だ・・・だって、何人、子ども生ませる気?もう、おしまいって言ったじゃないっ」

 聖凛は笑う。

「そりゃ、十人でも二十人でも、村がひとつ出来るくらい・・・」
「む・・・っ、無理っ!!!」

 暴れたところで、小枝子に逃れる術はないことは双方とも分かっている。結局、有無を言わさず組み敷かれ、あっという間に理性など吹き飛ばされても、・・・それでも、そのときの聖凛の目が、小枝子には忘れられなかった。その瞳の遠さに、身体の反応とは裏腹に、心はぞっと震えていた。

 愛しい人を、置いていく者の、瞳だった。

 その姿を、その声を、その肌の優しさを、瞼に焼き付けて、身体に刻み付けて・・・。
 忘れないように、と。
 そういう、瞳だった。




 兄弟がそろって、父の仕事を手伝いながら彼らは変わらぬ賑やかさを二人に提供してくれる。
 夫婦二人だけの静かな生活だったそこは、一気に華やぎ、ときに喧騒を繰り広げるのだ。



関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 紺碧の蒼
もくじ  3kaku_s_L.png 真紅の闇
もくじ  3kaku_s_L.png 黄泉の肖像
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 2
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 3
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 4
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 外伝集
もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い月
もくじ  3kaku_s_L.png 永遠の刹那
もくじ  3kaku_s_L.png Sunset syndrome
もくじ  3kaku_s_L.png 陰影 2
もくじ  3kaku_s_L.png Horizon(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png Sacrifice(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png 閑話休題
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←アダムの息子たち (永遠を抱いて) 123    →アダムの息子たち (永遠を抱いて) 125
*Edit TB(0) | CO(0)
ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←アダムの息子たち (永遠を抱いて) 123    →アダムの息子たち (永遠を抱いて) 125