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Stories of fate


光と闇の巣窟(R-18)

光と闇の巣窟 (生贄) 8

 昼食は部屋に運ぶようにと言われているらしい。

「先生の分もこちらにご一緒にお持ちしてよろしいでしょうか?」

 と、言われて、俺は頷いた。

「お願いします。」

 よく見ると、部屋の隅にテーブルが片付けられてあった。ホテルの部屋にあるテーブル並みに小さかったが、なんとか二人分の食事を乗せられるスペースはありそうだ。

 俺は、それを出して食卓の用意を手伝う。

「先生、けっこうですよ。お勉強を続けてくださって・・・。」
「いや、もう終わりましたから。」

 茉莉はぼんやりと、動き回る俺の様子を眺めている。そして、使用人が食卓を整えて出て行くと、いつものことなのだろう、すうっと寄ってきて椅子に腰かけた。

 サンドイッチとスープ、という食事だった。

「俺もここで一緒に食べても良い?」

 きょとん、と俺を見上げたまま動かない彼女に、俺は聞いてみた。
 初め、何の反応もなかった茉莉は、やがてこっくりと頷いた。

「ありがとう。じゃ、一緒に食べようか。」

 心なしか、茉莉は少しほっとしたように見えた。




 午後、外へ連れ出そうとしていたら、茉莉は久しぶりに勉強をして疲れたのか、昼食を取って少し休憩している間に眠ってしまった。

 起こしてまで散歩させる意味もなかったし、何より外は寒かったので、俺はしばらく放っておいた。
 彼女の部屋で自分の本を読みながら、その午後は俺はただダラダラ過ごしてしまった。




 その夜は、さすがに彼女はやってこなかった。俺は、教材を検索するついでに、ふと思い立って絵の具や画用紙などをネットで注文してみる。それから、人物画の画集なども。

 何故、そんな気になったのかよく分からなかったが、俺は、やはり多少彼女に同情していたのだろう。

 茉莉が使っていた色鉛筆は、長さが既にバラバラで、もう使えそうにないくらい短くなった色もあったし、画用紙に至っては、絵を描くためのもの、というよりは、その辺にあったものを利用している・・・という感じの質も悪いものだったのが、気になっていた。

 あの男の子どもに生まれてしまったのが罪だというのなら、あの子は、もう充分にその罪を償っているのではないだろうか・・・。

 そんな気がしたのだ。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ミステリ

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