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Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (陰謀) 119

 すぐに聖凛に知らせが届き、彼は何もかもを後回しにして、とにかく小枝子が保護された大学の医務室へ向かう。警察沙汰まではしたくない、という大学側の対応に、彼も青い顔で頷いた。いろいろ調べられて困るのは聖凛も同じだ。それに、小枝子が精神的にも肉体的にも不安定なこの時期、騒ぎを大きくしたくはなかった。 

「奈々子、ごめん、付いててくれてありがとう。」

 今まで彼女に付き添ってくれた奈々子に、聖凛はお礼を言う。
 そして、聖凛はベッドの上で青い顔をして彼を見上げた小枝子を、ただぎゅうっと抱きしめた。

「・・・ごめんなさい・・・。」

 小枝子は聖凛の腕の中で震える。

「どうして、君が謝るのさ?」

 しかし、聖凛には、小枝子が怯える理由は分かっている。こんなことになったのも、自分に隙があったからではないか?と聖凛が考えるのではないかと思っているのだ。聖凛は苦笑してその髪をそっと撫でる。

「小枝子、俺もそこまで非情なことは考えないよ。・・・本当に、君が謝る必要はない。君から目を離した俺が悪かったんだ。・・・ごめん。」

 二人の様子を背後で見守っていた奈々子は、少し声をひそめて言う。

「聖凛、小枝子は・・・もしかして、妊娠してるんでしょう?そんな不安定な時期に精神的ショックを与えるような目に遭わせないでよ。こんなこと、もう二度とごめんよ?」

 聖凛は彼女を振り返って頷いた。

「悪かったよ。・・それにしても、君にかかると俺はいつも悪者だね。」
「悪いのはいつでも‘男’よ。自分で命を紡いでいくことも出来ないくせに、自分は偉いと思い込んでいる。命の基本は‘女性’なのよ。子どもを胎内で育てるってどういうことか分かってる?自分の命を削って、子どもに与えているのよ?」

 聖凛は、奈々子の言葉にしばし無言になった。
 それは、小枝子が、かつて聖凛にしてくれたことだ。

 そうやって愛した人の子どもを生み、更に彼女はその二人を守るために、自分の力を我が子に与えるために、自ら命を絶って、その血を息子に与えたのだ。呪いと祈りの狭間で。

「・・・そうだね。」

 聖凛は、彼の胸で涙を零す小枝子を、胸の潰れそうな想いで抱きしめ続ける。
 そして、彼は小枝子に話さなくてはならないことがあるのだ。




 その事件のお陰で、小枝子と聖凛は冬休みを待たずに小枝子の実家へ帰り、学校側からの謝罪の報告で聖凛とのことも、ついでに妊娠していることも、二人が報告する前に家族に知れることとなってしまった。

 何もかも寝耳に水の状態の小枝子の両親は、それでも、もう子どもも出来てしまったなら仕方がない・・・という諦めで許してくれた。聖凛の落ち着いた誠実な態度に好感を抱いたせいもあるだろう。
 



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

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