FC2ブログ

Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (変化) 113

 ここのところ、聖凛が何を調べていたのか。

 彼は、勉強をしているわけではないから、そういう、レポートとかの資料ではないことだけは確かだ。彼は、かなり頭が良かったから、恐らく以前にも戸籍などをごまかして大学で勉強した時間があったのだろう。そして、かなりの蓄えがあるらしいことも、なんとなく分かる。

 彼ら一族は、寿命が長いために、多くの女性と添うことは可能だ。理論的には。

 しかし、大抵の者たちは、多くても二人程度。もしくは一人の女性をずっと想い続けて生涯を終えることの方がずっと多かった。だから、彼らの子孫は増えないのだ。

 彼が幼少の頃に過ごした山間の里は、その後、開発の手が伸び、彼ら一族はちりぢりに全国に散った。しかも、幼かった彼はその故郷の場所を正確には覚えていない。

 それまでただ各地を放浪していた時代はそれほど気にならなかった。しかし、こうやって守るべき者が出来た今、聖凛は仲間の行方を知りたかった。もしも、自分が先に逝った場合、小枝子を守ってくれる手を。

 仲間が集まるとすれば、あの当時の山里のような人目につきにくい地を選ぶことだけは確かだ。そういう場所を彼は探していた。自分なら、どこへ避難するだろうか?と。

 或いは・・・、と何度も彼は考える。
 もう、残っている仲間などいないのではないか?と。



 
 黒田家が、現在の場所に神社を構える前、その程近い山間にその神社の本流があったらしい、ということをあるとき聖凛は知った。そして、その年末、彼はその地を訪ねる。父と母の葬られていた山を、そのとき彼は近くに感じた。だが、もうその山も以前の面影はまるでなかった。

 切り崩され、住宅地と化した無残な山肌。深い森が命を育んでいた息吹がもうどこにも感じられなかった。
 今さら感傷はなかったが、時代という否応ない無慈悲さを思った。

 その帰りに、彼は小枝子の実家を訪ねた。

 別にそのとき彼女に会おうと思ったわけではない。ただ、墓参りも出来なかった空虚さに、彼女の家の明かりをぼんやり見つめて、母の魂の宿るはずの女性の面影をそこに見ていた。

 すると、彼女の友人が訪ねて来て、小枝子は玄関に姿を現したのだ。

 その途端、気にしていないと思っていたはずの感傷のような、やるせなさのような憤りが突如として噴出してしまった。

 自分を棄てた母への恨みが鮮烈に蘇ってしまった。



 
 何故、彼女は家族に助けを求めないのだろう?
 何故、彼女は法的手段で自分を追い詰めないのだろう?

 本当は、ずっと恐れていた。

 もう、別の人間として転生している今の彼女を。また自分を裏切り、消えてしまうかもしれないと思うと、その恐怖に狂ったように陵辱するしかなくなる。身体をつないでいる瞬間しか何も信じられるものはなかった。

 その、狂気。



 長すぎる孤独との戦いの時間。
 深く関わることの出来ない人間関係。

 彼は一箇所に5年以上留まれないのだ。どれだけ親しくなっても、いや、だからこそ、そのかけがえのない友人とは別れたら最後、生涯再会することは叶わない。何故なら、親しかった相手に、別れたときのままの姿をさらすわけにはいかないからだ。

 出会いは、そのまま永遠の喪失への約束だ。
 何故、神は別れに慣れる術を彼らに与えてくれなかったのだろう?

 彼ら一族の男たちは、皆、一様に別離の辛さを本気で嘆くのだ。何度でも。愛した相手との永遠の別れを二度も繰り返すと、彼らはもう新たな出会いを求めなくなる。

 そうやって、彼らは自分たちだけで暮らすことを選んでしまうのだ。
 彼らの里は、そうやって傷ついた者たちが帰るためにどうしても必要な場所だった。

 生まれてくる子どもに、そういう場所を教えてやりたかった。



関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 紺碧の蒼
もくじ  3kaku_s_L.png 真紅の闇
もくじ  3kaku_s_L.png 黄泉の肖像
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 2
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 3
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 4
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 外伝集
もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い月
もくじ  3kaku_s_L.png 永遠の刹那
もくじ  3kaku_s_L.png Sunset syndrome
もくじ  3kaku_s_L.png 陰影 2
もくじ  3kaku_s_L.png Horizon(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png Sacrifice(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png 閑話休題
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←アダムの息子たち (変化) 112    →アダムの息子たち (変化) 114
*Edit TB(0) | CO(0)
ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←アダムの息子たち (変化) 112    →アダムの息子たち (変化) 114