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Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (満月のとき) 110

 夕空にほのかに光りながら昇ってきた月を見つめて、ローブを羽織った聖凛が窓辺に佇む姿に気がついて、小枝子は脇にあったタオルを手繰り寄せて身体を起こした。

「・・・新月・・・にこだわっていたのは、排卵日を避けて、今まで、待ってくれてた、の?」

 小枝子は、その後ろ姿に声を掛ける。彼女には、身体に対するまだ何も実感はない。

「その・・・成人するまで?」
「結果的にそうなっただけで、・・・違うよ。」

 言って、聖凛は振り返った。
 ああ、まただ、と小枝子は思う。彼の瞳には、月が宿ったように青い光が揺れている。

「君の身体には、あのばあさんの守護が施されていて、月の満ちる期間は、俺は君に触れられなかっただけだよ。」
「・・・守護?」
「そう。それも、君の20歳の誕生日、つまりこの間、すべて潰えた。」

 守りの手が消えた?そういう実感は何もなかった。しかも、面識もない曾祖母が自分を守ってくれていたという意味が彼女には分からない。

 力を継ぐ者だったから?そうやって継いでいく巫女の力には、何の意味があるのだろう?今はもう何の役にも立たないのに。

 本当はそういう力は現代でこそ必要なのだと、関わることなく過ごしてきた小枝子には分からない。
 いずれ、曾祖母が守ろうとしていた時間は過ぎ去った。つまり、残っているのは彼の‘呪’印だけだ。小枝子は、ふとその意味を考えて不安になった。

「・・・私を、どうするの?」
「さあ?あとは君次第だよ。」

 聖凛は月光を背後に浴びながらいつもの薄い笑いを浮かべる。

「まあ、選択肢はそれほど多くないけどね。」

 ふわりと抱かれて、小枝子はその触れ合った肌の感触に不意に欲情する。満月期の雌の身体だ、と彼女は彼の背中に腕をまわしながら思う。

 もう、逆らう気は起きなかった。

「諦めて俺のものになる覚悟が出来た?」

 月の青い光を吸い込んで怪しく光る小枝子の瞳に、巫女だった母の面影を見て、聖凛は微笑む。

 頷く小枝子の唇をそっと指で撫で、その背に腕をまわして、聖凛は彼女の身体を抱き寄せ、唇を合わせる。ついばむような優しいキスを何度も落として、やがて深く舌を溶け合わせていく。

 聖凛の手が、ぎゅうっと胸を揉んでいる強さに、小枝子は軽い呻き声をあげた。
 いつの間にか彼は身体を離し、小枝子の足を抱えて腰を深く下ろし、やがて彼女の中に入ってきた。

「あっ・・・」

 まだ、彼女の中は聖凛の精液で満たされていた。ぬるぬるとした感触の中、熱が奥にまで届く。ぐい、と彼は小枝子の足を持ち上げ、彼を更に中へ進ませる。奥深く、子宮の入り口まで到達し、そして、股関節から身体を二つに折り曲げられた体位が恥ずかしかったのか、小枝子は真っ赤になって抵抗を示す。

「や・・・っ、やだやだっ」

 足を戻そうとバタつかせ、聖凛に思い切り中を突かれて悲鳴を上げる。

「やだ、じゃないよ、小枝子。少し我慢しな。」

 聖凛はそのままゆっくり腰を動かし、痛みと羞恥に耐える小枝子の表情が、次第に官能に呑まれていくのを冷静に見つめていた。

「やっ・・・あぁっ、あ、あ、あ・・・っ」

 聖凛が彼の熱を放ったのと、小枝子の何度目かの痙攣とがほぼ同時だった。その余韻に虚ろな小枝子の顔を見下ろして、熱い息を漏らしながら身体を離し、聖凛はそのまま彼女の横に倒れこんだ。

 汗ばんだ小枝子の腰を抱いて、乱れた髪をかき上げると、彼はまだ熱い唇でその頬に触れる。

「もう、逃げられないよ?」

 耳元にささやくその熱い息に、小枝子は僅かに反応して声をあげる。

「やっと、手に入れた。」



 ふうっと安らかな眠りに誘われ、小枝子はそのまま目を閉じる。


 
 辿り着いた沢山の精子が、たった一つの卵子に群がる。

 そして、最初にキスした一人だけが、卵の中への侵入を許される。その途端、卵子は震え、その痙攣は全身に広がり防御の膜が張られる。それに寄って他の精子は締め出される。卵子の中に溶け込んだ精子の遺伝情報。それを読み取ると、卵子は最初の卵割に入る。

 精子の群れに囲まれ、波に導かれながら、卵子はゆっくりと流れに乗って、卵管を下る。
 第二回目、第三回目の卵割を繰り返しながら、ほぼ一週間の旅をして子宮へと辿り着く。
 そして、母親の胎内に収まり、受胎は成立するのだ。




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