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Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (生誕の日) 94

 季節は廻る。
 やがて、夏が訪れ、過ぎ去っていく。そして、時折、ふっと秋の気配が風に混じって訪れる夜が増えた。

 そして、遂に9月がやってきた。否が応でも緊張は高まる。
 聖凛も、隆一も、固唾を呑んでその日の訪れを待つ。
 しかし、ここに一つの‘差’が生じた。
 小枝子自身すら知らなかった出生の真実。

 9月20日生まれだと、彼女は教えられ、そう届け出をされ、今日まで信じてきた。しかし、それは曾祖母のたっての願いに寄り、捻じ曲げられた偽りの日だった。有事の際、小枝子が守られるように。彼女の‘守’が途切れても尚、力を操れるようになるまで守りが継続されるように。

 本来、巫女の力は遅くとも14歳までには発現するものだ。早ければ7歳ほどで、操れるようになる。そして、20歳を過ぎてそれは完成される。

 その、完成のときまでを、曾祖母は守ろうとしたのだ。自分がそばにいて導いてあげることは叶わなかったから。

 小枝子の本当の誕生日は9月5日だった。その年、旧暦と新暦の差が少なく、満月はずっと早くに訪れ、小枝子はその満月の、ちょうど月が満ちる時間に生を受けた。それを知った曾祖母は、小枝子の力を確信し、出生の日を変えるようにと彼女の両親に頼み込んだ。それほど差しさわりのあることではなかったし、小枝子の母にとっては巫女である祖母の頼みである。何かわけがあるのだろう、とそれを快諾し、届け出も待ったのだ。

 それを、母は小枝子に話したことはなかった。曾祖母に止められてもいたし、実は、忘れてもいたのだ。だから、それは小枝子の両親しか知らないことだった。

 聖凛は、その事実は知らなくとも、小枝子の生まれた日と時間を正確に割り出していた。聞かずとも、分かっていたのだ。

 その年の9月5日は日曜日で、小枝子は、ごく普通に部屋にいて、聖凛と過ごしていた。前の晩、乾杯しよう、と聖凛がお酒を買ってきてくれたが、小枝子にはその意味が分からなかった。

「明日、君、誕生日だろ?」

 と聖凛に言われ、小枝子は、きょとんと、違うよ?と答えた。聖凛はしばらく小枝子の様子を見つめていたが、ふっと笑みをもらして聞いた。

「じゃあ、いつ?」
「20日。」
「そう、教えられた?」
「・・・どうして?」
「いや、良いよ。あのばあさんがやりそうなことだ。」

 聖凛は呟くように言って、ワインをグラスに注ぐ。

「まあ、良いや。前祝。別に良いだろ?」

 小枝子は、きょとん、と、でも少し嬉しそうに頷く。
 乾杯、とグラスを合わせて、二人はチーズやナッツと一緒にワインを楽しんだ。

「今月の満月の日は、予定を入れないでおいて。」

 聖凛は言う。

「20日は、きっと奈々子辺りから、誕生日のお祝いだとかで誘われているだろう?」

 小枝子は、ちょっと困ったように頷いた。メンバーを聞いたら、隆一も一緒だった。奈々子も少しそれは渋ったようだが、設定してくれた相手が、奈々子の先輩だったのだ。

「良いよ、行っておいで。」
「・・・聖凛は、来ないの?」
「いつもの、あの居酒屋だろ?迎えに行ってやるから、早めに出ておいで。」
「・・・うん。」

 隆一と聖凛が顔を合わせないことにほっとはしたものの、小枝子はどこか不安な気持ちが抑えられなかった。それは、訪れる運命に翻弄される予感のようなものだったのかもしれない。
 




(※最初から読む:アダムの息子たち 1
(※50に戻る:アダムの息子たち 50


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