FC2ブログ

Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (陰謀) 115

 小枝子が家族に会えるのは、あと数えるくらいしかないだろう、と聖凛は思う。
 だから、最後の時間くらい、彼女の望むことはすべて叶えてやりたいと。

 悔いの残らないように。

「スーツでも着ていった方、良い?」
「え?・・・持ってるの?」
「そりゃ。入学式のとき、着たからね。」
「あ、・・・そういえば、そうか。」

 小枝子は、背の高い彼を見上げてその姿を想像してみる。顔立ちが綺麗な聖凛が、そんな風にフォーマルな格好をしたら、さぞかし見栄えがするだろうと彼女は淡々と考えた。

 それから、そういえば・・・と思い出す。一時期、聖凛と噂になった頃、周り中の女性から羨望と嫉妬の眼差しで見られ、聞こえるように嫌味を言われたり、講義の資料を小枝子だけもらえなかったりと、ちょっとした嫌がらせがしょっちゅうだったのに、ここ最近は、聖凛がほぼぴったり彼女にくっついているせいで、そういうこともなくなったなあ、と。 

 煩わしいだけだったそういうことも、自分が‘恋’をすると、分かるものである。相手のやるせない気持ち、切なさ苦しさも。

 想う相手が自分を見てくれないということの辛さを。
 小枝子は、幸か不幸か、そういう片思いの経験がない。本気で誰かの心を手に入れたいと願ったことも。
 小枝子はきっと、生まれる前から、彼のことだけを探していたのだろう。その魂の求めるまま。

 しかし、小枝子と聖凛を取り巻くその嫉妬の炎は、表に出てこなくなったに過ぎなかった。
 公然と聖凛と一緒にいる小枝子を、殺してやりたいくらい憎んでいる女性が数名いた。




 小百合と蕾。

 その双子の姉妹は、生まれ持った美しさから、常に男性の恋する視線の中心にいて、同性からの羨望と妬みの只中に生きてきた。それを当然と思って生きてきたし、同性の本当の友人がいないことも気に留めたこともない。彼女らの最大の関心ごとは、いかに素晴らしい伴侶を得られるか、それだけなのだ。

 そして、その条件は‘より多くの女性の羨望の中心でいること’に尽きる。

 彼女らに、はっきりとした男性の理想像はない。より多くの女性のハートを射止める男性を自分のものにしたい、という謂わば、モテル男が、二人の理想であり、彼女らにとって伴侶とは、絵画や美術品などと変わりがないのである。

 だからと言って、芸能人や皇族などをその範疇にいれないだけ、まだ常識はあった。

 幼い頃から、一番人気の男性は彼女らの虜だった。そして、都度、新しい男が現れる度に彼女らはより質の高い男性に乗り換えていく。今回、大学に進学した彼女らの相手は、間違いなく聖凛だった。

 しかし、聖凛は今までの男達とまるきり違っていた。

 聖凛は初めからまったく彼女らのことなど眼中になく、女性には誰にでも親切な彼が、他の女性に優しくするのとまったく変わりない態度で二人に接していた。誘えば食事もごちそうしてくれるし、セックスもしてくれる。話題も豊富で頭の良い彼を、二人は或いは初めて好きになりかけていたかもしれない。しかし、初めはその親切さを当然と感じていた二人はやがて気付くのだ。聖凛が初めから見つめているのは、別の女だと。

 短大部のその女と噂になった途端、聖凛はそれまで誰とでも出かけて誰とでもしていた遊びを一切やめて、その女にべったりになった。周りに対する態度は変わらなかったが、その女を特別扱いしていることだけは誰の目にも明らかだった。

 遊ばれて捨てられた形になった二人は怒り狂った。
 そんな屈辱は初めてだった。

 そういうタイプの女性は、男性よりも相手の女性に恨みが向くものだ。
 小百合と蕾の姉妹は、小枝子に対する憎しみと恨みで凝り固まり、それを晴らす機会をずっと窺っていたのだ。



関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 紺碧の蒼
もくじ  3kaku_s_L.png 真紅の闇
もくじ  3kaku_s_L.png 黄泉の肖像
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 2
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 3
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 4
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 外伝集
もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い月
もくじ  3kaku_s_L.png 永遠の刹那
もくじ  3kaku_s_L.png Sunset syndrome
もくじ  3kaku_s_L.png 陰影 2
もくじ  3kaku_s_L.png Horizon(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png Sacrifice(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png 閑話休題
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←アダムの息子たち (変化) 114    →アダムの息子たち (陰謀) 116
*Edit TB(0) | CO(2)
ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

~ Comment ~


妊娠した小枝子の体を気遣う聖凛。
食事の後片付けをしてくれたりとか、コーヒーのかわりにハーブティをいれてくれたりとか、そういうちょっとしたことで家庭的なのが凄く意外性があってほほえましいです。
こういう危険で妖しい男にそういうあたたかい面があるのってめちゃ好きです。
お…、お皿を拭いている聖凛……素敵だわ(はぁと

おお!
なんと、横溝正史的な双子の姉妹が出てきましたね。
小百合と蕾。
この名前からして、正史的なのであります。
そして、エゴのかたまりのようなその性格 ^^;
この2人が聖凛と小枝子になにをやらかすつもりなのか…。

あ、そういえば小枝子はまだ自分が「不老」の体になったことを知らないんですよねぇ…? それを知ったら彼女はどう思うんだろう。ここでもし彼女が裏切ったら、聖凛の怒りはハンパじゃないと思うんですが…。
#1127[2011/12/28 03:04]  西幻響子  URL  [Edit]

西幻響子さまへ

西幻響子さん、

> お…、お皿を拭いている聖凛……素敵だわ(はぁと

↑↑↑わはははは~
確かに異様な光景じゃ~
でも、なんでかfate描く男性ってけっこう甲斐甲斐しい。変態な上に横暴だったら救いようがないからであろうか。

> おお!
> なんと、横溝正史的な双子の姉妹が出てきましたね。

↑↑↑な…なるほどっ
全然気付かなかった。っていうか、この二人はちょっと蛇足だったかも、です。
ただ、なんとなく描いてみたんですな、小枝子との対比的に。それから奈々子さんみたいな人ばっかりじゃ、嘘くさいかな~と…そのときは思ったのであろう。もう、分からん(--;

> あ、そういえば小枝子はまだ自分が「不老」の体になったことを知らないんですよねぇ…? それを知ったら彼女はどう思うんだろう。ここでもし彼女が裏切ったら、聖凛の怒りはハンパじゃないと思うんですが…。

↑↑↑なんとゾクゾクすることをっ
読者さまの発想ってすんげ~おもしろいっ
くうう、それを先に聞いていたら、もしかして、これはもっと長くなったのに。
西幻さん、fateの変態欲(そんなのあるのか?)を刺激しちゃいけませんぜ。
でも、まぁ、今更いじる気力はないのが残念…
#1133[2011/12/28 08:01]  fate  URL 














管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←アダムの息子たち (変化) 114    →アダムの息子たち (陰謀) 116