聖凛の腕をつかんで彼は叫ぶ。
「お前は、伝承の‘鬼’だ。そうだろう?年を取らずに途方もない年月を生き続ける化け物だ。金城さんをどこへ連れ去るつもりだ?子どもを生ませる道具として?」
聖凛は答えない。
「彼女から封印の力を奪ったのは、金城さんに、それを出来るだけの力が眠っているからだろう?黒田家の巫女は代々、魔の封印を生業としてきたんだ。お前は、彼女をどうするつもりだ?これ以上お前の好きにはさせない!・・・今夜、彼女の力は目覚めるんだろう?その前に、彼女を殺すのか?」
「・・・必要ならばね。」
聖凛は、表情を変えずに唇の端をあげた。
「そして、必要なら、神職者は抹殺する。」
「な・・・んだと?やれるものなら、やってみろ!」
隆一は冷静な聖凛の様子に、苛立ちを感じた。そして、彼につかみかかろうと態勢を整え、聖凛は、小枝子を離して後ろへ下がらせる。
「やめて!」
小枝子は悲鳴を上げる。
居酒屋から出てきた二人。傍目には酔っ払いの喧嘩にしか見えない。しかし、隆一は一滴もアルコールを飲んでいなかった。腕力ではかなわないと思ったのか、隆一は不意に彼が知る限りの封印の呪を唱えようとする。聖凛は薄い笑いを浮かべて素早い動きで殴りかかっていく。殴り飛ばされ、地面に突っ伏した隆一はカッと頭に血がのぼった。それからは、二人は酔っ払いさながらの取っ組み合いの喧嘩に没頭していく。
小枝子の悲鳴と通行人の歓声に、中にいたメンバーが慌てて走り出てくる。
「おい!やめろよ、二人とも!」
「やめなさい!!」
駆けつけた奈々子は、案の定・・・の光景に、泣いている小枝子の傍に寄ってその肩を抱き、被害の及ばない場所まで避難させる。
「なんか、いずれこんなことになるんじゃないかと思ってた。大丈夫だよ、小枝子。今、店の人に頼んでバケツの水、ぶっ掛けてやるから。」
奈々子の言葉通り、本当に水を抱えた店員がやってきて、この会の今回の幹事である奈々子の先輩がそれを受け取り、思い切り二人に水を投げつけるように浴びせる。
「いい加減にしろ!二人とも!!店にも通行人にも迷惑だ!!!警察を呼ばれるぞっ」
聖凛や隆一にとっても先輩に当たる4年生の学生だ。
二人は全身ずぶ濡れになってようやくお互いから手を離した。
「聖凛・・・!」
地面に座ったままの聖凛に小枝子が駆け寄ろうとしたとき、隆一は立ち上がって、不意に彼に向けて封印の呪文を唱える。それが有効かどうかは別として、小枝子はその呪文に身体が勝手に反応した。
「やめて!」
小枝子は悲鳴をあげて、聖凛の身体に覆いかぶさるように抱きつく。彼女の血が覚えているその呪文に、小枝子の中の何かが呼び覚まされた。
「白龍・・・」
それは遠い記憶。
魂に刻まれた悲しい記憶。
悲しい運命(さだめ)。
400年以上前の、遠い過去の中に小枝子の意識は引き込まれた。そして、その悲しい軌跡を辿る。もう触れられない懐かしい日の幻をただ追いながら。
小枝子はそのまま、聖凛の腕に崩れ落ちた。
「お前は、伝承の‘鬼’だ。そうだろう?年を取らずに途方もない年月を生き続ける化け物だ。金城さんをどこへ連れ去るつもりだ?子どもを生ませる道具として?」
聖凛は答えない。
「彼女から封印の力を奪ったのは、金城さんに、それを出来るだけの力が眠っているからだろう?黒田家の巫女は代々、魔の封印を生業としてきたんだ。お前は、彼女をどうするつもりだ?これ以上お前の好きにはさせない!・・・今夜、彼女の力は目覚めるんだろう?その前に、彼女を殺すのか?」
「・・・必要ならばね。」
聖凛は、表情を変えずに唇の端をあげた。
「そして、必要なら、神職者は抹殺する。」
「な・・・んだと?やれるものなら、やってみろ!」
隆一は冷静な聖凛の様子に、苛立ちを感じた。そして、彼につかみかかろうと態勢を整え、聖凛は、小枝子を離して後ろへ下がらせる。
「やめて!」
小枝子は悲鳴を上げる。
居酒屋から出てきた二人。傍目には酔っ払いの喧嘩にしか見えない。しかし、隆一は一滴もアルコールを飲んでいなかった。腕力ではかなわないと思ったのか、隆一は不意に彼が知る限りの封印の呪を唱えようとする。聖凛は薄い笑いを浮かべて素早い動きで殴りかかっていく。殴り飛ばされ、地面に突っ伏した隆一はカッと頭に血がのぼった。それからは、二人は酔っ払いさながらの取っ組み合いの喧嘩に没頭していく。
小枝子の悲鳴と通行人の歓声に、中にいたメンバーが慌てて走り出てくる。
「おい!やめろよ、二人とも!」
「やめなさい!!」
駆けつけた奈々子は、案の定・・・の光景に、泣いている小枝子の傍に寄ってその肩を抱き、被害の及ばない場所まで避難させる。
「なんか、いずれこんなことになるんじゃないかと思ってた。大丈夫だよ、小枝子。今、店の人に頼んでバケツの水、ぶっ掛けてやるから。」
奈々子の言葉通り、本当に水を抱えた店員がやってきて、この会の今回の幹事である奈々子の先輩がそれを受け取り、思い切り二人に水を投げつけるように浴びせる。
「いい加減にしろ!二人とも!!店にも通行人にも迷惑だ!!!警察を呼ばれるぞっ」
聖凛や隆一にとっても先輩に当たる4年生の学生だ。
二人は全身ずぶ濡れになってようやくお互いから手を離した。
「聖凛・・・!」
地面に座ったままの聖凛に小枝子が駆け寄ろうとしたとき、隆一は立ち上がって、不意に彼に向けて封印の呪文を唱える。それが有効かどうかは別として、小枝子はその呪文に身体が勝手に反応した。
「やめて!」
小枝子は悲鳴をあげて、聖凛の身体に覆いかぶさるように抱きつく。彼女の血が覚えているその呪文に、小枝子の中の何かが呼び覚まされた。
「白龍・・・」
それは遠い記憶。
魂に刻まれた悲しい記憶。
悲しい運命(さだめ)。
400年以上前の、遠い過去の中に小枝子の意識は引き込まれた。そして、その悲しい軌跡を辿る。もう触れられない懐かしい日の幻をただ追いながら。
小枝子はそのまま、聖凛の腕に崩れ落ちた。
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