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Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (決闘) 101

 9月20日。

 隆一は、奈々子と一緒に会場にやってきた小枝子を見て、あれ?と声を掛ける。

「聖凛は一緒じゃないの?」

 いつもの部屋を借り切って、隆一はテーブルの中ほどに席を取っていた。奈々子のサークルのメンバーが勢ぞろいし、更に、大学部の学生が数人、はじめまして~、と微笑む。

「聖凛は来ません。後で小枝子を迎えに来るそうですけど。」

 なんとなく答えそびれている小枝子をちらりと見つめて、奈々子が代わって答える。

「来ない?」

 隆一の目が光る。

「何時に迎えに?」
「・・・決めてませんけど、来ればここまで顔を出すそうです。」

 小枝子は周りの賑やかさに圧倒されつつ、曖昧に微笑む。

「ふうん。」

 隆一は、冷ややかな瞳で頷く。
 彼は、思う。では、聖凛はそのときを待って、小枝子を迎えに訪れるのだろう、と。


 
 小枝子は、賑やかな会場で笑みを浮かべながらも、心ここに在らずでずっと一つのことを考え続けていた。
 それは、あの日からずっとだ。

 誰かの声が、聖凛と話していることを、小枝子はどこかで感じていた。それが自分の声だったとは思っていない。だけど、二人の声は、胸を締め付けられるような切なさを小枝子の心に留めたまま、今でも身体に残っている気がする。

 あれから、聖凛の態度は、表面上は何も変わらなかった。
 だけど、彼女にだけ分かることがある。

 聖凛の瞳から、‘憎しみ’の炎が消えうせた。それは、触れられなくても感じる冷気となって、いつでも彼から発せられていたものだった。それに捕らわれると、小枝子は凍りつくように身動きすら取れなくなる、そういう類のものだ。

 そして、それに覆い隠されていた聖凛の、闇を透かして触れるものがある。
 それを何と呼ぶのか知らない。
 だけど、小枝子は心が震えるほど、それを温かいと感じる。

 そして。
 小枝子は、それを知っていた気がするのだ。
 彼の、奥底に眠る、本当の彼の魂のゆらぎを。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

~ Comment ~


うーむ、かなり複雑なかんじになってきました。
聖凛の母の魂をもった、巫女の小枝子。
そしてその小枝子を「蹂躙し、逆らえないように恐怖で支配してきた」。しかも、「ただ、抱きしめたいだけの相手を」。
うーん、これは。。。?

聖凛は母に会いたいがために小夜子を抱いたんでしょうか?
そして、愛しい母の手で己の命を断つために…?

これはかなり色鮮やかな倒錯劇ですね。
意外な展開にびっくり。

そうか!もしかして、今回この物語は男性のほうの「渇望」をテーマにしているんでしょうか?西幻が今まで読んできたfateさん作品はみな女性のほうが「渇望」を大きく抱えていて、その渇望を満足させるために男性に救いを求めて追いすがった、ように感じるのです。でも今回は聖凛(男性)のほうが愛を求めている。しかも「母の愛」を。ああ、だから私が今まで読んだfateさん作品とは雰囲気が違っていたのかな~と思いました。聖凛がたまに切なそうにしていた理由もわかりました。

うーん、しかしこれは切ない。西幻的には、「親の愛への渇望」が女性ではなく、男性側にあるのが余計に切ないのかも。

またまた凄いシチュエーションを考え出したのですね、fateさんは。「己の母の魂を持つ女性を抱く」というのはなんともいえない甘やかな倒錯に満ちていると感じました。

ああ、なるほど!母に会うために聖凛は小枝子にひどい扱いをしていたのですね!理由がわかってスッキリしました(これぞ「アハ!体験」)。けれど、聖凛は母を憎んでいた。それは「見捨てられた」と思い込んでいたからでしょうか。か、かなしい…。

これはちょっとラストが想像できません。
でも結局は「2人はそのまま永劫に愛し合い続けました」となるような気もします。
#1010[2011/12/21 02:13]  西幻響子  URL  [Edit]

西幻響子さまへ

西幻響子さん、

これは、読者さまがここまで来るまで、fateは言いたくて悶えまくるんですよ、毎回(^^;
珍しく、これはある程度の、大筋の展開が見えていたので、小さなエピソードは都度勝手に生まれておりましたが、向かう先は決まっていて、かなり早い段階でラストが見えておりました。

> これはかなり色鮮やかな倒錯劇ですね。
> 意外な展開にびっくり。

↑↑↑へへへへへ~
西幻さんを驚かせてやったぜぃ! とfateはとても満足(^^)
そうなんですよ、この倒錯さ加減! 倒錯から始まってますからね、fate world は。これが初回作でしたし。
あとは、細かな‘闇’を切り取って、深めて、煮詰めてどろどろにしていろんな世界に散りばめたので、確かにこれは全体に広がっているので切り取ってみれば薄い感はあるかも知れません。

> そうか!もしかして、今回この物語は男性のほうの「渇望」をテーマにしているんでしょうか?聖凛がたまに切なそうにしていた理由もわかりました。
> うーん、しかしこれは切ない。西幻的には、「親の愛への渇望」が女性ではなく、男性側にあるのが余計に切ないのかも。

↑↑↑これ、limeさんにも似たようなことを早い段階で指摘され、ぎょっとしました。
聖凛には何故か「孤独」を感じる、と。
これは、孤独と渇望、憧憬のようなもの?
それが常にこの世界を彩っていたと思います。
それは、聖凛だけでなく、巫女の魂の切なさも含んで。恋人ではなく、母としての苦悩はきっと絶望的に深かっただろうから。

> ああ、なるほど!母に会うために聖凛は小枝子にひどい扱いをしていたのですね!理由がわかってスッキリしました(これぞ「アハ!体験」)。けれど、聖凛は母を憎んでいた。それは「見捨てられた」と思い込んでいたからでしょうか。か、かなしい…。

↑↑↑そうなんです。有村さんが「母恋物語」と評してくだささいましたが、そうなんですよ。
マザコンは例外なく男ですから。(いや、違うだろ、論点がっ)
子どもは、親に捨てられることほど、きっと哀しいことはない。
何故なら、どんなに酷い扱いを受けて、それこそ虐待されて死んでしまうまで決して逃げ出さないじゃないですか。
それが、ものすごく辛い。

> これはちょっとラストが想像できません。
> でも結局は「2人はそのまま永劫に愛し合い続けました」となるような気もします。

↑↑↑これにはもう一個罠があります(?)
年を取らない聖凛。
そして、寿命の問題。
それから、聖凛を生みだしてしまった巫女の罪。
fateがどう決着をつけたのか(ついたのか?(--;)!!!
乞うご期待!
…ってほど、すごいもんではまったくないよ?
ここで言っておくけど…(^^;


#1016[2011/12/21 08:21]  fate  URL 

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#1028[2011/12/21 18:13]     

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#1044[2011/12/23 00:48]     














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